外出自粛でラーメン店まで「テイクアウト」参入……でも、麺はのびないの?

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、「緊急事態宣言」に基づき外出自粛や飲食店の短縮営業が求められる2020年4月、東京。売り上げが落ち込む飲食店が次々に「テイクアウト」を始めるなかで、ついにラーメン店各店も参入を始めました。


持ち帰りに最も向かなさそうなラーメンですが

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府による「緊急事態宣言」が東京に発令されたのは2020年4月7日(火)。それに伴う東京都の求めにより、都内の飲食店は閉店時間を20時に前倒しして営業を続けています。

 都民の外出自粛も相まって、当然、各店の売り上げは大打撃。賃料や人件費などの固定費が重くのしかかり、やむを得ず閉業を決めたお店もすでに少なくありません。営業を続けている店の間では、少しでも売り上げを上積みしようとお持ち帰り(テイクアウト)サービスをスタートさせる動きが広がっています。

 イタリアンレストランのピザや、中華料理店のチャーハン、ギョーザ、定食屋さんのお弁当。多種多様なテイクアウトメニューが顔をそろえるなか、「西荻窪のラーメン店がテイクアウトを始めている」という情報を耳にし、少々面食らいました。

愛好家の多いラーメン。営業自粛によって食べられなくなるのは寂しい(画像:写真AC)



 ラーメンのような熱々の汁にゆでたての麺が入っている料理は、ほかのどんな料理にも増して出来たてが一番おいしいというイメージ。

 というよりむしろ、調理後、時間がたてばたつほどに本来のおいしさがどんどん失われていってしまうのではないだろうか、その店自慢の麺はテイクアウトによってのびてしまわないのだろうかーー。

 とはいえ試しにツイッターで「ラーメン テイクアウト」と検索すると、東京都内はもちろん全国さまざまなお店の取り組みが多数ヒットしました。テイクアウトに乗り出すラーメン店は、この新型コロナ禍にどんどん増えているのは間違いないよう。

 そこにはどのような工夫があるのか、そして苦労があるのか、都内のラーメン店にお邪魔して話を聞いてみることにしました。

短縮営業、「〆の一杯」ができない現状

 まず、情報で聞いたJR西荻窪駅にほど近い「麺や そめいよしの」(杉並区西荻南)へ。

 駅前商店街の中ほどにある店の入り口には、赤いペンで大きく「TAKE OUT」と書かれた看板が。「家で そめいよしの のラーメンが食べられます!!!」といううたい文句に引き寄せられるように、ちょうど男性がひとり店内へと入っていくところでした。

「家で食べられます!」と、テイクアウトをアピールする店頭の看板(2020年4月18日、遠藤綾乃撮影)



神田店(千代田区神田)と合わせて2店舗を経営する店長の大津さんによると、テイクアウトサービスを始めたのは東京に「緊急事態宣言」が発令される直前の4月初旬。

「3月中旬から目に見えて売り上げが落ちていきました。それ以前と比べると、3月はだいたい40%減、4月に入って以降は50%減といった感じです。ラーメンですから飲み会の後に『〆(しめ)の一杯』として立ち寄ってくれるお客さんが多かったのですが、そもそも飲み屋さんが20時で閉店してしまうし、ラーメン店も同じく20時に閉めてしまうので、(飲み会から)流れてくるお客さんを今は全て失ってしまっているような状況です」

 しかしながら、客のニーズ自体が無くなったわけではありません。

「(20時以降に)片づけをしているとき、ヒョイと店内をのぞいて『あれ、今日はやってないの?』と声を掛けてくれるお客さんもいるし、『3密(密閉・密集・密接)』が怖くて入店しづらいけど本当はお宅のラーメンを食べたい、と言ってくれる常連さんもいます。そういう人に向けて少しでもラーメンを売れたら――とそう思って、3月下旬から慌てて準備して、テイクアウトを始めました」

麺とスープ、具材を小分けにして提供

 同店の場合、ゆでる前の生麺と「温めるだけ」の状態のスープ、それからネギやチャーシューをそれぞれ小分けに包んだ2食入りを、1000円(税込み)で販売しています。なるほど、これなら持ち帰った後に麺がのびのびになってしまうこともありません。

 普段は1杯850円ですが、テイクアウトは「できる限り原価に近づけて」(大津さん)、お得さを感じてもらえるように腐心したといいます。

麺、スープ、具材を小分けにしたテイクアウトのラーメン2食入り(2020年4月18日、遠藤綾乃撮影)



「今はとにかく新型コロナの収束が最重要ですし、それに向けた協力はもちろん惜しみません。それでもお店を存続させていくために何とか知恵を絞っているというのが現状です。待ってくれているお客さんたちにも応えたいですし」と大津さん。

 西荻窪店ですれ違った男性客も、テイクアウト麺入りの袋を大切そうに提げて家路を急いでいくようでした。

テイクアウトのスタイルはさまざま

 前述の通り、ツイッターでも数多くの店の取り組みが投稿されているラーメンのテイクアウト。ただ持ち帰りの方法は、お店によってさまざまのようです。

 例えば「そめいよしの」のように食材を個包装にして提供する「吉祥寺 武蔵家」(武蔵野市吉祥寺)や、混ぜそばなどの汁無しメニューをプラスチック製の丼容器に入れる「大山家 昭島店」(昭島市昭和町)。

 ほかにも、スープとゆで麺を別々の容器に入れて販売する店や、縁日の屋台のように出来たてラーメンをプラスチック丼容器で提供する店など、実に多様です。

 目に留まるのは、それぞれの店の投稿やラーメン愛好家による報告ツイートに対して、どれも2~3ケタの「いいね!」が付いていること。あらためてラーメンというジャンルの人気の根強さ、そしてこの状況でひいきのラーメン店を何とか支えたいと願うファンたちの熱意を垣間見る思いです。

 そんなタイムラインをさかのぼっていくと、ひときわ目を引く投稿を発見しました。

持ち帰り用に鍋の持参を呼び掛けるラーメン店のツイート画面(画像:ULM編集部)

「お持ち帰り希望の方は(丼の数がギリギリなので)鍋をご持参ください。m(_ _)m」

「持参した鍋」に出来たてを入れてくれる

 なんと。自宅から鍋を持って行けば、出来たてのラーメンをそれに入れて提供してくれるというスタイルのラーメン店もあるようです。

 なんだか隣のお宅に夕飯のおかずをおすそ分けしてもらいに行く昭和時代の風景を思い出すようで、郷愁をそそられます。こんな時にしか味わえないお鍋でのラーメン・テイクアウト。この際、試してみたくはなりませんか。

 お店は、東横線・学芸大学駅東口から徒歩1分の「モンゴメリー」(目黒区鷹番)。先ほどの西荻窪から電車を乗り継いで学大前駅へ向かうと、小さな飲食店が並ぶ駅前の一角に懐かしい雰囲気の明朝体フォントで店名を掲げたモンゴメリーを見つけました。

 店内は数脚が並ぶカウンター席のみ。店長の福井さんに直径20cmの雪平鍋を渡して看板メニューのキャベツ入りラーメンを注文すると、5分くらいで熱々を出してくれました。

持参した鍋に出来たてラーメンを入れてくれるテイクアウトのスタイル(2020年4月18日、遠藤綾乃撮影)



 きみどり色が鮮やかな春キャベツと、とろみの残る半熟たまご、やわらかそうなチャーシューと、コシのある麺。それが取っ手付きの雪平鍋に入っていると、いっそう親しげなムードをかもし出すから不思議です。

「お持ち帰りラーメン」取材なので自宅まで持って帰ろうと考えていましたが、我慢しきれずその場で結局いただくことにしてしまいました。……ああ、おいしい。

 実際にテイクアウトをする場合には、持って行く鍋はフタが付いているものがよさそうです。そして出来たてですから、麺がのびてしまわないうちに持って帰れる距離に家がある住民向けかもしれません。

「緊急事態宣言」が発令される10日も前から「鍋持参」のお持ち帰りを呼び掛けるのは、地域に根強いファンがいる証左でもあるのでしょう。

この苦境を何とか乗り越えるために

 同店も、閉店時間は早めているものの店内でのイートインも継続中です。

 お客さんのニーズに合わせて、ゆでる前の状態で提供することもあるそうで「お持ち帰りの場合はなるべく早く召し上がってくださいね」と福井さん。

懐かしい雰囲気を放つ、モンゴメリーの店構え(2020年4月18日、遠藤綾乃撮影)



 スープの最後の1滴までおいしくいただいているうちに、ここを行きつけにしているらしい男性客が3人、入れ代わり立ち代わりに来店。ラーメンを注文し、店内でズズズッと勢いよく平らげて行きました。

※ ※ ※

 これほどまでに愛される日本のラーメン文化を未曽有の新型コロナ禍で失ってしまわないために、今いったい何ができるのか。ラーメンを取り巻くさまざまな立場の人が模索を続けています。

「プロの為のラーメン学校」を開校し、これまで約800人のラーメン店経営者を輩出した兵藤沢人さんは、次のように話します。

「多くのラーメン店がテイクアウト化を試みるなかで、自宅でもできるだけおいしく食べてもらえる作り方を私たちも考案している最中です。いろいろなスタイルで試作して見てはいるのですが、今のところ、スープをゼラチン状に固めた状態で販売して自宅の電子レンジで温めてもらう、という形が一番良いかなと考えています」

 それもこれも、この状況下で廃業に追い込まれるラーメン店を1軒でも減らし、暗いトンネルの先に明かりをともしたい、という思いから。

「消費者の皆さんも、ずっと自宅にいて3食とも自炊ではきっと疲れてしまうでしょう。外食する気分にはなれなくても、家でおいしいラーメンを食べてもらえたら。落ち込んだ誰かを少しでも励ます役割をラーメンに担わせてもらいたいという思いは、このコロナ禍の今だって変わりありません」

テイクアウトへの参入には注意点も

 ちなみに、これからテイクアウトを始める飲食店は注意しなければならないこともあるようです。

 東京23区内の保健所に問い合わせをしたところ、イートインではなく持ち帰り用として販売する場合、例えばラーメン店の場合は普段の営業許可とは別に「めん類製造業」などの許可も必要になるとのこと。

 外出自粛の機運が高まって以降、同区保健所にはラーメン店をはじめ飲食店の問い合わせも相次いでいるといいます。

「新型コロナの感染拡大を機に、飲食店が次々にテイクアウトを始めているのは承知しています。その全てのお店が適切な申請をしているか、私たちもきちんとは把握しきれていません。何せ今は、新型コロナ感染患者の対応を最優先で行っていますので」と担当の女性。

 街の飲食店は未曽有の危機に見舞われていますが、それでも粘り強くお店を守っていきたいと工夫を凝らす彼らを、私たち消費者は何らかの形で応援していきたいものです。


【画像】短縮営業か、自主休業か――飲食店が迫られる苦渋の決断

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