コロナ禍の逆転現象 中高年ほど「なじみの店」が減り、なぜか若者は増えていた!

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コロナ禍の逆転現象 中高年ほど「なじみの店」が減り、なぜか若者は増えていた!

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稲垣昌宏

ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員

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新型コロナ禍では飲酒を伴う外食などに自粛要請が出されました。この間、中高年ほど自分の「なじみの飲食店」が減り、若年層ほど逆に増えていたことが分かりました。一体なぜなのでしょうか。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の稲垣昌宏さんが独自調査を基に解説します。

職場周辺など「地元以外」での外食が減少

 新型コロナ禍ではテレワークが推奨され、それによって外食を行う“場所”にも変化が起こっています。

 リクルート(千代田区丸の内)のホットペッパーグルメ外食総研が毎月行っている「外食市場調査」2020年度まとめでは、夕方以降の外食の場所について「地元での外食」(※)が前年度から3ポイント増加の21.9%に。

 その分、職場近くなど「地元以外」での外食が減っています。

(※)外食した店の最寄駅を一定の条件でくくり「タウン」を設定したうえで、タウンのコア駅が所在する市区町村と同じ市区町村に住む人による外食を「地元での外食」と定義した。

コロナ禍で「なじみの店」が減った人、増えた人、その違いとは?(画像:写真AC)



 実際に筆者(稲垣昌宏。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員)も会社からテレワークを推奨され、月の大半は自宅で仕事をしています。

 当社は東京駅の八重洲側にあり、先日出勤した際には久しぶりに近隣の地下街へランチに出たのですが、コロナ禍でのその変貌ぶりには改めて驚かされました。

 東京駅近隣の地下街といえば言わずもがなの一等地です。おそらく相応の家賃を払っても見合う売り上げが期待できる場所だと思うのですが、緊急事態宣言下での休業や空きテナントが目立ち、閑散としていたのです。

飲食店「一等地」の概念も買えたコロナ禍

 近隣は大手企業が数多いエリアなので、他のエリア以上にテレワークが進んでいるためかもしれませんが、コロナ禍の影響が飲食店はもちろん、その場所を貸している不動産業にも影響が大きいことが感じられました。

 人流や人々の行動変容が「一等地」の概念をも変えつつあるということになります。

東京都心「一等地」の飲食店街もコロナ過では人出がまばら(画像:写真AC)



 そのようなこともあり、コロナ禍でリピート利用している「なじみの飲食店」についての調査を行いました。仮説としては、「なじみの飲食店」の場所も、会社の近くなどから居住地近くに変化しているのではないかというものです。

「なじみの店」が減った人は37.6%

 まずは、コロナ禍以前に「なじみの飲食店」(外食での利用でなじみがあった店)があったかどうかですが、あったと回答した人は約7割。

 その後のコロナ禍で自身にとっての「なじみの店」の数が増えた人は2.9%、減った人は37.6%と、減った人の方が圧倒的に多い結果となりました。

コロナ禍の前(2020年3月以前)と比べて、「なじみの外食店」の数は変化したか(画像:リクルート)

 性年代別で見てみましょう。

 60代男性は、コロナ禍の前も現在も「なじみの店」が“ない”人は23.3%と少なく、飲食店にとっては貢献度の高い世代です。しかしコロナ禍で43.2%という高い割合の人が「なじみの店」の数が減ったと回答しました。

「なじみの店」がもともとある割合の高い中高年世代でその数が減っている人が多い傾向にあり、これは、コロナ禍で若い世代よりも中高年で外食実施率が下がった(リクルート「外食市場調査」より)こととも関連がありそうです。

「外出・外食控え」が最大の要因

 コロナ禍以降に「なじみの店」が減った人の理由を聞き、その理由をコロナ禍に関連するものと関連しないものに大別すると、圧倒的にコロナ禍に関する理由が多く挙げられました。

 最も割合が高かった理由は「外出や外食自体を控えるようにした」で41.6%。次いで「店が営業自粛や閉店などをした」が22.1%。

 さらに「繁華街などの人混みの多いエリアに立地していた」と「営業時間の規制により、自分の利用時間と合わなくなった」が、ともに16.5%となっています。

 30~60代女性では特に「外出や外食自体を控えるようにした」との回答割合が高く、男性よりも女性において「外出・外食控え」が「なじみの店」でなくなることに大きな影響を与えた様子がうかがえます。

若年層ほどコロナ禍で「新たな店」を開拓

 一方でコロナ禍以降、新たな「なじみの店」ができた人はどのくらいいるのでしょうか。

 多くの人にとって「なじみの店」の数が減ったコロナ禍ですが、新たな「なじみの店」ができた人は、コロナ禍前後いずれかに「なじみの店」があった / ある人に限って集計すると(全体9564人中6621人)、57.5%に上ります。

コロナ禍以降(2020年4月以降)新たにできた「なじみの外食店」の有無(画像:リクルート)



 性年代別では、30代男性で68.0%が、また20代女性の66.0%、が新たな「なじみの店」があると回答。それぞれ、男女の年代別で最も割合が高い結果となりました。

 おおむね年代が若いほど新たな「なじみの店」がある割合が高く、コロナ禍以前は中高年に「なじみの店」のある人が多かったこととは逆の傾向が見て取れます。

なじみ客離れ、居酒屋や焼肉店で顕著

 新たにできた「なじみの店」のうち、最も高い頻度で利用している店について立地を聞いたところ、「自宅や最寄り駅の周辺」が74.8%で圧倒的な1位でした。

 性年代別では、40代女性で「自宅や最寄り駅の周辺」が82.2%。一方、「通勤・通学場所の周辺」は20代男性で16.8%。それぞれ、生年代別で最も高い割合です。

 コロナ禍で不要不急の外出自粛が要請され、さらに在宅勤務なども影響してか、「なじみの店」の場所も自宅近くにできた人が多いようです。 

 最後に「なじみの店」の業態を聞きました。

 コロナ禍の前後で比較すると、「なじみの店」数が減った人の割合の高さと連動して、ほとんどの業態で回答割合が減少しています。

 具体的な業態ごとの減少幅に注目すると「居酒屋」でコロナ禍前後差が15.5ポイント減と最も大きく、次いで「焼肉、ステーキ、ハンバーグなどの専業店」が13.2ポイント減、「中華料理店(ラーメン専門店は除く)」が12.3ポイント減で、減少幅が大きくなっています。

コロナ禍で居酒屋や焼肉店などは、なじみ客離れが目立った(画像:写真AC)



 コロナ禍前のスコアが比較的高い業態の中では、「ファミリーレストラン、回転すしなど」(10.3ポイント減)や「ファストフード」(2.4ポイント減)は比較的なじみの客離れを相対的に免れているようです。

 飲酒主体の業態に関しては、コロナ禍以前のスコアが比較的低い業態を含めて減少割合がほかの業態よりも大きくなっています。

 このことは、コロナ禍で営業時間の短縮要請や酒類の提供自粛要請があったこととも関係がありそうです。

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