自然災害から子どもを守るために、親のあなたがまずしなければいけないこと
近年増加する自然災害。そんなとき、小さな子どもをもつ世帯はどのようにしたら良いのでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが現状に警鐘を鳴らします。東京の各学校では防災教育に力を入れている 日本では近年、台風などの自然災害が毎年のように発生しています。千葉県を襲った台風15号や広範囲で甚大な被害をもたらした19号は、台風直撃が比較的少ない関東甲信越や東北地方に大きな爪痕を残しました。 東京でも、神奈川県との境目を流れる多摩川と支流が一部氾濫し、メディアでも大きく取り上げられたのも記憶している人も多いことでしょう。普段はほとんど水が流れていない川が瞬く間に水位が上がり、「危ないと思ったときはもう手遅れ」ということを感じました。 日本の台風シーズンは冬の訪れとともに終了しますが、地震は季節や時間関係なく発生します。また、旅行先で遭うとも限りません。今回は、年々増えている自然災害に対する防災教育の取り組みをご紹介していきます。 防災のイメージ(画像:写真AC) 学校での防災訓練と言えば、保護者の多くは火事や地震を想定した集団訓練を思い出すことでしょう。しかし、現在の東京の小学校はより実践的かつ緊急時に正しく避難する方法を学んでいます。保護者への引き渡し訓練、不審者が来たときの訓練、住んでいる地域で過去に発生した自然災害を学び、家庭で話し合うことを促しています。 東京では、関東大震災と同規模の直下型地震を想定した防災訓練を実施しています。尾久西小学校(荒川区西尾久)では、地震を想定した避難訓練を毎月行っています。 東京都が公表している、直下型地震で火災が多いと予想されている地のは古い木造住宅の密集地域です。荒川区ではそういった住宅地が多く、火災での被害拡大が不安視されています。 住んでいる自治体の弱点を理解し、緊急時に瞬時に行動に移せるよう、子どもたちは学んでいるのです。このように、学校側は頻発する自然災害に備えて緊張感を維持させようとしているのがわかります。 災害を「あり得ない」と思い込まない災害を「あり得ない」と思い込まない 学校では、浸水被害や土砂災害といった過去の自然災害が記載されたハザードマップを配布したり、教材として利用したりすることがあります。以前は100年に1度の規模の災害を想定して作成されていましたが、各自治体は平成27年度の法律改正後、1000年に1度の大災害を想定したハザートマップを作っています。 地図を見ると浸水域が尋常ではなく、まるで物語の世界かと思う人もいるはずです。しかし、2019年の台風による広範囲にわたる被害や東日本大震災の惨劇を考えれば、「あり得ない」と思い込むことは危険です。 防災のイメージ(画像:写真AC) 子どもたちは、小学校で「頻繁には起きないないが、災害は必ず起きる」と習っています。台風19号では現実に、通常時は水がほとんど流れていない用水路が氾濫寸前となったり、道路のあちこちで冠水が発生したりしました。川沿いに住んでいたら辺り一面が水没し、避難しようにも身動きの取れないこともありました。 ハザードマップは、その街に住んでいる人でも気がつかない高低差も踏まえて作成されています。今回の台風では「こんなことがあるわけない」「わが家は大丈夫」と過信してはいけないことを学んだ人も多いことでしょう。過去の被害や現在の土地の高低差を考慮して作り上げたハザートマップを軽視しないことが、家族の安全を守る第一歩といえます。 公共の施設を利用し、防災意識を更に高めよう 子どもがいくら学校で防災を学んでも、両親が関心を寄せないと防災意識を高めることはできません。そのため、都内の無料施設や公共施設を利用して防災教育を行うことをお勧めします。 防災のイメージ(画像:写真AC) 江東区にある防災体験学習施設「そなエリア東京」(江東区有明)は地震災害を学べる施設です。地震発生後の街並みなどが再現されているため、大人もリアルさを体験できます。23区以外では、東京消防庁の「立川防災館」(立川市泉町)で直下型地震に関して学べます。映像シアターを見ると、大地震発生後の東京の様子がダイレクトに伝わってきます。 将来、家庭から独立した子どもが自然災害を前に正しい行動ができるよう、防災に関する話を定期的に家庭の場ですることが望まれます。また旅行をする際には、国土交通省のハザートマップを確認することも大切です。 親の防災意識は、子どもが大人になったときに役立つ知識。「起こるわけがない」ではなく、災害は「起こるもの」を大前提に、子どもの模範になることが現在求められているのです。
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