「パフェ好き男子」が増えている? 33歳独身会社員が、あるとき突然パフェ巡りにハマった理由
東京で暮らし、働く男性たちは、日々何を見て何を思いながら過ごしているのでしょう。イラストレーターでライターのズズズ(zzz)さんが、自身の「何でもない今日」をイラストともに切り取ります。今回のテーマは「男心とパフェの味」。2017年「夜パフェ専門店」が渋谷に開店 札幌発祥の「夜パフェ」「〆パフェ」という文化が東京にも上陸したのは2017年頃。「夜パフェ専門店パフェテリア ベル」が渋谷区道玄坂にオープンしました。 2018年5月に ぐるなび(千代田区有楽町)が行った調査では、20~60代男女2199人のうち71.7%が「パフェが好き」と回答。男性に限っては、50代で68.7%、30代で67.9%と高い支持を集めました。 実際のところ、東京に住む男性たちはパフェについてどう捉えているのでしょう。イラストレーターでライターのズズズ(zzz)さんが、自身の体験を基に「パフェの今」をリポートします。 ※ ※ ※ パフェにハマりました。 お店によっては果物を丸ごと1個ぜいたくに使ったものもあれば、シリアル、ジュレ、チョコレートソースなどをバランスよくトッピングして独自の色を出しているところもあります。 パフェを頬張る時間はとても幸せで、おいしいパフェに出合ったときは一口食べた瞬間から「……もう一個ほしい」と思ってしまいます。 しかし私も33歳、いい大人です。そこは我慢。せめてすぐに無くならないよう一口一口丁寧に食べていきます。 パフェのおいしさに気付いたのは友人たちと鎌倉へ小旅行に出掛けたときでした。観光スポットを一通り巡り終えたタイミングで、少し休もうと鎌倉駅近くのイワタ珈琲店に入りました。 メニュー表に季節限定の「桃パフェ」が紹介されていました。 普段は特に頭を使わずにアイスコーヒーを注文することが多いのですが、なぜかこの日は桃パフェを頼んだのです。まだ夏の暑い日で結構な距離を歩いた後だったので、体が甘いものを求めていたのかもしれません。 じゅわあっと広がる桃の果汁じゅわあっと広がる桃の果汁 しばらくしてパフェが届くとその大きく背の高いグラスにもりもりと盛られた生クリームと桃に驚きました。すでに見た目がおいしい。 桃をひとつフォークで口に運ぶ。果肉を一口かむと桃の果汁がじゅわあっと口の中に広がり、程よい酸味が疲れを癒やしていきます。このとき思いました。 ……もう1個注文したい。 次は生クリームとアイス、桃を一緒に頬張ります。桃の酸味に甘さがプラスされてさらにおいしい。これまでどうしてパフェのおいしさに気付いていなかったのだろうと後悔しました。 ウマー! 思わず「もう1個注文」したくなった桃パフェ(画像:ズズズさん制作) いえ、実は気付いていたのかもしれませんが、男だからパフェなんて……と心のどこかで思っていたのかもしれません。 味をかみしめながら食べているとある瞬間、衝撃が走りました。 ほどよく熟された甘い桃の果肉が入っている……。表面のゴロゴロした桃は甘さ控えめの若い桃でしたが、生クリームの奥に熟した桃が隠されていて、勝手に“味変”されたのです。なんて恐ろしいことでしょう。 ……もう1個注文したい。 友人たちに逐一感想を報告しながらパフェを頬張り、グラスの底に到達しました。グラスの底は熟した桃の実と溶けたアイスと生クリームがたまった最高に甘く幸せな空間です。 ひとつのグラスでさまざまな見た目と味の冒険をさせてくれるパフェに感謝。 自分好みのパフェを探して自分好みのパフェを探して 別の日に都内で買い物をしているとき、一休みしようと入ったチェーンの喫茶店で「いちごパフェ」を発見しました。 生クリームとアイスの上にいちごソースがかかったものでした。食べているとザクザクとした食感のシリアルに出合います。 このとき思いました。おいしいけど、自分の場合はパフェにザクザク食感を求めていない。それからソースではなく、やはり果肉が入っているものが良いなと。 パフェにもいろんな種類があるのだと感じ、このときからいろいろなパフェを食べてみたいと思うようになりました。 ミニストップの「アップルマンゴーパフェ」や、渋谷にある西村フルーツパーラー(渋谷区宇田川町)の「桃と葡萄(ブドウ)のパフェ」など幅広く食べました。 西村フルーツパーラーにはいつ頃どんなフルーツのパフェが発売されるかといった表があり、パフェは1年中飽きずに楽しめるものなのだと気付かされました。 春はイチゴ、夏は桃やマンゴー、秋はブドウ、フルーツだけでなくチョコレートパフェもあります。 ある日の銭湯帰り、家の近所にある個人経営の純喫茶にもパフェがあると知り、訪問してみました。中の様子が見づらく、入るのに勇気のいるお店でこれまで敬遠していたところです。 銭湯帰りに入った喫茶店にて銭湯帰りに入った喫茶店にて ドアをくぐると夫婦で経営されているのか、厨房に旦那さん、フロアに奥さんがいて、茶色い革のソファーとオレンジがかったシャンデリアの照明。 壁にかけられた古い東京の街並みのポスターが昭和にタイムスリップさせてくれるような喫茶店でした。 奥さんは無表情で接客を淡々とこなす方でした。チョコレートパフェを注文するとすぐに運ばれてきました。 昭和にタイムスリップしたような都内の喫茶店で注文したチョコレートパフェ(画像:ズズズさん制作) 生クリームとアイス多めでシリアルはなし。生クリームにはチョコレートのソースがかかっていて、おいしい。食べ進めていくとミカンの果肉が出てきて甘くなった口を酸味でさわやかにしてくれます。 食べ終えると店内に他の客はおらず、気まずい雰囲気が漂っていたのですぐに会計に向かいました。するとレジでそれまで無表情だった奥さんが口を開きます。 「パフェ、おいしかった?」 こんなにも優しい笑顔をする人だったのかと驚きながらも「はい、おいしかったです!」と言うと、奥さんは私の着ているイカの絵がプリントされたネタTシャツを見て言います。 「それ、イカ?」 「あ、はい。イカ釣りにハマっていて、この前友達がくれたんです。」 「かわいいね。それにおいしそう。あっ、おいしそうなんて言っちゃダメね。あはは」 パフェ探求の日々はまだ続くパフェ探求の日々はまだ続く それまで店内に張り詰めていた緊張の糸が切れ、まるで昭和の世界から現代に引き戻されたかのように笑いがあふれました。 最初からこの感じで接してくれたら良かったのにと思いましたが、店員さんも急に普段来ないような若者が来て警戒していたのかもしれません。最後に打ち解けることができて良かったです。 さて、次はどこのパフェを食べに行こうかな。世間はもう栗や梨の季節でしょうか。
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