下町の人たちは温かくて、たくましくて、おせっかいで、ちょっぴり変なのかもしれないことに気づいた私

銭湯と大衆食堂飲みをこよなく愛する、エッセイスト・イラストレーターのおのみささんが描く下町イラストエッセイです。

銭湯はさっぱりわからないことだらけ

 私は東京・下町の風情ある銭湯が好きで、月に3~4回程通っている、銭湯初心者です。家の風呂もいいけれど、銭湯の広い湯船につかると疲れもとれて本当に気持ちが良い。でも最近、それだけではないおもしろさがあるなぁと思ってきています。

 ある日のこと。いつものように身体を洗って湯船につかり、戻ってきたら、置いておいたはずの洗面器が無い。不思議に思って別の洗面器を取りに行って使っていると、ひとつ離れた場所にいたおばちゃんが「私、銭湯初めてでわからなくて、あなたの洗面器を勝手に使っちゃったみたい。ごめんなさいね」と言うのです。

 洗面器は私物ではないから別にかまわないのですが、おばちゃんのすぐ横には、みんなが使う用の洗面器が重なって積み上げられています。そこから使えばいいのに、

・なぜわざわざ私が使っていたものを使ったのか?
・すぐ隣にあるのに気付かなかったのか?
・私(51歳)よりも年上に見えるけど、今まで温泉などの大衆浴場に行ったことがないのか?

と謎が多すぎて、もやもやとしてしまいました。

 世の中にはいろんな人がいるもんだと思い見渡すと、洗面器にお湯(水?)をはり、シャンプー、リンス、ボディーソープなどをプカプカ浮かせて使っているおばちゃんがいました。

・なぜ浮かせているのか?
・ぬるぬる汚れがいやだからなのか?

理由がさっぱりわかりません。

 聞いた話ですが、男湯ではひげそりやひげそりクリーム、髪の毛が増えそうなシャンプーなど、やたら荷物が多いおっちゃんがいて、洗面器を3つも使い、その荷物を入れている人がいるとか。

おのさんの体験を描いたイラスト(おのみささん制作)



 また、洗い場で立ちあがり、無理な体勢でシャワーを使ったと思ったら、そのあとは石けんなどを置く所に座って髪を流す人がいたとか(別の場所には立って使えるシャワーも設置してあるのに……)。どちらのおっちゃんも混んでいるときなどは、なかなかの迷惑っぷりですね。

下町の人はみんなおせっかい

 女湯の脱衣所ではいつも楽しそうな笑い声が聞こえてきます。この日は誰かがゆずを持ってきて配ったらしく、おばちゃんたちの「ゆず談義」がはじまっていました。

「レモンと同じように使ったらいいのよ。ジャムにしてパンにぬったら?」
「私はパンを食べないから、ハチミツに漬けたやつをお湯で割って飲んでるわ」
「チューハイに入れて飲んだらいいわよ」
「こないだ白菜の漬物に入れたのに、ちっともゆずの香りがしなかったわ~」
「量が少なかったんじゃないの? 私なんて昨日、煮物作ったらさ」
「あんた煮物なんか作るの、マメねぇ」
「いやうちはまだアレ(たぶん旦那さん)が生きてるからさ、しょうがないのよ」
「もう私なんてボケちゃってるから、こないだ煮物を作ろうとしたらみりんとお酢を間違えて入れちゃったわよ。酸っぱかったわ~」
「私はこないだ油としょうゆを間違えたわよ。同じところに置いていて……」

など、思わず笑ってしまうような会話が延々と続きます。でもこの間は少し違いました。

おのさんが聞いた話を描いたイラスト(おのみささん制作)



 風呂上がりで裸のまま、疲れた顔で椅子にぐったりと座っているのお年寄りがいて、皆が心配して声をかけています。聞いていると、どうも彼女は最近食欲がないらしく、食事をしないまま風呂にはいり、のぼせてしまったようです。

「とにかくパンツだけはいて、ここ(長椅子)で寝てな!」と言う人や、「頭冷やした方がいいわよ!」と言いながら自分のタオルを水でぬらして彼女の頭にのせる人など、やいのやいのと言いながら、みんなが心配しています。

 あまりの勢いに呆気(あっけ)にとられて見とれていたら、おばちゃんのひとりが私を見て「下町の人間はみんなおせっかいなのよ~」と言って笑いました。ああ、なんだかこういうのって良いなぁと思います。

風呂上がりのビールの味は格別

 余談なのですが、東京の銭湯入浴料金は1回470円です。せこい私はできるだけ安価で銭湯に行こうと思い、出先で見つけた金券ショップに寄ってみました。

 入浴券の値段を聞いてみると1枚440円というので「安い!」と思い、大喜びで10枚購入。「良い買い物をしたなぁ。なんならもっと買っても良かったかも」と、ほくほくしながら電車に乗っていたら、ふと思い出したのです。普通に銭湯で入浴券を購入したら10枚つづりで4400円だということを……!!!

 銭湯に行き、広い湯船で足をのばして入る風呂は本当に気持ちがよく、疲れもとれます。でもそれだけではなく、銭湯に来ている人たちを見て、話を聞いていると、人間って本当におもしろいなぁとつくづく感じて、心の疲れまでとれてしまいます。

 470円(または440円!)で身体や心の疲れがとれるのだから、安いものです。もちろん、その後に飲むビールの味も、普段よりもずっとおいしいので、かなりお得なのではないかと思っております。

【画像】レトロな銭湯アイテムの数々! 昭和にタイムスリップしてみる?

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