志願者が大幅増 明治大「政治経済学部」が早大のプライド「政経」を飲み込む日
受験生に人気の明治大、しかし志願者減 都内私立大の定員厳格化の影響で、早慶やMARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)が敬遠され、安全志向が色濃くなっています。その余波は、MARCHの中でも全国的知名度を誇る明治大に及んでいます。 MARCHの中でも1~2位の受験者数を誇る明治大はここ数年の難化傾向を受け、一般入試やセンター利用入試での志願者が減少しています。このことからも、明治大を避ける動きが出ているのは間違いありません。 明治大・駿河台キャンパスにあるリバティタワーの外観(画像:写真AC) しかし、政治経済学部だけは前年度より志願者数が大幅に増加しているのです。いったいなぜでしょうか。 早大の政治経済学部の志願者は減少の一途 政治経済学部といえば、一般的に早大の看板学部かつ、私立文系の最高峰である「政経」として思い浮かべる人が多いでしょう。 早大の政治経済学部は定員厳格化の結果、以前よりも合格が難化しています。2017年度から2019年度までの入試のデータを見ると、一般入試とセンター利用入試の志願者数の合計は減少の一途をたどっています。 早大の大隈講堂の外観(画像:写真AC) 現時点で確定しているセンター利用入試の政治経済学部の志願者数は2297人と、ここ5年間で最低を記録しています。2020年度の一般入試の出願締め切りは2月4日(火)までですが、筆者がこの原稿を執筆している1月31日(金)時点で5522人となっており、出足が鈍い状態です。 これは早大の看板学部である政治経済学部の合格切符をつかみ取るのが難しいと判断した受験生が、早大を避けていると見るのが自然です。 確実に合格を狙う受験生が駆け込む確実に合格を狙う受験生が駆け込む 冒頭でも指摘しましたが、明治大全体の志願者は減少傾向が続いています。その原因として考えられるのは、MARCHの中でも全国的な知名度を持つ明治大での競合を避ける受験者数が相当数いるためです。 しかし早大とは対照的に、明治大の政治経済学部の志願者数は前年よりも増えています。ここで考えられるのは、早大の政経から明治大の政経にくら替えした受験生の存在なのです。 日本政治の中心地で「永田町」にある国会議事堂(画像:写真AC) 早慶やMARCHに代表される都内私立大が難化傾向にあり、さらに国公立大の受験生にとっては2021年度から始まる共通テストが控えていることを考慮すると、浪人は絶対に避けたいはずです。 政治経済学部を持つ大学の数は少なく、専門的に学びたい学生にとって文学部や法学部のように志望大学の選択幅が広くはありません。こういった状況を踏まえ、確実に合格するために早大から明治大の政治経済学部に変える受験生は、一定数がいると見て間違いないでしょう。 上位層のステップダウンがもたらす入試「明治大に落ちて東大合格」という話が、ネット上で一時期話題になりました。ここ数年の私立大の難化は予想以上に進み、今までの「常識」や模試の結果による合格ラインが当てにならないケースも出てきました。ここまで流動的になっていると、予備校教師すら生徒の合格を予想できなくなります。 東大赤門の様子(画像:(C)Google) 定員厳格化を維持し続ければ、MARCHの一般受験者に早慶や東大、一橋大などを第一希望とする学力最上位層が流入してくる割合が高くなることは避けられません。学校の内申点が高い受験生が推薦・AO入試を利用して、早々と明治大の合格を決めようとする動きは今後加速すると考えられます。 確実に明治大に入るには付属校が有利か確実に明治大に入るには付属校が有利か 偏差値は高いが「石橋をたたいて渡るタイプ」の学生の存在は、始めから明治大の政治経済学部を目指していた受験生にとって、いわば「悩みの種」です。しかし、国による政策変更などの発表がない限り、有名私立大への狭き門は続きます。 早慶からMARCHの流れは一過性のものではなく、しばらく継続すると考えるのが無難でしょう。その上で中学生や高校生を子どもに持つ保護者も、安全策をとって志望大学を下げてまで受験する学力の高い学生がいることを理解し、大学受験に備える必要があります。 都内にある明治大付属の学校(画像:(C)Google) 今後は、小学生の頃から大学入試を見据え、生徒の9割以上が明治大に進学する明治大付属校を受験させる保護者も増えてくるでしょう。現に明治大付属中の入試での合計志願者数は2016年度で1268人でしたが、2018年度は1500人を超えています。 私立大の定員厳格化の影響は、単なる志望大学の安全志向に止まらず、中学受験にも及び始めているのではないでしょうか。
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