「ピンチ」が日本を強くする――新型コロナ禍で次々生まれる「非・移動型」新ビジネスの最前線とは

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「ピンチ」が日本を強くする――新型コロナ禍で次々生まれる「非・移動型」新ビジネスの最前線とは

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松田優幸

消費者経済総研 チーフ・コンサルタント

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新型コロナウイルスは、人々がこれまでに経験したことのない生活面・経済面の制約をもたらした一方で、新たなライフスタイル、ビジネスを成長させるチャンスという側面も担っているといいます。消費者経済総研 チーフ・コンサルタントの松田優幸さんが解説します。

ピンチに見舞われるビジネスや生活の現状

 5月は、まさに「お出掛け日和」の季節です。しかし残念ながら2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でゴールデンウイーク(GW)も自粛期間。お出掛けはできずじまいでした。

 例年、GW前の4月は東京にさまざまな商業空間が誕生するシーズンです。

 2020年4月も、本来であれば「グリーンスプリングス」(立川市緑町)、「東京ミズマチ」(墨田区向島)、「羽田エアポートガーデン」(大田区羽田空港)、「有明ガーデン」(江東区有明)などがオープンする予定でした。

 これらの施設は以前、2020年1月27日配信の「アーバンライフメトロ」の記事(「キーワードは温泉や海辺? 知っておくべき『東京の注目スポット』ベスト10」)で取り上げたものです。

 しかしグラウンドオープンは軒並み延期に。「東京でのお出掛け」も、しばらく我慢することになりそうです(「グリーンスプリングス」は一部店舗のみ開業しています)。

未曽有の危機にも次々生まれる新ビジネス。今後の日本のライフスタイルを大きく変えるかもしれない(画像:写真AC)



 町の飲食店もレジャー施設も、営業短縮や自主休業。日本の生活や経済は今、「ピンチ」を迎えています。

過去の進化や変化も、ピンチから生まれた

 日本はこれまでも、さまざまな危機(ピンチ)に見舞われてきました。

 太平洋戦争では、日本は焦土になりましたが、その後インフラ建設が進むなどして高度経済成長を成し遂げます。また1970年代に起きた「オイルショック」の後には、省エネルギーの技術進展が進みました。日本は「ピンチで進化」してきた国なのです。

 2011年の東日本大震災の後には、人と人との「つながり」を大切に思うようになりました。その機運に後押しされて普及したと言われているのがコミュニケーションアプリ「LINE」です。非常時の連絡の確認から、「既読」の機能が生まれたと言われています。「ピンチによって新たな変化」が現れた好例です。

 今回の記事は、新型コロナによる経済・生活面での「ピンチで変化・進化」がテーマ。「日本はどう変化するのか?」をお伝えしていきます。

コロナ禍の中国でブレークした在宅ゲーム

 さて中国では、新型コロナの影響で「在宅でのゲーム」がブレークしたようです。

 筆者(松田優幸。消費者経済総研 チーフ・コンサルタント)も、在宅で運動ができる任天堂Switchの「リングフィット アドベンチャー」を始めました。

ゲームの世界と連動させることで、自宅にいながら全身を使った運動ができる「リングフィット アドベンチャー」(画像:任天堂ウェブサイト)



 緊急事態宣言のさなかにある「ウイズ・コロナ」においては、さまざまな「在宅、遠隔の非・移動」に関する商品が発展していくでしょう。

 そして、新しいライフスタイルやビジネススタイルも誕生することが予想されます。日本の習慣も変化するでしょう。生活も便利に、仕事もプラスの効果へとつながる新発見・再発見という視点でも、今後の行方を占ってみたいと思います。

2020年 令和のキーワード「非・移動」とは

 筆者がチーフ・コンサルタントを務める「消費者経済総研」では、「令和時代の長期トレンド予測」を2019年4月25日(木)に、「2020年の年間トレンド予測」を同年12月25日(水)に、それぞれ発表しました。

 この予測でのメインのキーワードは「非・移動革命」です。人々が移動しなくても生活を楽しめる、また仕事もスムーズになるという「移動しない革命」です。

自宅にいながら楽しむ遠隔型ショッピング

「アバターインストア」というサービスがあります。「実店舗に居るロボット」を消費者が操作し、在宅で買い物ができるという新しい仕組みです。商品棚にロボットが接近し、ロボットのカメラで写した商品を自宅から遠隔で選択。店員に対して商品に関する質問や会話をすることもできます。

 コレド室町3(中央区日本橋室町)の中にある三越伊勢丹の小型店での遠隔ショッピングや、二子玉川の蔦屋家電(世田谷区玉川)でのコンシェルジュとの本選びなども、実際に実施されました。

 まさにリモートで「東京お出掛け」が楽しめるのです。すでに終了したものもありますが、5月以降もいろいろな展開がありそうなので、「ステイホーム」中でも要チェックです。

ロボット(左)に内蔵されたカメラを通して実店舗での買い物を楽しめる「アバターインストア」(画像:avatarinウェブサイト)



 アバターを使ったこの「都市実装共同事業」を展開しているのは、ANA(全日空)ホールディングス(港区東新橋)。空路という「移動ビジネス」を担うANAグループによる新たな「非・移動ビジネス」です。

 なお、同社は「自宅から遠隔でできる魚釣りや旅行」にも取り組み始めています。

VRゴーグルが描く立体感・リアル感に驚き

 VRゴーグル商品「オキュラス」がすでにヒットしています。有線ケーブルの接続が不要で、単独で使える快適さや画質の良さも特長です。

 筆者も購入し使ってみたところ、ゴーグルの中で展開される動画の立体感・リアル感のスゴさに圧倒されました。このスゴさを言葉で伝えることはなかなか難しく、体験するほかありません。

圧倒的な立体感と表現力が魅力のVRゴーグル「オキュラス」(画像:Oculusウェブサイト)

 なお、筆者はセッティングに少々手間取り、時間も掛かってしまいした。「ステイホーム」で時間がある今は、VRゴーグルにトライしてみるチャンスかもしれません。

 ちなみに、VRゴーグルのヒットは「バーチャルYouTuber(CGキャラを使った動画投稿者)」ブームにもつながりました。また音楽ライブへは、会場へ移動しなくてもVRを装着することで参加できます。スポーツ観戦ではどうでしょうか? 自粛中に無観客試合が行われるならば、スタジアムに移動せずにVRで在宅観戦できるかもしれませんね。

在宅で可能、増え続ける「副業」の選択肢

 新型コロナの影響で仕事の量が減り、お困りの人もいるかと思います。このピンチを、在宅で収入を簡単に増やすチャンスにつなげるマッチングサービスがあります。「新しいお仕事」も、空き時間を活用した「アキ活の副業」も、ステイホームのまま個人で受注できるのです。

 在宅業務のマッチングでは「ビザスク」や「クラウドワークス」などのクラウドソーシングが有名です。

各個人が持つノウハウや経験、知見を生かしたコンサル業務を創出するサービス「ビザスク」の説明ページ(画像:ビザスクウェブサイト)



 自身のノウハウや経験値を提供する「ビザスク」なら、クライアントに向けて自分が詳しい得意分野を「在宅で」1時間程度しゃべることで収入を得られます。また、ロゴデザインやイラスト制作、ライティングなども行う「クラウドワークス」。こちらも家事の合間や土日など「在宅」での空き時間を使って収入につなげることができます。

「クラウドワークス」は2020年4月6日(日)、同サービスに登録している全国のフリーランサー1400人を対象に、新型コロナによる仕事への影響に関する緊急調査を行いました。回答者のうち「収入に影響が出ている」と答えた人は全体の65.1%。非常に重い数字です。ただ一方で、3人にひとりは「特に影響は出ていない」と回答している点にも注目したいと思います。

 同調査は「緊急事態宣言」発令前に実施されたものではありますが、このコロナ禍でも新規の仕事を獲得したり、副業をうまく見つけたりしている人はそれなりにいるのだと捉えることもできるでしょう。

 ウーバーイーツ以外にも、「アキ活」のさまざまなチャンスは見つけられそうです。

無駄な移動を減らし生産効率を上げる好機

 くしくも新型コロナ感染拡大の影響で、東京などの首都圏を中心に在宅勤務(テレワーク)の導入が進みました。これにより、参加者全員が一堂に会する会議や毎日の通勤が必須のものではないということが明らかになりました。

 日本企業の生産性が低い理由のひとつとして、消費者経済総研では「無駄な移動」に着目しています。

ビジネスの会議も、オンラインで十分行えることが実証された新型コロナ禍(画像:写真AC)



 コロナを機に加速する「非・移動革命」は、経済面において大きなチャンスをもたらすかもしれません。また、生活者にとっては「非・移動」で楽しむ、働く、さまざまなツールを知るチャンスにもなるでしょう。コロナがもたらしたピンチは、企業にも生活者にも「変化するチャンス」となり得るのです。

「ステイホーム」の要請によって、在宅時間が増えている現状です。この時間を、ただ退屈に過ごすのではなく「新しい非・移動スタイル」に挑戦する時間にしてみるというのはいかがでしょうか。

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