2020年「今年の顔」に選ばれた人気ぶり
2020年11月12日(木)に放送されるフジテレビ系木曜ドラマ『ルパンの娘』第5話に、フリーアナウンサーの田中みな実さんがゲスト出演することが発表されました。
本作は代々泥棒一家の娘と代々警察一家の息子が繰り広げるラブコメディーで、主演は深田恭子さん。2019年7月クールに第1シーズンが、2020年10月からは続編が放送されています。
田中さんが演じるのは、セクシーな女泥棒。前作で深田さん演じる主人公らに敗れた彼女の再登場はもちろん、それ以上に話題となったのが田中さんの泥棒コスチューム姿です。
公開されたのは、田中さんが網タイツの上から黒のボンテージを重ね、ソファーの上に寝転がりながらこちらに不敵な笑みを浮かべている写真。うっとりするほどの美貌に、男性視聴者以上に女性たちからの支持が集まっているようです。
TBS(港区赤坂)のアナウンサー時代にぶりっ子キャラで有名になり、一時期は「同性から嫌われるタイプの女性」とされていた田中さん。しかし、フリー転身後から徐々に人気を獲得し、2019年頃からバラエティだけではなく、ドラマにも引っ張りだこに。
2019年末に宝島社(千代田区一番町)から発売された写真集は発売からわずか1か月で50万部を突破。2020年は歌手・浜崎あゆみさんのデビュー秘話を描いたドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)に悪役として出演し、その怪演ぶりが話題となりました。
11月3日(火)に発表された月刊情報誌『日経トレンディ』(日経BP社)の「2020年 今年の顔」にも選出されています。
20代が「お手本にしたい」30代女優たち
まもなく34歳の誕生日を迎える彼女を支持する声は、同世代のアラサー女子はもちろん、10~20代の女性にも及んでいるのが特徴的。
日本生活協同組合連合会(渋谷区渋谷)が全国の女性1000人に聞いた調査によると、20代が選ぶ「“美活”のお手本にしたいと思う女性タレント」で第1位に選ばれています(2020年2月、20~59歳を対象に実施)。
同ランキングの第2位は菜々緒さん、3位は石原さとみさん、4位はローラさん、5位は綾瀬はるかさん。
驚くべきは、20代の女性が選んでいるにもかかわらず、1~5位にランクインしている全員が30代の女性芸能人だということです。
近年は10~20代の女性を中心に、Huluで配信されたオーディション番組『Nizi Project』から誕生したガールズグループ・NiziU(ニジュー)や、『オオカミくんには騙されない』や『今日、好きになりました。』をはじめとする恋愛リアリティショーの出演者、女優でいえば橋本環奈さん、浜辺美波さんたちも大人気。
一方、新垣結衣さんや石原さとみさんなど、2000年代を代表する女優の人気も健在で、さらに上の年代にあたる石田ゆり子さん、原田知世さんもあこがれの女性として名前が頻出しているのです。
10~20代女性が同年代の女性芸能人にあこがれるのは、「まねしやすい」「親近感が湧く」「今流行しているものがわかる」といった理由が浮かびます。
しかし、自分とは異なる年代の女性芸能人にも惹かれ、それだけではなくファッションや美容の“アイコン”として捉えているのはなぜなのでしょうか。
20代と30代で変わること
まずひとつの理由として挙げられるのは、今どきの女性芸能人たちはエイジレスだということ。
新垣さん、石原さん、綾瀬さんも10代や20代の頃とはまた雰囲気は違いますが、老けるどころか年々美しくなっているように感じている視聴者は少なくないでしょう。
彼女たちの美しさの秘訣が知りたいと、雑誌やテレビのインタビューでは愛用しているコスメやスキンケア方法などの話題で持ちきりに。
その中でも田中さんは惜しむことなく美容メソッドを発信しており、写真集の公式Instagramでは寝る前のパックやトレーニング中の姿を公開。
美しいのに“何もしていない”ということが持てはやされていた時代が終わり、田中さんや菜々緒さん、ローラさんのように美しさを保つために血のにじむような努力をしている女性にあこがれる女性が増えてきたことも、彼女たちが支持されるゆえんでもあるでしょう。
さらに、10~20代があこがれる30代以上の女性芸能人はいずれも努力の方向性が“若作り”ではありません。
自分を若く見せようとすれば、厚化粧をしたり露出度の高い服装を着たりと「女性があこがれる女性像」から遠ざかってしまいがちですが、彼女たちはむしろ年々薄化粧になっている印象です。
歳を重ねた自分を隠そうとして何かを「足す」のではなく「引く」。スキンケアや食生活にこだわり、艶(つや)やかな内側の美に若い世代の女性もあこがれるのでしょう。
「30歳までに結婚したい」という焦り
女性向け情報サイトOKGIRLによる「20代独身女性の結婚希望年齢」調査によると、20代の女性読者511人中、「24歳以下」「25~27歳」「28~30歳」と回答した人は計80.7%。そのうち「28~30歳」と答えた割合は全体の49.1%と、半数を占めています。
回答した読者からは
「20代は独身を楽しんで30手前で結婚するのが理想」
「親も心配するので、30歳までには結婚したい」
といったコメントが寄せられ、同サイト運営者も「出産のリミットや世間体を理由に『30歳』をひとつのターニングポイントと考える女性が多いよう」と分析しています。
かつて「女はクリスマスケーキ」などと例えられた時代がありました。
クリスマスケーキは12月24日のイブが一番よく売れて、翌25日が売れどきのリミット、それを過ぎると価値が落ちていく。女性も同じように「24、25歳が価値のピークだ」とする例え話です。
こうした“若さ = 美しさ”という考え方はもはや時代遅れだと思うかもしれませんが、調査からも分かるように今でも歳をとることに忌避感や消極的イメージを抱いている女性は多いもの。
それは、常に先進的な価値観を生み続けているとされる東京でも例外ではありません。
悲観する必要のない未来を体現する存在
2020年10月にスペシャル版も放送されたドラマ『東京タラレバ娘』(日本テレビ系、2017年)では、「どうやら私たちには時間がないらしい」と焦るアラサー女性3人の葛藤が生々しく描かれ、同世代の女性たちに大きな反響をもたらしました。
東京の街で暮らし、働き、自立した生活を送っていたとしても、何か満たされない。今に満足しているようでも、年を取ってしまった後では手に入れにくくなるものがある――。
そう考える登場人物たちの心情描写は、否定しがたいリアリティーをはらんでいるからこそ多くの共感を集めたのでしょう。
そんな中で、例に挙げた女性芸能人たちは、年齢を重ねてもその時々に合った美しさを身につけ、楽しく伸びやかに生きる様を見せてくれています。
彼女たちの存在は、「30歳を超えること」に漠然とした不安を抱く10~20代の女性にとって、悲観する必要などない明るい将来を示唆(しさ)してくれる希望とも言える存在なのではないでしょうか。