何の変哲もない「石」が世界的価値? 八丈島で見つかった超希少物質の正体とは
東京都心から南へ300km弱の太平洋に浮かぶ八丈島。この場所で、世界的にも極めて価値があると見られる「砥石」が作られています。原石を加工して製品化しているのは移住者の男性。石の特徴や男性の思いを、紀行作家の斎藤潤が訪ねます。
無造作に積まれた丸石、実は……
もしかしたら、世界一優れているかもしれない「砥石(といし)」が八丈島に埋もれています。
知られざるお宝を世に紹介したのは、移住者の高橋栄治さんでした。
高橋さんが立ち上げた八丈砥石工房を訪ねると、ハート形の砥石と「八丈砥石工房」と記された八丈島形の砥石をくくりつけた標柱が迎えてくれます。ハート形の砥石は、女性観光客を意識して開発したもので、空港売店などでもよく売れているそうです。
工房のまわりには、八丈島名物の玉石垣に使われている丸石が、無造作に積まれていました。
全国的に名の知れた京都や天草の砥石は、山から採掘して加工しているのですが、島ではその辺にある変哲もない丸石が八丈砥石の原石だというのです。もちろん、同じような形をしていても向き不向きがあるので、厳選しなくてはなりません。
何がそんなに優れているのか、特長を聞きました。
「八丈砥石は、世界的に見ても大変に珍しい、水でも油でも研げる仕上げ砥石なんです。10000番(砥石の粒子の細かさを表す値)より目が細かく硬いのに粗くない。水や油も、ほんのひと垂らしでいい」
一般的に日本では包丁などを研ぐときは、砥石を水につけてから研ぎます。一方、アメリカなどでは、水の代わりに油を使う油砥石が主流。刃物の仕上げ研磨に使う硬くて緻密な砥石です。
世界的に有名な油砥石アーカンサス砥石は、元々油を含んだ石なので、油がよくなじむのです。しかし、天然石の原石は資源が枯渇して極めて貴重になり、人造砥石で代用されることが多くなっています。

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