ラベルのないペットボトル、あなたは支持派? コロナ禍で浸透加速「ラベルレス商品」を考える

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ラベルのないペットボトル、あなたは支持派? コロナ禍で浸透加速「ラベルレス商品」を考える

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小川裕夫

フリーランスライター

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経産省の省令改正を背景に、ペットボトル飲料のラベルレス化が加速しています。環境問題だけでなく、コロナ禍の昨今、ラベルレス化は消費者にどのようなメリットがあるのでしょうか。フリーランスライターの小川裕夫さんが解説します。

各人の身近に迫っている環境問題

 新型コロナウイルスの感染拡大は、東京の日常を一変させました。マスクの着用や手洗いの推奨、スーパーなどの小売店では入り口に消毒液が、レジにはビニールカーテンが設置されるのは当たり前になっています。

 また、感染拡大を少しでも避けようとする心理的な働きもあり、都内の飲食店のテイクアウトも普及拡大しています。

 そんな“新しい生活様式”が浸透する中で、コロナ禍をきっかけに環境問題への取り組みも進んでいます。

 昨今の環境問題で注目された取り組みは、環境負荷の高いプラスチック製ストローからリサイクルしやすい紙製ストローへの切り替え、レジ袋削減のために2020年7月1日(水)から実施されたレジ袋有料化などがすぐに思い浮かびます。

 環境問題は私たちの生活に影響を与えるため、各方面で対策を講じていかなければなりません。

加速するペットボトル飲料のラベルレス化

 昨今、環境問題の取り組みとしてメーカーが傾注しているのはペットボトル飲料のラベルレス化です。

ラベルレスのペットボトル飲料(画像:日本コカ・コーラ)



 かつて缶や瓶で販売されていたドリンク類は、いまや多くがペットボトルに切り替えられています。

 ペットボトルへの切り替えは、瓶や缶に比べると軽量で破損しにくいというメリットがあります。そうした利点から輸送や保管に優れ、メーカーに重宝されてきたのです。

わざわざ包装やラベルがあるワケ

 しかし缶や瓶は回収されてリサイクルできますが、ペットボトルは再資源化が難しいと言われてきました。時代とともに技術の問題はクリアできるようになりましたが、ペットボトルの再資源化を大きく阻んでいる要因が、ペットボトルの包装やラベルでした。

 一般的に、ペットボトルの容器は無色透明か薄い緑色や淡い水色です。それらは色つきであっても、半透明の容器が使用されています。

 透明・半透明の容器が使われるのは中身が一目でわかるようにとの配慮からですが、色で見分けるのが難しい飲料もあります。

ラベル付きとラベルレスのペットボトル飲料(画像:アサヒ飲料)



 お茶系飲料では、麦茶・ほうじ茶・ウーロン茶・ストレートティーなど多くの種類があります。また、コーヒーにいたっては無糖・微糖・低糖・加糖などと細分化されています。見た目だけで、これらを消費者が判別することは不可能でしょう。

 そうした理由から、飲料メーカーは商品が識別できる包装やラベルで、消費者に一目でわかるようにしています。

ドリンク類のネット販売は爆発的に普及

 ペットボトルに貼られたラベルは、分別時に剥がさなければなりません。すぐに剥がれてしまうと輸送や陳列で問題が生じるため、簡単には剥がれないような工夫がされています。

 そうした工夫はリサイクルの際にかえって手間になり、それがペットボトルの再資源化を阻む要因でもありました。

 IT技術の進歩により、ドリンク類の購入様式は「店頭で買う」から「ネットで箱買いする」への潮流が強くなっています。

「ネットで箱買いする」イメージ(画像:写真AC)

 ネットで買えば、自宅まで届けてくれるという手軽さがあるわけですが、これまでネット販売はスーパーなどと比べると、価格的優位性に乏しいのが実態でした。

 また、飲食物は自分の目で見てきちんと確認してから買いたいという消費者心理も強くありました。それらの理由から、ドリンク類のネット販売は爆発的に普及せず、時間をかけて少しずつ拡大するといった具合でした。

コロナ禍でネット購入増、ラベルレス化も加速?

 昨今、猛暑で熱中症の危険性が叫ばれるようになると、高まるのが水分摂取の重要性です。

 こうした状況が、持ち運びに便利なペットボトル飲料の市場拡大につながります。消費量が増えたこともあって、ペットボトル飲料を箱買いすることは一般家庭でも珍しくなくなり、手軽さからネットでの販売量が拡大しているのです。

 そして今般の新型コロナウイルスにより、人と接することなく購入できるメリットが後押しします。

 店頭で販売されるペットボトル飲料は、消費者に製品のPRをしなければならないためにボトルに包装もしくはラベルを貼る必要性があります。しかしネット販売なら、いちいちラベルを貼って商品PRをする必要がありません。

 これまでにも、飲料メーカーは再資源化や環境意識の向上からペットボトルのラベルレス化を少しずつ進めてきました。

首掛式ラベル付の「伊右衛門ラベルレス」(画像:サントリー食品インターナショナル)



 ラベルレスの流れとして、ボトル全体を覆う包装ではなく、ボトルの首の部分にシールを貼っただけの簡易的なラベルに変更するといった取り組みも進められていました。

経産省の省令改正が大きなきっかけに

 ペットボトル容器は、材質やリサイクルの表示を明示することが定められています。

 2020年3月末、経済産業省が資源有効利用促進法の省令を改正。ラベルやシールに替わり、ペットボトルそのものにエンボス加工などを施して、それらを明示することが認められるようになりました。

エンボス加工が施されたラベルレスのペットボトル(画像:日本コカ・コーラ)

 先述したように、コンビニやスーパーといった店頭販売では買い物客に商品を手に取ってもらうという販促目的もあるので、ボトル包装やラベルは欠かせません。

 しかし、ネット販売ではその必要性がありません。省令改正を機に、飲料メーカーの取り組むラベルレスが大きく進もうとしているのです。

“新しい生活様式”が生み出す新しい快適さ

 ラベルレスはゴミの削減をはじめ、消費者にとっても捨てる際にラベルを剥がす手間がなくなります。これらは、分別回収にも寄与します。

 他方、食料品や飲料は食品表示法で産地や原材料の記載が義務づけられています。

 箱売りはそれらをダンボールなどの箱面に記載できます。一方、コンビニやスーパー、自販機といった個別売りはラベルレスでの表示が難しく、メーカーは試行錯誤を重ねています。

 新型コロナウイルスの感染拡大が引き起こした“新しい生活様式”は、これまで当たり前とされてきた生活に一手間を加えることが多く、その手間は私たち個人にしわ寄せがきていました。そのため、“新しい生活様式”になじめず、面倒に感じることも少なくありませんでした。

“新しい生活様式”のイメージ(画像:写真AC)



 しかし、キャッシュレス決済の普及、テレワークの推進、そしてラベルレスによる再資源化の促進など、“新しい生活様式”によって生活が便利になり、社会が快適になるプラスの方向に作用している部分もあるのです。

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