昭和の帰省ラッシュは混雑率「200%以上」だった! 近づく年末を機に振り返る

もうすぐ年末。年末といえば帰省ラッシュですが、昭和時代の帰省ラッシュは今と比較にならないくらい混雑していたことをご存じでしょうか。鉄道ライターの弘中新一さんが解説します。


コロナ禍前の帰省ラッシュは凄かった

 新型コロナウイルスの流行はいったん穏やかになり、2021年の年末は帰省できるかもしれないという機運が高まっています。

東海道新幹線(画像:写真AC)



 2020年の帰省ピークは12月29日で、東京駅には大きな荷物を持った人たちが見られましたがラッシュにはなりませんでした。東京駅を出発する東海道新幹線の博多行き「のぞみ1号」は乗車率50%、東北新幹線の盛岡行き「やまびこ63号」は40%。北陸新幹線の金沢行き「はくたか567号」に至っては30%とガラガラな状態だったのです(『東京新聞』2020年12月30日朝刊)

 さて、コロナ禍前の帰省ラッシュはどのくらい混雑していたのでしょうか。2019年の帰省ラッシュは12月28日。東海道新幹線の博多行き「のぞみ1号」は180%、北陸新幹線の金沢行き「はくたか555号」は130%という混雑ぶりでした。

 国土交通省の資料によると、混雑率の数値は

・100%:定員乗車。座席につくか、つり革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる
・150%:広げて楽に新聞を読むことができる
・180%:折りたたむなど無理をすれば新聞を読める
・200%:体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度ならなんとか読める
・250%:電車がゆれるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない

といった基準になっています。

乗車率200%超えが当たり前

 国土交通省の調査によれば、2019年に首都圏でもっとも混雑していたのは東急田園都市線の池尻大橋~渋谷間で、最大混雑率183%となっています。博多行き「のぞみ1号」の180%はほぼ通勤列車並みの混雑でした。

 しかし、過去と比べるとかなり緩和されています。1975(昭和50)年の東京圏の平均混雑率は221%。現在はダイヤの工夫や設備・車両の進化によって、163%まで押さえられています。

 帰省ラッシュも同様です。かつてはシーズンになるとターミナル駅から地方へと発車する列車は、乗車率200%超えが当たり前でした。とりわけ交通事情がよくなかった1960年代には、いまでは想像もつかない光景がありました。

年末の新幹線のホーム(画像:写真AC)



 年末、特に混雑していたのが上野駅でした。当時、帰省ラッシュが始まるのは12月20日頃から。いまではJR各社は何か月も先の切符を予約できますが、1960年代までは特急券・寝台券の発売は1週間前から。しかも発売は駅か交通公社だけでした。

 そのため、切符を買うために行列に並ばなければなりません。当時の上野駅では、切符を求める客たちは地下の通称・団体待合ホールに並ぶのが定番でした。

 行列は19日の昼ごろから徐々にでき始めます。当時の駅の床は冷たいコンクリートです。事情をわかっている人たちは座布団を持参したり、新聞紙を敷いたりして、腰を下ろします。なかには毛布や寝袋を持参する人も。また、マージャン卓を持ち込んで時間をつぶすグループもいました。それがまた風物詩でもありました。

列車設備の劣った時代の大混雑

 盆と正月は混雑しているため、一部の学生は時期をずらして帰省しました。しかし上野駅の帰省ラッシュは衰えません。そこには次のような理由もあったといいます。

「東北あたりでは、いまでも「盆と暮れに帰ってこれないヤツは、まともなところに就職していない」という意見が、深く人々の心に残っているのだそうだ。ひどいところになると“出世列車”なるものまで飛び出してくる。「×時×分着の△△号で帰ってくるのは出世したヤツだ」というのだそうだ」(『週刊言論』1966年12月28日号)

上野駅(画像:写真AC)



 当時の国鉄が調査した1965年の年末(12月28日~1月1日)の帰省客は、

・東京駅:34万人(1日あたり6.8万人)
・新宿駅:14万人(同2.8万人)
・上野駅:92万人(同18.4万人)

でした。

 2019年の上野駅の1日平均乗降人数は18万2704人です。いまでは1965年の帰省ラッシュと同じ人数をさばけますが、現在より駅構内が整備されておらず(現在の11・12番線の高架ホーム増設は1968年)、列車の設備も速度も劣るなかで、この人数はとても対応できません。特に列車の増便にも限界がありました。

 国鉄は必死の輸送計画を練りました。例えば、一部の上り列車は大宮・赤羽などの周辺駅止まりとして、下り列車の発車をスムーズにする方策がとられました。

いまの帰省ラッシュは天国?

 ほかには、乗客をホームに誘導して列車に載せるための人海戦術を行いました。

 帰省ラッシュ時には駅員700人でも足りず、学生バイトを200人、さらに鉄道公安官も150人、それでも足りずに警視庁から機動隊を派遣してもらい、鉄道学校の生徒まで使っての一大輸送作戦でした。それでも駅は、自分の乗る列車を探してうろうろする乗客で大混乱していました。

帰省のイメージ(画像:写真AC)



 駅は列車を1本送り出すごとに安堵(あんど)するわけですが、乗客はそうはいきません。なにしろ混雑率は200%です。ほぼ立ち尽くしたまま、10時間近く列車に揺られて故郷に帰るという苦難が待っているからです。

 とても立ち続けてはいられないと、スペースをなんとか確保して床に腰をつけて一寝入りする人、網棚で寝る人も大勢いたといいます。

 そんな時代から比べると、いまの帰省ラッシュは天国みたいなものでしょう。2021年は皆さんが無事に帰省できることを願っています。


【年末年始調査】「自宅で過ごす」派は65%、「帰省」派は23%だった!

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