かつては「しょっぱくて硬いもの」……日本人のチーズ観を覆した「チーズケーキ」の偉大なる歴史【連載】アタマで食べる東京フード(4)
2020年5月20日
ライフ味ではなく「情報」として、モノではなく「物語」として、ハラではなくアタマで食べる物として――そう、まるでファッションのように次々と消費される流行の食べ物「ファッションフード」。その言葉の提唱者である食文化研究家の畑中三応子さんが、東京ファッションフードが持つ、懐かしい味の今を巡ります。
日本人のチーズ観を変えた衝撃
さっきセブン―イレブン・ジャパンの冷蔵スイーツケースを見てみたら、全部で17種類のうち、7種類がチーズを使ったスイーツでした。大手メーカーのカップ入りデザートにもチーズ系は豊富で、ドリンクタイプまであり、あらためてチーズスイーツの圧倒的強さに感心させられます。
チーズスイーツがこれほど愛されるようになった発端は、1970年代に起こったチーズケーキの大ブーム。戦後の洋菓子界で最初の爆発的ヒット作であり、いろいろな意味で革命的と呼びたくなる出来事でした。

チーズでお菓子を作ることに当時の人々がどれほど驚いたか、今では想像できないかもしれませんが、本当にみんな「びっくり仰天」しました。
日本で乳製品が本格的に食べられるようになったのは、戦後から。学校給食でパン食が普及した影響で、ずっと乳製品の王座にあったのはバターでしたが、1966(昭和41)年に生産量と家庭内消費の両方でバターを抜き去りました。
その頃に現れたのが、チーズケーキです。欧米でチーズといえばナチュラルチーズなのに対し、日本では加熱処理を行ったプロセスチーズが独自に発達。6Pチーズのように硬くて塩気のあるチーズしか知らなかった日本人にとって、しょっぱくなくてやわらかいチーズが存在すること自体が、青天のへきれきでした。
そもそも、洋菓子の種類がまだ少なく、全国どの店でもショートケーキにモンブラン、シュークリームにエクレアばかりが幅を利かせて、ケーキに使うクリームは、ホイップクリームとカスタード、バタークリームくらいしかなかった時代。ケーキのマンネリを打ち破る新材料として、クリームチーズとカッテージチーズに、お菓子屋さんが一斉に飛びつきました。

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