外出自粛で1日「スマホ10時間」な大学生を一概に批判してはいけないワケ
徹底的に「家にいる」女子大生の一日とは 新型コロナウイルスの世界的感染拡大で、日本では2020年4月に全国47都道府県を対象とした「緊急事態宣言」が発令。東京都は遊興・商業施設などへの営業休止を要請するとともに、都民に対して外出自粛を強く訴えました。 「外出を控えて家にとどまろう」と呼び掛けるSNSのハッシュタグ「#StayHome」は世界中で広まり、多くの人が今、自宅にいることを余儀なくされています。 こうした状況のなか、東京に住む若者たちは実際どのように1日を過ごしているのでしょうか。 外出自粛のなか、自宅で過ごす東京の女子大生のイメージ(画像:写真AC) Z世代(1996~2012年に生まれた若者たち)の流行や価値観について調査・分析している私たち「Z総研」は今回、都内に住む女子大生(2年生)に1日のスケジュールを聞いてみました。 LINE、インスタ、YouTube、ネトフリ……12時:起床、ベッドでLINE・Instagram・YouTubeタイム 13時:朝ご飯 兼 昼ご飯 14時:お母さんとスーパーへ買い出しに 15時:「#おうちカフェ」してみる 17時:ネットフリックス(ネトフリ)で「鬼滅の刃」視聴 19時:夜ご飯、ネトフリ、SNS 21時:お風呂 22時:友達と「Zoom飲み」 24時:「オンライン人狼」始まる 26時:日付変わったから「テラハ」見る 27時:就寝 外出自粛のなか、東京の女子大生が1日をどう過ごしているのかを表した図(画像:Z総研)※ ※ ※ 以下、念のため語句の意味を補足します。 ・#おうちカフェ……Instagramなどで流行しているハッシュタグのひとつ(詳しくは後述) ・鬼滅の刃……週刊少年ジャンプで連載中の漫画。アニメ化もされており、女子大生にも大人気 ・Zoom飲み……テレビ会議システム「Zoom」を使ったオンライン飲み会(詳しくは後述) ・オンライン人狼……人気の推理ゲーム「人狼」をオンラインでやること ・テラハ……恋愛リアリティー番組「テラスハウス」 確かに「スマホばっかり」ではありますが確かに「スマホばっかり」ではありますが 彼女の1日の過ごし方を見て、皆さんどのような感想を持たれたでしょうか。 起き出す時間が遅過ぎる? スマホばっかり触ってる? ……確かに、決して規則正しい生活とは言えませんが、注目してほしいのは彼女が、必要な日用品の買い物以外は徹底して「#StayHome」=「家にいる」を守っていること。 どうでしょう。報道などでたびたび指摘される「若者が街に出歩き、感染を拡大させている」との指摘とは、ちょっと違った印象を受けるのではないでしょうか。 ちなみにあくまでこのスケジュールは一例であり、オンライン授業が始まっている大学もあるので、別の日は勉強もきちんとしているそうです。 自宅でスイーツを作り、インスタにアップ 今、オンライン上では「#StayHome」というハッシュタグを通じてさまざまな流行が生まれています。 そのひとつが彼女のスケジュールにもある「#おうちカフェ」。家で作れてSNS映えもするドリンクやスイーツを自作し、SNSにアップすることです。特に人気のメニューは「タルゴナコーヒー」で、これは牛乳の上に泡状にしたコーヒーホイップをのせたもの。 また、アメリカのディズニーリゾートの公式ブログが「チュロス」のレシピを公開して話題となり、こちらも世界中に広まりました。もちろん日本・東京でも、若い世代を中心に次々と投稿が集まっています。 Instagramに多数アップされている「#おうちカフェ」の投稿(画像:Z総研) 家にいてもおしゃれなカフェで出てくるようなスイーツを作ってInstagramにアップ。自粛中でも「いいね」の数を意識するZ世代は、自己アピールに貪欲です。 さらにもうひとつ注目したいのは、彼女のスケジュールにある「Zoom飲み」の流行です。 Zoomとは在宅勤務(テレワーク)を導入した企業などの間で利用が拡大しているテレビ会議システムのことで、主にビジネスシーンで使われるツールだと思っている人も多いはず。そのZoomが今、むしろ若者の間で広がりを見せているのです。 一体なぜなのでしょうか。 会議ツールを独創的に使いこなす若者たち会議ツールを独創的に使いこなす若者たち Z世代は直接友達と会って話をするのと同じくらい、SNSでリアルタイムに連絡を取り合い、チャットでおしゃべりしたり、オンラインゲームで対戦したりと、普段からオンライン上でのやり取りが活発です。 しかし、いつも会えていた友達に今は会えなくなってしまった。そこで、テレビ電話を利用してオンライン上での交流をより密なものにしているようなのです。 そう考えると、冒頭で紹介した女子大生の1日のスケジュールも、スマホでただ時間をつぶしているだけというよりは、むしろオンラインを通じた人との交流を楽しんでいる時間の方が多いということに気がつくのではないでしょうか。 しかし、そのコミュニケーションの手段はなぜ本来ビジネス用とされているZoomだったのか。 これはZoomだけに限った話ではないのですが、テレビ電話というのは思わぬハプニングがつきものです。テレビ電話のメリットは上半身しか写らないこと。下はどんな格好をしていてもバレません。上だけ仕事用の服に着替えて下はパジャマやスエットで会議に参加している……そんなビジネスパーソンもいるのではないかと思います。 実際にTwitterでは、ズボンを穿いていない男性がテレビ会議のカメラを切り忘れたまま席を立ち、下着のパンツ姿を同僚に見られて大慌てするという海外の面白動画が話題になっていました。こうした面白情報に接した若者たちが、いち早くZoomに飛びついたのだと思われます。 カメラがオンのままとは気づかずパンツ姿をさらしてしまった男性(左上)と、驚く同僚たちの投稿動画(画像:987TheBull) ハプニングに加えて、Zoomの面白い機能といえば「バーチャル背景」。もともとは、テレビ会議の際に自分の後ろに映り込む自宅の様子を見られたくない人向けに開発された「プライバシー配慮」のための機能なのですが、若者たちはこの機能を大胆にも応用。 ほかのZoom参加者と背景画像を統一することで同じ場所にいるような一体感を味わってみたり、一風変わった画像を設定してひと笑い起こしてみたりと、自分のオリジナリティーを発揮することに活用しているようなのです。 オンラインがかなえた、自粛中の誕生日会オンラインがかなえた、自粛中の誕生日会 このバーチャル背景機能、Z世代は実にうまく使いこなして遊んでいます。 自分たちが通っていた高校の校舎の画像を背景に設定して、当時のジャージーや制服を着て楽しむ「バーチャル同窓会」。東京ディズニーリゾートの画像を設定してミッキーの耳をかたどったカチューシャを身につけて味わう「バーチャルディズニー」。 バーチャルの背景とリアルの服装・小物とを融合させて生み出す遊びは、デジタルネーティブと呼ばれる彼らならではの発想と言えるでしょう。 たとえ外出自粛で会えなくても「友達の誕生日を祝いたい」という思いをオンラインツールを活用して結実させるのが今どきの若者たち(画像:写真AC) 外出自粛の今だからこそ生まれた楽しみ方もあります。 3月に卒業した大学の先輩の「追いコン(追い出しコンパ)」や、サークル勧誘の新入生歓迎会。さらに、オンラインツールがなければ顔を合わせることさえかなわなかったであろう、春生まれの友達の誕生日パーティーを盛大に開催してみたり、新学期に同じクラスになった同級生たちと仲を深めるためのお茶会を開いたり。 その発想力の豊かさには、大人でも感心させられるものがあります。 また、そんな彼らの楽しげな笑顔の裏には、この未曽有の状況下にあっても今までの日常を何とか維持したいと願う、彼らなりの「切なる思い」を感じ取ることもできるかもしれません。 そのためのツールとして、新しいもの好きの彼らが目を付けたのがZoomだったというわけです。 スマホで楽しむことは、社会貢献の一面も Z世代はSNSなどを通じて日頃からさまざまな情報に接しています。いわゆる社会問題もそのひとつ。社会問題への関心・意識が比較的高い世代とも言われるゆえんです。 冒頭で指摘したように、「#StayHome」を実践するのは立派な社会貢献でもあるはず。 オンラインを通じて新たなワクワクを作り出し、友達と楽しくおしゃべりした上で社会貢献までしていると、そう意識しながら過ごしている若者は実際多くはないとは思いますが、わずかであれ間接的であれ社会に貢献できているということは、Z世代でなくても存外心地の良いものなのではないでしょうか。
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