東京で働いて20年。ベンチャー役員の僕が「天使」を名乗り始めたワケ
2019年7月10日
ライフ働き方改革により、複数の肩書きを持つ人が増えています。「分かりやすい肩書きを持たない人」の働き方の実態はどのようなものでしょうか。「エンジェル労働家」として、複数のベンチャー企業の役員やアドバイザーを務める須田仁之さんが実体験をもとに語ります。
「お仕事は何をされているんですか?」
僕が東京で働いて20年が経ちました。
社会人になると「お仕事は何をされているんですか?」と聞かれることがヤケに多いです。一流企業で働いていたり、医者や弁護士だったりするとその説明コストは楽ですが、そうでない僕はいつもこの都会流の「ビジネス挨拶」に辟易していました。

20代の頃の勤め先は、ソフトバンクの子会社。当時は「ソフトバンク」自体の知名度もまったくないので「ソフトの銀行ですか? 怪しそうですね」と勘違いされそうだったし、「子会社」ってのも相当カッコ悪いと思っていました。
30代になると知人の小さなベンチャー企業を手伝うことになり、一応「取締役」という肩書きでした。「えっと、◯◯っていうITベンチャー企業で役員をやっておりまして」というビジネス挨拶をすると、100%キョトン顔をされたものです。
都会で「ITベンチャー企業で役員やってます」なんていうのは、90%怪しいものであり、なかなか辛いものがありました(当時の私個人の見解です)。
「分かりやすい肩書き」がない人には面倒な労働環境
いつかはこの「都会のビジネス挨拶」の呪縛から逃れなくてはと苦心していましたが、40代に入ってサラリーマンからドロップアウトし、フリーランス化すると、事態はさらに悪化してしまったのです。
私:今は複数の企業の経営のお手伝いをしていまして……
相手:経営コンサルタントですか?
私:あ、コンサルとはちょっと違うんですけど……
相手:投資家ですか?
私:いや……(そんなお金持ってる風ではない)
頼まれて企業の社外役員をやると、コンサルタントに勘違いされる。頼まれて株主になっていたりすると、投資家に勘違いされる。
都会で、フリーランスで経営コンサルタントを名乗っている人なんて、90%怪しいものであり(当時の私の想像です)、「投資家」を名乗っている人も「以下同文」な気がしていました。投資家となると「じゃあ、お前一体いくらカネ持ってるんじゃい」という下世話な話にもなります。
ベンチャーやスタートアップなど、一般的に「リスクの高い」と思われる投資なんて、お金が余ってないとできないものです。そういう観点で、個人的にまったくお金の余剰は感じてないから投資家には該当しません。それなのに「僕にも投資してくださいよ」という無心にも似たメッセージを送ってくる人もいました。
ああ、都会はなんて面倒くさい労働環境なのだろう……。
分かりやすい肩書に就職できなかった自分の責任ではあるけれど、僕のことを笑っていられないような時代が、ここ東京の労働環境では起きつつあるような気がしています。
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