第2次ブーム到来 日本の「だし」に今、何が起きているのか?

日本料理で最も基本的かつ重要な材料のひとつである出汁(だし)。そんな出汁が現在、大きなブームとなっています。その背景についてホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の有木真理さんが解説します。


体に優しい印象がある

 日本では昔から出汁(だし)が料理に使われており、欠かせない存在となっています。そんな出汁が現在、日本国内ひいては世界中で注目を集めています。今回はそのブームについて解説するとともに、出汁の今後の可能性を探っていきます。

香り漂う出汁のイメージ(画像:写真AC)



 出汁と言えば昆布、かつお節、いりこ……など、ひとつの素材を使ったものから合わせ出汁まで、バラエティーに富んだ出汁が数多く存在しており、和食や日本料理を語る上で欠かせません。

 もちろん、世界中に出汁は存在します。海外は動物性の肉や骨を使います。脂肪分を含んだ出汁をそのまま料理に使うことが多いのですが、日本は乾燥させた素材を煮だして、脂肪分のほぼ入っていない出汁を楽しむのが定番となっています。

 そのため体に優しい印象があり、体調が悪いときに出汁の効いた汁をすすると、日本人なら誰でもほっとするのではないでしょうか。また「出汁が効いている」という言葉は、和食にとって最高の褒め言葉でもあります。

 飛鳥時代からとも、江戸時代からとも言われる日本の出汁文化。現在、この出汁に注目が集まっているのはいったいなぜでしょうか。

第2次出汁ブーム到来?

 最近は、出汁にフォーカスした料理や専門店まで存在しています。ブームの始まりは「茅乃舎(かやのや)だし」が販売された2005(平成17)年ごろだと考えられます。

 久原本家グループ(福岡県久山町)が展開する出汁専門店の「茅乃舎」は、かつおや昆布、野菜など、自宅で簡単にバラエティー豊かな出汁が楽しめるパックなどを販売。店舗でもその出汁を楽しむことができます。

2018年に発売された、レシピ動画サービス「クラシル」と久原本家のコラボ商品「茅乃舎だし はじめてセット」(画像:久原本家グループ,dely)



 そのほかにも、にんべん(中央区日本橋室町)が展開する「日本橋だし場」は出汁に注目した料理を出し、店舗は行列をなしています。このブームを筆者(有木真理。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員)は「第1次出汁ブーム」と名付けています。

ブームの背景にある三つの理由

 では外食において、出汁がメニューそのものではなく、味の「ベース」として注目を集め、消費者が行列を作るほどになった背景はどこにあるのでしょうか。筆者は三つあると考えています。

2015年8月に丸ビル(千代田区丸の内)地下1階にオープンした「日本橋だし場 丸ビル店」(画像:にんべん)

 ひとつ目は出汁が日本人にとってなじみ深く、健康食として愛されていることです。脂肪分や塩分などが比較的抑えられているものの、うまみ成分は多く含まれているため、出汁を効かせることで、薄味でも十分に料理を楽しむことができます。健康に気を遣っている人でも、塩分やカロリーなどを抑えやすいのです。

 そしてふたつ目は、世界から注目を集めたことです。2013年に「和食」は世界無形遺産に選ばれました。日本人の健康的でバランスのとれた食文化が注目を集めたのはもちろん、出汁の持つ「うまみ成分」が重要な役割を担ったと考えられます。

「うまみ」は基本の味でなる、塩味、苦み、甘味、酸味と並び、五つめの味覚として扱われています。このうまみは海外でも「UMAMI」として注目を集め、昨今は「UMAMI BURGER」なる和風ハンバーガーが逆輸入され、話題を集めました。

 そして三つ目は、「付加価値がつけやすい」ということ。これが次に語る、現在の第2次ブームにもつながる要素と言えるのです。

昨今のトレンドは?

 ここからは、第2次ブームについて記述していきます。

 先ほど出汁ブームが起こった背景の三つ目として「付加価値がつけやすい」と書きましたが、以下ふたつのことが言えます。

 まずは、出汁そのもののバラエティーが豊かであることです。昔からある、カツオ、昆布、いりこなどに加え、同じ節でも、サバ節などカツオ以外の魚を使ったもの、いりこのような小魚も、あごだしなどご当地だしも人気となっています。

 また、野菜だしなど動物性を一切使っていないものや、塩分控えめなどさまざまな食生活、ライフスタイルに合わせた出汁も登場しているのです。

 ふたつ目は、この出汁がさまざまな料理に活用できることに注目してみましょう。

ホットペッパーグルメ外食総研が行った「出汁グルメ」に関するアンケート。設問内容は「あなたが食べたい『出汁グルメ』はどれですか?」(画像:リクルートライフスタイル)



 ホットペッパーグルメ外食総研で「食べたい“出汁グルメ”」についてアンケートを採ったところ、1位は「出汁炊き込みご飯」、2位は「出汁茶漬け」、3位は「出汁茶わん蒸し」など定番の和食メニューが上位を占めましたが、それ以降は4位「出汁カレー」、5位「出汁巻き卵ドッグ」と大変興味深い結果が出たのです。

出汁の違いを楽しむ「出汁カレー」の登場

 中でも注目したいのは出汁カレー。カレーの消費量はラーメンを超え、正真正銘の「国民食」といっても過言ではありません。

 現在、出汁カレーはさまざまな開発が行われていますが、その中でも注目したいのは、人気ブロガー・カレーマンさんがプロデュースする出汁カレーです。

グルメブロガー「カレーマン」さんがプロデュースしたオリジナルカレー「だしカレー」(画像:ユリカノ)

 ラーメンと言えば、豚骨、魚介、それを掛け合わせたダブルスープなど、スープの素となる出汁について語られることが多いですが、カレーは出汁のバラエティーが多くありません。

 カレーマンさんは日本人がカレーを作るなら、日本の食文化を忘れてはいけないと出汁に注目したカレーを展開しています。サバだし、煮干しだしを使ったカレーを販売、時にはポップアップイベントで、くえなど高級食材を使った出汁を使ったカレーを展開し、スパイスだけでなく、出汁の違いを楽しむ提案をしているのです。

食トレンドと掛け合わせでさらなる伸びしろも

 このような面白い商品開発が行われ注目を集めている出汁は、現在の食トレンドと掛け合わせて展開していくことで、可能性はまだまだ広がります。

 例えば、出汁を引いて20分しか楽しめない賞味期限の短い料理。出汁にこだわった料理と和酒(日本酒や焼酎など)のペアリングディナーなどなど。

 そのほかにも今後は、どの出汁がどの料理に合うといったプロの目線での提案や、出汁の引き方などを学ぶワークショップとともに楽しむ外食のエンターテインメント性、ストーリー性など、さらなる付加価値をつけていくことで出汁を使った料理に注目が集まるのではないでしょうか。

 かつお節削り器など、出汁を作るためのプロ用グッズなどの販売も一般消費者向けに増えていくかもしれません。

スタイリッシュなかつお節削り器のイメージ(画像:貝印)



 出汁の「UMAMI」は日本が世界に誇る味覚です。 昨今の新型コロナ感染拡大の影響による厳しい状況が落ち着いて、出汁に、ひいては和食にさらなる注目が集まることに期待しています。


【アンケート調査】人気の「味のベース」 かつおだし、昆布だし……1位は?

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