大企業人なら9割知ってる? 今さら聞けない「SDGs」の超基本

  • ライフ
大企業人なら9割知ってる? 今さら聞けない「SDGs」の超基本

\ この記事を書いた人 /

中村圭のプロフィール画像

中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

ライターページへ

昨今話題のSDGs。テレビなどでよく放送されるものの、イマイチよく知らない人も少なくないはず。ということで都内の事例を交えながら、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

SDGsを成す「五つのP」

 ここ最近テレビや雑誌で「SDGs」という言葉を見たり聞いたりする機会が増えました。SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語で表すと「持続可能な開発目標」となります。

SDGsポスター(画像:国際連合広報センター)



 元々は2000(平成12)年に国連で採択された「MDGs(ミレニアム開発目標)」があり、MDGsは2015年で終了しました。しかし、経済発展や技術開発により人間の生活は便利になった一方、気候変動や生物多様性の喪失(生き物の絶滅)など人類が生存し続けるための基盤となる「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」に達しつつあり、それに対処する必要性もあるため、新たにSDGsを中核とする「2030アジェンダ」が2015年9月に国連総会で採択されました。目標の期限は2030年となります。

 MDGsは政府主導によるものが中心であり、目標内容も開発途上国の課題が中心となっていました。しかし、先進国・途上国ともに課題を解決していく必要性から目標を拡大。「だれひとり取り残さない」を基本方針とし、開発のキーワードとして

・人間(People)
・地球(Planet)
・繁栄(Prosperity)
・平和(Peace)
・連帯(Partnership)

の「五つのP」を掲げるSDGsに発展しました。

 この目標は政府だけではなく、企業や非政府組織(NGO)などの民間組織も主体的に取り組まなければ解決できないものとなっています。さらにわれわれ消費者ひとりひとりの行動も問題解決のために重要な要素となっており、私たち個人への啓発活動が活発化している訳です。

 このような取り組みは以前から叫ばれていました。バブル期からさまざまなキーワードが使われて啓発されてきましたが、当時は企業も消費者も自分のこととしての危機の実感がなく、イメージ戦略が先行した感もありました。

 今はプラネタリー・バウンダリーの限界点が実際に近づいているため、10~20歳代後半の一部の若者には切実な危機感があり、SDGsへの関心が非常に高くなっています。

 世界で同年代の活動家が活躍していることも刺激になっているでしょう。今はいわゆるエシカル消費、SDGsに配慮していることが消費の選択基準になる人が出てきています。就職に関しても、特に意識の高い学生では、その企業がSDGsへの取り組みがしっかりしているかどうかを見ており、企業もSDGsへの取り組みを大きくアピールするようになっています。

従業員1001人以上の企業で90%以上の認知度

 東京都の「都内企業等におけるSDGsの認知度・実態等に関する調査」によれば、SDGsの認知度は企業で44.1%、消費者全体で33.0%。従業員1001人以上の企業では90%以上の認知度で、大企業を中心に一定の認知度がある状況です。

大企業の入るビル(画像:写真AC)



 また、消費者ではSDGsに取り組んでいる企業・学校・団体の印象について、良い印象を持っている人が31.4%になっていますが、取り組んでいる企業かどうかの判断がつかない人が44.8%であり、消費者への認知度を上げていく必要性があります。

 レジャー分野でもSDGsの取り組みが活発化しています。掛け声やキャッチフレーズだけでなく、実効性のある取り組みが見られ、さらにレジャーならではのエンターテインメント性のある取り組みも見られます。子どもも含め幅広い層が楽しくSDGsを知り、取り組んでいくという点においては、レジャーの役割は大きいと言えるでしょう。

ハローキティもSDGsに参加

 サンリオピューロランド(多摩市落合)では、SDGsの取り組みとして「Team HelloSDGs!~地球はひとつの星だから~」というハローキティがSDGsの大切さを伝える、みんなで歌って踊れる参加型ライブショーを上演しました。

ハローキティが小学生むけにSDGsを伝えるショートムービー「わたし、地球」のイメージ(画像:サンリオ)

 ハローキティは、2018年からYouTube「HELLO KITTY CHANNEL」で日本でのSDGsへの取り組みを応援してきました。その実績が国連から認められ、国連との共同企画としてSDGsの17個ある目標のうち、六つを紹介する「#HelloGlobalGoals」グローバル・ビデオ・シリーズを公開しています。

 なお17個の目標は、次の通りです。

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロ
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任 つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

 動物園・水族館や博物館は元々「種の保存」「地域教育」などの役割を担ってきており、以前からSDGsの取り組みと行っていたと言えますが、改めてSDGsの17の目標を意識して実行するようになってきています。

 2020年7月にオープンした都市型水族館のカワスイ川崎水族館(神奈川県川崎市)はSDGsの取り組みの一環として、川崎市内の材木店で出た廃材を使用したミニ時計を作るワークショップを開催したり、スタッフが東京湾の清掃活動を行い、回収したゴミの種類や量、環境問題によって生き物に与える影響などを、川崎市の小学校の授業において報告したりしました。また、年間パスポートをアプリ化して脱プラスチックを目指すなど、エコ活動を推進しています。

 サンシャイン水族館(豊島区東池袋)では、失われつつあるサンゴ礁の回復と再生を願い、沖縄県恩納村のサンゴの常設展示やサンゴ保全活動に参加したりしています。来場者にもサンゴに特化したバックヤードツアーや講習会を行っています。

 国立科学博物館(台東区上野公園)では「ディスカバリートーク」と称し、土日祝日に同施設の研究者が交代で展示物についての説明や自身の研究内容の説明をしています。これはSDGsの「4.質の高い教育をみんなに」、「11.住み続けられるまちづくりを」、「15.陸の豊かさも守ろう」に対応するものです。

カードゲームでも啓発

 SDGsの啓発方法として、カードゲームもあります。

 一般社団法人イマココラボ(千代田区麹町)の「2030 SDGs」はなぜSDGsが世界に必要なのか、それがあることによってどんな変化や可能性があるのかを体験的に理解するためのゲームです。

イマココラボのウェブサイト(画像:イマココラボ)



 プレーヤーは与えられたお金と時間を使って、「大いなる富(お金持ちになりたい)」、「環境保護の闘士(環境を守りたい)」などのゴールを目指します。ゴールを達成するために、プロジェクトカードを使用してプロジェクトを実行。プロジェクトを実行すると世界の状況を示すパラメーターに変化が起こり、ゲームのタイムリミットである2030年に世界がどう変わるかがわかります。

 このゲームは、現在一般に購入することはできませんが、都内をはじめ全国で体験会を開催していますので興味のある方はぜひ行ってみてください。

 国連でSDGsが採択された9月25日、採択日を含む1週間を「SDGs週間」として、世界中でイベントなどが開催されます。日本では8月23日に「2021 ツナグ!芝公園-SDGs村」(港区芝公園)を開催。残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催期間が短縮され、ライトアップのみのイベントとなりました。昨年はステージイベントやワークショップに、「サンリオカフェワゴン」などキッチンカーも出ています。

 興味を持った人は楽しんでSDGsに対する理解を深め、実践してみてはいかがでしょうか。

関連記事