都内の名所を壊して壊して壊しまくる! ネットで人気の漫画『忍者と極道』をご存じか
SNSで大人気の漫画『忍者と極道』。同作で破壊された東京の名所を土地の歴史とともにご紹介します。SNSで大人気の話題作 コミックアプリ「コミックDAYS」で連載中の『忍者と極道』(講談社)は、インターネットを中心に人気を集めているアクション漫画です。最新話が更新日される月曜日正午になると、SNSがファンの感想で大盛り上がり。Twitterでは毎週トレンド入りするほどの話題作となっています。 2021年8月に発表された「次にくるマンガ大賞2021 Webマンガ部門」では、第10位にランクイン。同賞はこれまでに 『チェンソーマン』(集英社) 『極主夫道』(新潮社) といった、メジャータイトルを発掘してきた実績ある賞です。そのようなことからも、『忍者と極道』は次に大ヒットする漫画の有力候補といえるでしょう。 忍者と極道の壮絶な戦い『忍者と極道』は、江戸時代からの宿敵である忍者と極道が、東京を舞台に抗争を繰りひろげる物語です。 忍者の少年・多仲忍者(たなか しのは)と、極道のリーダー・輝村極道(きむら きわみ)が、互いの正体を知らないまま絆を深めていきます。ふたりの主人公を中心に展開する、日本中を巻きこんだ忍者と極道の大戦争がこの作品の見どころです。 歌舞伎町のシンボルとして有名な、歌舞伎町一番街アーチ(画像:写真AC) 忍者と極道たちの戦いはとても激しく、そのなかで東京の街が無残に破壊されていきます。歌舞伎町、首都高速道路(作中では帝都高速道路)、首相官邸……だれもが知る名所を、この漫画は、徹底的に壊しまくるのです。 現実では絶対に起きてはならない首都破壊テロを、フィクションだからこそ容赦なくおこなっていく――。そのカタルシス(浄化)は『忍者と極道』の魅力のひとつといえます。 フィクションで破壊されてきた東京フィクションで破壊されてきた東京 首都の破壊は、さまざまなフィクションでよく行われます。例えば『ゴジラ』シリーズにおいて、ゴジラは ・東京タワー ・国会議事堂 を筆頭に、都市のランドマークをこれでもかと破壊してきました。2021年10月から12月まで放送された『日本沈没-希望のひと-』(TBS系)の第5話では関東が沈没、首都圏が大打撃を受けています。 『忍者と極道』(画像:講談社) 2020年に国立新美術館で開催された「MANGA都市TOKYOニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」でも、首都の破壊と再生をテーマにしたセクションが設けられました。都市が壊されるシチュエーションは、フィクションの王道といえるでしょう。 さて、ここからは『忍者と極道』で破壊された東京の名所をご紹介します。フィクションにおいて東京はどのように破壊され、そして現実ではどんな場所なのか。『忍者と極道』名所を例に、ご覧ください。 1.歌舞伎町『忍者と極道』第2章では、日本有数の歓楽街である新宿区歌舞伎町、その地下が戦いの舞台となりました。 忍者・祭下陽日(まつもと のどか)と、極道・夢澤恒星(ゆざわ こうせい)の争いは熾烈(しれつ)を極め、結果は相打ち。結末を見届けた輝村極道が、歌舞伎町一帯を爆弾テロで崩落させ、第2章は幕を閉じます。 生前の夢澤は「綺麗な観光地と化した歌舞伎町が嫌いだ」と、語ります。いまでこそ観光地としてにぎわいを見せる歌舞伎町ですが、昔はそうではありませんでした。 歌舞伎町という街は 「治安が悪そう」 「なんとなく怖い」 という言葉とともに語られてきました。 夜の歌舞伎町(画像:写真AC) 警視庁が発表したデータ「区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数」によると、2009(平成21)年には歌舞伎町エリアの犯罪件数が1900件を超えるなど、治安の悪さが目立ちます。 では、いまの歌舞伎町はなぜ観光地として成立しているのでしょうか。その原因のひとつが、2005(平成17)年より始まり、現在も継続されている「歌舞伎町ルネッサンス」です。 歌舞伎町ルネッサンスとは、行政を中心に、歌舞伎町のマイナスイメージを拭い去り、新たな町づくりを進める計画。路上の清掃などの環境美化や、犯罪の抑止活動など、この運動はあらゆる観点から「綺麗な歌舞伎町」を15年以上かけて作りあげてきました。 さらに2015年には、藤田観光のホテルグレイスリー新宿を始めとしたホテル産業が、歌舞伎町に続々と参入。観光地として大きな発展を遂げるのです。 歌舞伎町はゲーム『龍が如く』(セガ)など、極道を題材にしたフィクションの舞台に選ばれてきました。そのため、いまもダークなイメージを持つ人は少なくありません。ですが、2009年には2000件近かった犯罪件数が2019年には934件にまで減少するなど、治安は改善傾向にあります。 多くの関係者の努力によって、歌舞伎町はいまも生まれ変わろうとしているのです。 2.首相官邸2.首相官邸 内閣総理大臣(首相)が執務をおこなう首相官邸(千代田区永田町)。極道の魔の手は、日本の中枢たる首相官邸にも及びます。 第4章において、未成年だけの殺し屋軍団「割れた子供達(グラス・チルドレン)」は、政府要人を襲う大規模テロを敢行。その騒動では、作中の官房長官や警視総監らも凶刃に倒れてしまいます。幼い子どもが日本政府の要人を惨殺していく、非常にショッキングな展開の舞台となったのが首相官邸です。 作中でも登場した首相官邸北門前の茱萸坂(画像:ハチミツ) 忍者と極道の抗争ではあっという間に破壊されてしまう首相官邸ですが、その歴史はとても古いものです。土地そのものとなると、なんと縄文時代までさかのぼります。 首相官邸の脇にある案内板には「総理大臣官邸敷地の沿革」として、縄文時代から人々が生活していた痕跡が残る由緒ある土地で、明治時代には一橋徳川家や、華族・鍋島家の土地として利用されたということが書かれています。 この土地に首相官邸が建てられたきっかけは、1923(大正12)年の関東大震災です。震災の被害を受けた鍋島氏が敷地を国に売却し、1926年に首相官邸の新営が決定。そして、1929(昭和4)年に、内閣総理大臣官舎の名で、首相官邸が完成しました。 2002(平成14)年には、現在の新官邸が完成。日本らしさを際立てる竹や石をシンボルにした外観で、人々の目を引く美しい建築物となりました。 しかし、いうまでもなく首相官邸は観光地ではありません。周辺には警備員が常に職務にあたっているため、過度な見物や写真撮影は控えましょう。 ※ ※ ※ フィクションで破壊された建物や場所は、しばしばファンの間で聖地巡礼の対象となります。作品内でボロボロになったからこそ、現実の無事な姿を自分の目で見たい心理が働くのかもしれません。 漫画で破壊を楽しんだ後は、何事もない現実のありがたみをかみしめながら、外出してみてはいかがでしょうか。
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