「在宅勤務は楽チンだったのに~」メーク嫌い女子が抱える自粛明けの憂鬱と今後の展望
外出も化粧もしなかった春 2020年春、新型コロナウイルス感染拡大による「緊急事態宣言」や外出自粛に伴い、化粧品の売上額が一気に落ち込んだというニュースは、世の女性たちに 「あーやっぱりかあ」 という感慨を持って受け止められました。 外出自粛の期間を過ごして、「自分はメークが苦手だった」と気づいた女性も少なからずいるようだ(画像:写真AC) 世間に本格的な自粛ムードが広まったのは、政府が全国の学校へ臨時休校を要請した2020年2月末頃から。外出の機会が減るのと合わせてメーク回数も減ることは、この間多くの女性が身をもって体感してきたことでしょう。 メーク品の売上高が大幅減 経済産業省がまとめる販売時点情報管理(POS)データによると、2020年4月時点で、東京など関東のドラッグストアにおける化粧品の売上額は、前年同月比2割超の落ち込みを見せています。 中でも口紅やファンデーションといったメーキャップ化粧品の減少は顕著で、前年同月比で実に33.8%減(こちらは全国の数値)。 背景には「外出の機会が減ったことでメークをする機会も減った」ことのほかに「外出時に必ず着用するマスクに口紅やファンデーションが付くのを嫌う人が多い」などの理由もあると指摘されています。 関東のドラッグストアにおける化粧品全体の売り上げ推移。2020年4月時点で、前年同月比20.6%の落ち込み(画像:経済産業省「METI POS小売販売額指標」) 一方、外出しようがしまいが日々使うものとされる化粧水や乳液といった基礎化粧品(いわゆるスキンケア商品)も、同4.9%減。 こちらも2016年からの過去5年間で最も低い売上額となりました。 「メークの仕方を忘れた」「メークの仕方を忘れた」 SNS上では、「緊急事態宣言」が解かれたことで出勤などの外出機会がだんだんと増え、再び毎日メークをする生活に戻ることへの不安や憂うつの声が散見されます。 「自粛中に全然メークしなかったせいで、どうやって顔作ってたか忘れてしまった」 「久しぶりにメークしてみたら下手になってて驚く」 「1か月半ぶりに化粧した。なんか肌がつらい。今までこんな不自然なことしてたのか」 「会社また始まるけど毎朝メークの習慣を取り戻せるか分からない」 女性たちにとって、楽しくもあり、煩わしくもあるメーク。1番快適な距離感とは?(画像:写真AC) これらの声が特に多いのは、会社勤めをしている女性たちのよう。 単におしゃれとしてだけではなく身だしなみとしても日々メークの必要に迫られるワーキングウーマンは、その習慣をどこか負担に感じていたということに自粛生活を通して気がついたのかもしれません。 化粧品メーカーの危機感 こうした流れに、化粧品メーカー各社も危機感を抱いているようです。 国内大手の資生堂(中央区銀座)は自社サイト内に「マスク時のメークについて」という特集ページを設け、ファンデーションがマスクに付きづらいメーク術を紹介するなど、今後も続くであろうコロナ禍とメークとの共存方法について提案。 またカネボウ化粧品(中央区日本橋茅場町)も「夜明けまでに、私たちがすべきこと。今しかできないこと。」と題した美容ジャーナリスト齋藤薫さんによるコラムをサイトに掲載し、あらためて美容とは何か、心と体の健やかさとは何かについて問いかけています。 顔の大半を隠してくれるマスクが、女性たちをメークから遠ざける?(画像:写真AC) 政府が公表した「新しい生活様式」では、屋内にいるときや人と会話をするときは症状が無くてもマスクを着用することを提唱しています。 それによりマスクの常用が一般的になっていけば、たとえ化粧品メーカー側がマスクによる化粧崩れの防止策をいろいろ紹介したとしても 「そもそも顔の半分以上をマスクが隠してくれるんだから、そこまで頑張ってメークしなくてもいいかもしれない」 と考える女性が増え、化粧品の需要が以前ほど回復しないということも考えられるでしょう。 問い直されるメークの意味問い直されるメークの意味 さて、この問題は「巣ごもり中に女性たちがズボラになってしまった」などといった表層的なものではなく、「そもそも女性は何のために、あるいは誰のためにメークをするのか」という、とても根本的な問いを突き付けているようにも思われます。 そう考える理由のひとつに、先ほども紹介したツイッターでの女性たちの発信があります。「会社が始まったらまた毎日メークするのかー泣」などのぼやきに交じって、 「自粛中に自分に合うメークいろいろ研究した(*^-^*)」 「メークの練習したらちょっと上達してテンション上がった☆」 といった、誰かに会う予定はなくともメークをし出来栄えに満足感を得ている、ポジティブにメークを楽しむ投稿もいくつも目にとまったからです。 それらの書き込みはどうやら、高校生や大学生など比較的若い女性が多いという印象。「だって社会人のマナーだから」という義務感で毎日メークと向き合う大人世代にとって、いつの間にか忘れてしまっていた感覚がそこにはあるように見えます。 初めてメークした日の高揚 思い返せば子どもの頃、母親の目を盗んで鏡台の引き出しから赤い口紅を取り出し、こっそり自分の唇に塗ってみた。そんな経験がある女性も少なからずいるでしょう。 あのときは確かに、メーク道具で自分を彩ることにドキドキや高揚を感じていたはず。日々の会社用メークに疲れて忘れてしまっていたあのドキドキまでも、「だってメークは面倒くさいから」とひとからげに放り出してしまうことは、なかなかにもったいないことのようにも思われます。 初めて口紅を手にした日のドキドキを思い出しながら、メークの意味を今あらためて考えてみたい(画像:写真AC) 新型コロナウイルスとそれに伴う外出自粛は、めったに訪れることのない大きな変革の転機を私たちの社会にもたらしました。そのなかの小さなひとつではありますが、女性にとってのメークの有りようもまた数えられるでしょう。 「毎日のメークを煩わしく感じていた自分」と、「メークがもたらす新鮮な変化に初々しくときめく自分」は、きっと全く別のもの。自分自身にとってのメークの意味とは何なのか、あらためて考えることそれ自体もまたひとつの楽しみにできればと願うウィズコロナ時代です。
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