武蔵小金井駅前が再開発で大変身 自然も豊か過ぎる「小金井市」を巡る【連載】多摩は今(3)

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武蔵小金井駅前が再開発で大変身 自然も豊か過ぎる「小金井市」を巡る【連載】多摩は今(3)

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鳴海侑

まち探訪家

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新宿から約25分の距離にある武蔵小金井駅を中心として栄える小金井市。そんな同市の魅力について、探訪家の鳴海侑さんが解説します。

「開かずの踏切」で有名だった武蔵小金井

 JR中央線の快速電車に乗って新宿から約25分。小金井市の中心、武蔵小金井駅に到着します。小金井市は名前の由来も含めて自然豊かなまち。そして武蔵小金井駅周辺は近年再開発も進み、大きく変わりました。

小金井市(画像:(C)Google)



 武蔵小金井駅は、かつて駅周辺に「開かずの踏切」があったことで有名でした。ラッシュ時間帯は1時間のうち1分程度しか開かなかったという開かずの踏切。連続立体交差化工事で踏切を解消する工事が行われている間は踏切の長さが長くなり、無理に横断する人や車が増え、列車の非常停止によるダイヤ乱れも増えました。

 そのため一時はメディアでよく取り上げられており、武蔵小金井駅前にある踏切の映像を記憶している人もいることでしょう。

 2009(平成21)年に武蔵小金井駅周辺の立体交差化が完了すると小金井街道の踏切はなくなり、現在はJR中央線の下を小金井街道が通過。車や人は電車を気にすることなく行き交っています。

高架化で生まれた商業施設

 連続立体交差化と並行して駅の南側では大規模な再開発事業が行われました。JR中央線に隣接したエリアは2012年に、その南のエリアは2020年に完成しています。

 武蔵小金井駅はJR中央線以外に鉄道路線がないにも関わらず、1日あたり10万人以上が利用します。これは乗り換え路線がない駅としては、全国でもトップクラスの利用客数であり、この利用者数をもとに再開発では大規模な商業施設がいくつも開業しました。

 まずJR中央線の高架化で生まれた高架下の土地には「nonowa武蔵小金井」が開業。改札東側には食物販のテナントが入居し、西側にはアパレルや雑貨、レストランのテナントが入居しています。「nonowa」ブランドはJR東日本の子会社・中央ラインモール(小金井市本町)が運営する商業施設のブランドで、ほとんどがJR中央線連続立体交差化で生まれた高架下商業施設です。

nonowa武蔵小金井(画像:(C)Google)

 小金井市内にあるもうひとつのJR中央線の駅、東小金井にある「nonowa東小金井」には生鮮三品それぞれの専門店をそろえた「ヒガコマルシェ」や西欧の小道風の空間に仕上げた商業空間があります。

武蔵小金井駅南に大型商業施設オープン

 さて、武蔵小金井駅に話を戻すと、駅南側には再開発ビルの「アクウェルモール」と大型商業施設の「イトーヨーカドー武蔵小金井店」、テナントビルの「nonowa武蔵小金井SOUTH」が開業しました。

 アクウェルモールには全国チェーンの店だけではなく、地元チェーンのスーパーや再開発前から駅周辺で営業していたであろう飲食店が入っています。「nonowa武蔵小金井SOUTH」は「nonowa武蔵小金井」の一部で、こちらのビルにはチェーンのレストラン、カフェなどが入居しています。

 さらに2020年に入って「ソコラ武蔵小金井クロス」(本町)が開業しました。野村不動産の開発した2棟のマンションを下層階でつなぐように造られた商業施設で、H&Mや食品スーパーなど、生活エリアにあるとうれしいテナントが入居しています。

小金井市本町にあるソコラ武蔵小金井クロスのイメージ(画像:野村不動産ホールディングス)



 もちろん再開発で生まれたのは大型商業施設だけではありません。駅前広場に面して小金井市民交流センターも造られました。そして小金井市民交流センターの西の広場には都立小金井公園近くから移植したケヤキの木があり、文化や自然を大切にする住民意識の高さがうかがえます。

 このようにJR中央線連続立体交差化と駅南側の大規模再開発で武蔵小金井駅周辺は大きくまちの姿が変わっています。

駅近くに湧き水を感じられる庭園

 一方で変わらないのは、小金井市の豊かな自然です。市域の北には玉川上水、南には野川が流れ、JR中央線の南側には太古の昔に多摩川が武蔵野台地を削ってできた斜面「国分寺崖線」があります。

 国分寺崖線沿いには緑地や湧き水も多く、小金井の名は「黄金に値する豊富な水が出る」ということからつけられた「黄金井」という名が転じたものとされています。

 国分寺崖線と湧き水を感じることのできる場所としては「滄浪泉園」(そうろうせんえん、貫井南町)がおすすめです。

小金井市貫井南町にある滄浪泉園(画像:(C)Google)

 武蔵小金井駅から徒歩15分ほどのところにあるこの庭園は実業家の別荘の庭園として造られたもので、木々の生い茂る敷地内で湧き水や水琴窟、池を楽しむことができます。湧き水群は地元では「ハケ」とも呼ばれるそうです。

広大な面積を誇る小金井公園

 国分寺崖線のほかに自然とふれあえる場所として都立小金井公園(関野町)があります。

 もともとは昭和10年代に「紀元2600年記念事業」として旧東京市(現在の東京23区)を取り囲むように緑地を整備する計画の一部として整備された公園です。結局東京を取り囲む緑地は一部しか整備されず、都立小金井公園も戦後の農地解放で4割の土地が公園ではなくなりましたが、それでも面積は80ha(80万平方メートル)と広大な面積を持つ公園です。

小金井市関野町にある小金井公園と江戸東京たてもの園(画像:(C)Google)

 公園の一部には江戸東京博物館の分館として「江戸東京たてもの園」があり、明治から昭和初期にかけての建築物を中心に住宅や商店、銭湯などが移築の上、保存されています。公園と併せて戦前の東京を知ることもできる場所です。

日本の標準時刻が「生まれる」まち

 豊かな自然環境もあってか、大学や研究機関がいくつもあることも小金井市の特徴です。

 大学は東京農工大学(中町)、東京学芸大学(貫井北町)、法政大学(梶野町)が市内にあります。全て1940年代から1960年代にかけて東京都心から小金井に移ってきたキャンパスです。

小金井市貫井北町にある東京学芸大学(画像:(C)Google)



 研究機関としては情報通信研究機構(NICT、貫井北町)が市内にあります。このNICTは私たちの生活に重要な「時間」を決める機能も担っている研究機関で、施設内にある原子時計群が日本の標準時を定めています。

 つまり、小金井は日本の標準時刻が「生まれる」まちでもあります。そのため、武蔵小金井駅の改札前には「日本の『とき』標準時刻が生まれるまち」と書かれた時計があり、数年に一度挿入される「うるう秒」を見ることができます。

 ここまでJR中央線と自然環境を軸に小金井市の今を見てきました。

 JR中央線の開かずの踏切が10年前に解消されたことで新たなまちづくりも進み、特に武蔵小金井駅周辺の再開発では現代的なまちなみが誕生。イメージが一新されています。一方で自然との距離が近く、大学や研究機関も立地するまちという側面もあります。

 なかなか名前を目にすることは少ないまちではありますが、さまざまな要素があるがゆえに巡りがいがあり、知れば知るほど面白いまちといえそうです。

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