よみがえる昭和の記憶――私たちが大人になっても「駄菓子」を手に取ってしまうワケ

かつて子どもでにぎわったお菓子・駄菓子売り場。その思い出と近年の商業施設の動向について、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。


お菓子からスイーツへと呼び名が変わった

 近年、デパートなどの大型商業施設ではスイーツ売り場をとても重要視しています。

 国内外の人気店を一堂に集め、カラフルなスイーツやセンスの良いパッケージの色彩にあふれる華やかな売り場です。このような売り場のスイーツは比較的高額で、大人の女性がメインターゲットとなっています。

 しかし、ひと昔前までお菓子売り場のメインターゲットと言えば、贈答用の銘菓を除けば、親に連れられた小さな子どもでした。お菓子をスイーツと言い出した頃から、お菓子売り場は大人のものになってしまった感があります。

懐かしい駄菓子屋(画像:写真AC)



 かつて東京都内のデパートの地下には、数層から成る円形状の台がゆっくりと回転するお菓子売り場が存在していました。

 台のなかはいくつかに区切られ、それぞれに色とりどりのチョコやキャンディー、ラムネ、ポン菓子などが入れられており、好きなお菓子を好きなだけ小さいカゴやトレーに入れることができます。

 それはまるでメリーゴーラウンドのように食品売り場の奥で悠然と回っていました。デパートで親がこの売り場の前に連れていってくれると、子ども心にわくわくしたものです。

 現在、都内のデパートではこの販売機は姿を消して見かけません。関西などではまだ設置しているデパートがあるようです。

お出かけの思い出とセットだったお菓子

 中に入れられているお菓子は大手メーカーのものではなく、ちょっと変わったものが入っていました。

 例えば、人工的なフルーツの味がするカラフルな硬いゼリーや、つまようじで薄いゴムを刺すとぷるんと球状のようかんが出てくるようかん玉、なかに甘くて白いペーストが入っている丸いチョコ、色とりどり紙に包まれたさまざまなフレーバーの海外のキャンディー……など。

デパ地下で販売されていた回転方式のお菓子売り場(画像:中村圭)



 大手メーカーの味と比べてものすごくおいしい、というわけでは決してないのですが、いろいろなお菓子を自分で選べるのも楽しく、このようにして買ってもらったお菓子は親とのお出かけの思い出とともに大切に食べたものです。

 そのほかにも、昔のお菓子売り場は子どもの好みに合わせたところが多かったのではないでしょうか。

 ケーキはもっと子どもっぽく、味はとうてい今のものには及びませんが、クリスマスケーキや誕生日ケーキなどのホールケーキはロウソクや造花、人形などの雑多な飾りが乗って子ども好みのものでした。

 ハリネズミなど動物をかたどったケーキもあって、眺めているだけでも楽しい売り場でした。

 また、せんべいやアメなどの菓子はガラスのケースや瓶に入って、バラ売りや量り売りが多く、少しずつ選べる楽しさがありました。

派手な形や色彩がかわいかった輸入菓子

 輸入菓子の売り場もわくわくするものがありました。

 原宿の「キディランド」(渋谷区神宮前)などでは、かつて顔くらいある大きなペロペロキャンディーやツイストキャンディー、造花になっているフラワーキャンディーなどが並べられたコーナーがあり、子どもたちはとてもテンションが上がったものです。

渋谷区神宮前にある「キディランド」(画像:(C)Google)



 輸入菓子は派手な形や色彩がかわいく、味よりもそのビジュアルに引かれていた感があります。

 現在、輸入菓子はいろいろなところで売られていますし、インスタ映えするかわいいキャンディーショップもあります。しかし、どちらかと言うと大人や女子高生が主なターゲットで、日本人離れした派手な色や味の輸入菓子は、話のネタとしてYouTuberがよく買っているようです。

コンビニでもお菓子は売っているが……

 子どものお菓子売り場と言うと、その代表として駄菓子屋が挙げられるでしょう。かつては小学校の学区に必ず1軒はあったものです。

 所狭しと陳列された、ちまちまとしたお菓子やおもちゃ。店に入っただけで独特の高揚感があります。

懐かしい駄菓子屋(画像:写真AC)

 しかし、店主の高齢化による後継者問題、都心の土地の高度利用などによって、都内では徐々に姿を消していっています。

 それに代わって今はコンビニやスーパーのお菓子売り場が子どもの買い食いの受け皿となりました。しかし、それらは普通の売り場であり、駄菓子屋のようなわくわく感とはまた別のものです。

 駄菓子屋で売られていたお菓子は遊びの要素があって楽しいものでした。一般の売り場ではあまり見かけないため、若い世代では駄菓子をよく知らない人もいるかもしれませんが、今見ると不思議なお菓子がたくさんあります。

ヨーグル、あんずボー、すもも……

「モロッコヨーグル」は小さいつぼ状の入れ物に入った駄菓子で、中には食物油脂と砂糖で構成された白くて甘いペースト状のもの(少なくともヨーグルトではない)が入っています。入れ物の独特な形状から、全て食べきるのが難しいのが悩ましいところです。

モロッコヨーグル(画像:中村圭)



「あんずボー」は甘酸っぱいシロップの中に刻んだ干しあんずが入っているスティック型駄菓子。角を切って吸う食べ方と冷凍庫で凍らせてシャーベット状にする食べ方があり、凍らせて食べる方が人気でした。

「すもも」はすももを酸味のある汁で漬けたもの。一見すももだけを食べると思いますが、小さいストローがついており、汁も飲み干します。

「ソースせんべい(ミルクせんべい)」は少し甘い味のする薄焼きせんべいで、そのままでも食べられますが、ソースをつけて挟んだり、別売りの梅ジャムを挟んで食べたりします。

「フルーツ餅」は水あめを主原料にした四角く小さいやや硬めのお餅。ソーダやサクランボ、青りんごなどのフレーバーとかわいい色がついており、つまようじで刺して食べます。

「きなこ棒」はやわらかいアメにきなこをまぶしたもの。食べて棒の先が赤ければ当たりでもう1本。当たる確率はけっこう高く、1本の値段で数本食べられることも。このようなクジ引き的要素のある駄菓子もいろいろありました。

 街中の駄菓子屋は少なくなりましたが、最近では商業施設内で駄菓子屋風の売り場を設置しているところがあり、駄菓子を買うことができます。

親子で楽しめるお菓子売り場が増えるのか

 東京ソラマチ(墨田区押上)の4階、ジャパンスーベニアゾーンには「だがし夢や」があります。同店は全国のショッピングセンターに出店しており、見かけたことがある人もいるかもしれません。

 南町田グランベリーパーク(町田市鶴間)内の「あまのや繁田商店」は、創業1926(昭和元)年の老舗菓子問屋。問屋であるため大量の駄菓子を常備しており、仕入れ感覚で“大人買い”することも可能です。

 デックス東京ビーチ(港区台場)4階の昭和30年代をイメージしたテーマゾーン「台場一丁目商店街」内には「ハイカラ横丁」「からくり百貨店」とふたつの駄菓子屋があります。

ハイカラ横丁(画像:デックス東京ビーチ)



 お菓子やお菓子売り場は、誰にとっても子どもの頃の良い思い出となります。

 子どもの視点で見れば、買うシチュエーションや遊びの要素も大切です。現在、都市部の大型商業施設では子育てファミリーの集客に力を入れているところが増えていますが、親子で楽しめる新しいお菓子売り場を検討し、新たな需要を引き出すことを期待したいと思います。

 ときには、こうした売り場で昔懐かしいお菓子を楽しんでみてはいかがでしょうか。


【画像】いくつわかる?「懐かしい駄菓子」の数々

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