騒動から3か月 大丸の「生理バッジ」問題を改めて振り返る

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騒動から3か月 大丸の「生理バッジ」問題を改めて振り返る

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秋山悠紀

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2019年秋に話題になった大丸梅田店の「生理バッジ」、覚えていますか? あの一件をライターの秋山悠紀さんが振り返りました。

大炎上の末、中止に追い込まれたあのバッジ。

 3か月前の2019年10月中旬、大丸梅田店(大阪市)が「フェムテック」(テクノロジーを使って女性の健康問題の解決を目指すサービス)商品を展開する売り場で「生理バッジ」を始めました。バッジを店員が着用して生理中であることを意志表示し、生理についてオープンで話しやすい環境作りを目指したとのこと。

生理に悩む女性のイメージ(画像:写真AC)



 このバッジはインターネット上で炎上。大丸不買の決意表明までツイートする人も出てきて、同11月下旬、大丸梅田店はバッジの着用の中止を決定しました。

 今回の大丸梅田店の取り組みで主に目立っていた批判は、「気持ち悪い」という声です。「生理時期がわかるということは排卵時期も予測できてしまう。バッジ着用時期から逆算して性被害に遭ったらどう責任を取るのか」「生理の女性を見て欲情する男性もいる」といった嫌悪感を多くの人が抱いたようです。

 一方で、「生理休暇が取りやすい環境づくりや、生理用品や生理痛の薬の無償化などを進めるべき」「バッジを付けなければ、生理のつらさが理解されない職場が問題」という意見も見受けられました。

 このように、一見すると批判が殺到したイメージの生理バッジ。しかし、生理があらためて女性にとってさまざまな障壁となっていることを表明し、さらに生理に関連した福利厚生や職場環境改善の訴えまで飛び交うなど、議論のきっかけにもなりました。

 ついでに私たちは、こうした「フェムテック」商品が日本の大手百貨店の売り場に並ぶこと自体、革新的なことであることを認識しなければいけないでしょう。

 2019年2月と3月、渋谷区でトークイベント「女性向け新市場 『フェムテック』最新動向と可能性」が、9月には同じく渋谷区で「Femtech Fes! ~あなたの欲しいモノは、みんなの欲しいモノ」が開催されるなど、少しずつ認知度が高まっています。

 欧米ではすでに市場規模は拡大していますが、まだまだ日本では「フェムテック」の意味を知っている人はひと握り。このようなフェムテック市場に大丸が参入したことには、価値があります。

「生理がつらい」と言う前に

 今の日本社会で男女問わず、生理についてオープンに話さない理由のひとつには、「この人は生理の話を積極的にしたいとは思っていないだろう」という相手への気遣いもあるのではないでしょうか。血が苦手な人は、出血のイメージで気持ち悪くなってしまう場合もあるでしょうし、気分によっては生理の話をしたくない人もいます。

 さらに、生理痛のひどさや生理の苦しみは非常に個人差があるもの。少し椅子に座って症状が落ち着く人もいれば、起き上がれないほどの腹痛に苦しむ人もいます。「つらくても別に平気」と思っている人もいれば、「どうにかしてほしい」と悩んでいる人もいます。画一的な「生理バッジ」を皆が着用することは、ひとりひとりに合った対応策の考慮が置き去りにされやすくなってしまうかもしれません。

 以上のことから、同じバッジを付けるのであれば「私は生理中です」を表明する生理バッジではなく、「私は生理についてお話できます」を表明する「生理トークバッジ」の方が適切だったのではないでしょうか。

生理のイメージ(画像:写真AC)



 また、今回の生理バッジで巻き起こった議論のなかで、やはり大きかったのは「生理のつらさを理解してもらえないつらさ」を吐露する女性たちの声でした。「生理痛で仕事できないなんて甘え」と言われ、つらく悲しい思いをしている女性は少なくないようです。

 生理の苦しみや、生理に対する職場や異性の無理解を嘆く気持ちはとてもよくわかりますが、重篤な生理痛や生理不順はなんらかの病気が隠れている場合がゼロではありませんし、「生理のつらさをわかって!」と訴える前にできることはあります。女性たち自身が、自分の体や症状緩和の選択肢を正しく知る必要性も求められているのではないでしょうか。

 最近では、2019年12月にビーボ(港区北青山)とドリコス(文京区湯島)が生理周期と連動した新しいサプリメントサービスを開発するなど、女性の生理を取り巻く問題を科学で解決しようとする動きが見られます。11月にオープンした渋谷パルコ(渋谷区宇田川町)にも前向きな女性の生理生活を目指した「LACDA(ラクダ)」による生理用品Iot Boxが展示されました。

 生理バッジの一件でよかったことは、生理中の女性の負担や苦労、偏見やハラスメントを減らすことは、すべての人のあらゆる体調不良の負担や苦労、偏見やハラスメントを減らすことにつなげなければいけない――という共通認識を持てたことかもしれません。

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