大学1年目から「企業インターン」 先取り就活に励む学生を“やる気がある”と全面肯定しきれないワケ

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大学1年目から「企業インターン」 先取り就活に励む学生を“やる気がある”と全面肯定しきれないワケ

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井上智尋

慶応大生ライター

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東京に在住・在学する今どきの大学生たちは、どのような価値観を持っているのでしょうか。現役大学生が生の声をリポートする企画、今回のテーマは「コロナ禍でのアルバイトとインターンシップ事情」です。

リモートバイトで広がる選択肢

 新型コロナ禍は、東京の大学生たちにどのような変化をもたらしたのか? 授業やアルバイトがリモートに変わり、入学早々から企業インターンシップを始める学生が増えたことが意味するものとは? 慶応大学に通う現役大学生ライターが、学生たちの今をリポートします。

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 新型コロナウイルス禍では、大学生たちもまたさまざまな制約を受けました。緊急事態宣言の発令によって各店舗が時短営業などの措置を取ったため、学校終わりの時間帯でのアルバイトが難しくなったこともその一例です。

 その結果、リモートでできるアルバイトを選択する学生が多くなりました。特に最近よく見受けられるのは、リモート家庭教師・塾講師です。

コロナ禍で変化した大学生のアルバイトやインターン事情とは(画像:写真AC)



 パソコンのリモート会議システムを用いて、リアルタイムで中高生と話しながら指導するリモート家庭教師・塾講師。対面式の指導とは少々勝手の違う点もあって、例えば数学では、生徒の目の前で図形を描けないため教え方に工夫する必要がある、と話す学生の声が聞かれました。

 ただ、ほとんどの場面では特に問題なく従来と同じように指導ができている様子。勤務先への移動も無いため、その分の時間を有効活用できます。東京都内に在住しながら、リモートで他県の生徒の家庭教師を受け持っている学生も実際に多くいます。

 指導を受ける生徒の側にとっても、自身の居住地にかかわらず第1志望の大学生と簡単につながることができるのは、リモートならではのメリットと言えるでしょう。

コロナが生んだ就活の弊害

 家庭教師のほかには、大学のリモート授業のアシスタントを積極的に行う学生もいます。教授とメールで定期的にコミュニケーションを取るため、研究内容はもちろん礼儀作法などについても深く学ぶことができる点が魅力として挙げられます。

 学期ごとの契約になることが多く、長期間勤務を継続する必要はありません。予定が急に変わることも多い学生にとって、そういった短期間のアルバイトは人気を集める理由のひとつにもなります。

 さらに電話やZoomアプリなどを使って企業が主催する、大学生限定グループインタビューやワークショップに参加している学生もいます。企業とコネクションが持てること、基本的に1日から数日間の単発案件であること、人と話す訓練ができることに魅力を感じている学生が多いようです。

日本を代表するオフィス街、千代田区の丸の内エリア(画像:写真AC)



 このようにリモートでのアルバイトは、自身の時間・居住地にかかわらず行うことができるのが最大の利点。コミュニケーション面でも困る点は少なく、むしろリラックスした部屋で仕事することで精神的に楽になったと語る大学生もいます。

 また、浮いた時間を学業などに充てる人も増えました。

 コロナ禍は学生に多少ともメリットをもたらしたと言えそうですが、同時に、少なからず弊害も生じているようです。

 コロナ禍の状況に危機感を持つあまり、就職活動に目を向け過ぎ、それによって学業がおろそかになる学生も存在するようになったのです。

インターンと学業 両立に悩み

「コロナの影響で内定を取り消された」
「コロナ禍の打撃により、希望職種が新卒募集を停止した」……

 2020年以降、そう嘆く先輩たちの声を耳にした大学1、2年生は少なくありません。就職に対する不安が学生たちの間で増大しました。

 その結果、筆者の周りでも、大学1年目から就職活動を意識した長期インターンシップを行う学生が増えました。

 しかしインターンは、一般的なアルバイトとは異なり、学生であっても社員と同様に扱う企業がほとんどです。そのためタスクや時間的拘束が負担となり、学業と両立できなくなったために、休学を選択してしまう学生もいるほどです。

就職活動を意識するあまり、学業との両立が難しくなる例も(画像:写真AC)



 最悪の場合、過剰なノルマなどが課される「ブラックインターン」と呼ばれるものに引っ掛かってしまう学生もいます。なかには学生がお金を支払って「ガクチカ」(就活でアピールする「学生時代に力を入れたこと」)を手に入れるためにインターンを行う例もあります。

 みずからお金を払って労働をするという形態には、やはり疑問を感じている学生も少なくありません。

 1、2年生であっても早々にインターンをしなければならないという風潮が加速したのは、コロナ弊害の一例と言うことができるでしょう。

リスク回避と、安定志向

 今の若者は、大人世代からしばしば「リスク回避志向が強い」「ほどほどで満足する」などと称されることがあります。筆者はその指摘はおおむね当たっていると考えており、またその傾向は近年より顕著になっていると感じています。

 というのも、コロナ禍という“ディストピア”的状況で、無気力になってしまっている若者が多いからです。

「オンライン授業はつまらないから出席しない」
「サークル活動に打ち込めなくて鬱状態になっている」

といった先輩や同級生のネガティブな声もたびたび聞きます。ただ、日々の活力となるやる気は失っていても、安定した職を得なければならないという最低限の危機感を彼らは持っています。

 その結果、リスク回避志向は強いものの上昇志向には乏しい、という状態になっているのではないだろうかと筆者は推察します。

リスクを避け、安定を手に入れたいと考える若者も少なくない(画像:写真AC)



 彼らはコロナ禍でひとりになる状況が多くなった結果、自分の人生や周囲の状況について孤独に考える機会が多くなりました。自身と周りを見つめ直すことで、将来の正しい在り方について熟考しているのです。

 また加えて、誰かと何かをする達成感よりも、黙々と安定して過ごすことに快適さを覚えてしまった人も少なくないようです。

“意識高い系”学生の本心は?

 2021年11月現在、緊急事態宣言も解除され、多くの大学が再びオンライン授業から対面授業への移行を始めています。

 しかしなかには、オンライン授業の継続を求めている学生の声も聞かれます。せわしなかった日々に戻るよりも、ゆっくりと安定した日常を送ることを望んでいる大学生が増えたということなのでしょう。

「大学生の本分は学業である」と昔から言われてはいるものの、その価値観も当事者である学生の間では少しずつ変化を見せているようです。

 就職活動・課外活動に積極的に取り組む“意識高い系”大学生も一定数存在してはいますが、彼らもまた最終的な安定を求めて日々の活動に励んでいるのではないでしょうか。

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