【プレイバック平成】働く女性の「新しい姿」を描いたドラマ『ショムニ』の思い出

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【プレイバック平成】働く女性の「新しい姿」を描いたドラマ『ショムニ』の思い出

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エタノール純子

芸能コラムニスト

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昭和・平成・令和と変わらず人気のテレビドラマのジャンルといえば「お仕事ドラマ」。芸能コラムニストのエタノール純子さんが平成のヒット作『ショムニ』の思い出を語ります。

人気ジャンル「お仕事ドラマ」

 いつの時代も、テレビドラマで人気のジャンルといえば「お仕事ドラマ」。

 その舞台が多くの場合「東京」なのは、やはり最先端の価値観を生み出すことの多い土地柄ゆえなのでしょうか。

 平成の時代にも、数々の「お仕事ドラマ」人気作が誕生しました。皆さんはどの作品が好きでしたか? 中でも人気だった作品といえば、『ショムニ』(フジテレビ系)を挙げる人は多いのではないでしょうか。

 原作は漫画雑誌『モーニング』で連載され、テレビドラマは1998(平成10)年4~7月に放送。その後シリーズ化もされました。

「落ちこぼれ女子社員」6人

『ショムニ』の舞台もやはり東京都内にある中堅商社で、「落ちこぼれ女子社員」(同ドラマのサイトより)6人の活躍を描きます。

平成の人気お仕事ドラマ『ショムニ』(画像:フジテレビ、ポニーキャニオン)



 原作とドラマでは主人公が異なり、ドラマ版の主人公は庶務二課(通称ショムニ)のボス、坪井千夏(江角マキコ)です。ミニスカートとハイヒールを履き、脚立を担いで社内を歩いているというキャラクターでした。

 庶務二課の毎日の仕事は基本的にいわゆる雑務です。上記の坪井が脚立を担いでいるのも、社内の蛍光灯を交換するためです。

 そして他部署との人間関係を気にせず自由に振る舞う庶務二課の6人。しかし、なぜか結果的に社内の人間の心を動かしたり社会の悪事をこらしめたりして、最終的に会社に良い結果をもたらすといったコメディーでした。

 なぜこのドラマは当時人気を集めたのでしょうか。

東京の普通の女性会社員

 まず『ショムニ』は、『ナースのお仕事』(フジテレビ系、1996年7~9月)の女性看護師や『お水の花道』(同、1999年1~3月ほか)のホステスといった特徴のある女性の仕事ではなく、いわゆる「東京で働く女性会社員」という職業を描いたという特徴がありました。

 このことが似たような環境で働く多くの視聴者の共感を呼んだのかもしれません。

東京で働く女性のイメージ(画像:写真AC)



 また、第2シリーズ移行は「女のいきおいが、日本のいきおいだ。」「男は、組織を作る。女は、時代を作る。」といったキャッチコピーにもあるように、女性の働く姿を前面に描きました。

 雑務を仕事としてこなしつつ会社という組織に縛られない女性社員の姿は、とても新鮮に映ったのかもしれません。

ライバル秘書課との対立

 社内での立ち位置や社会的地位としては庶務二課よりライバルとして描かれた秘書課の方が上にあるようでしたが、自由さや飾らない雰囲気は庶務二課の方が秘書課より上という描かれ方でした。

東京で働く女性のイメージ(画像:写真AC)

 また、女性の社会進出が進み始めて平成時代において、東京のみならず会社組織で働く女性が感じるしがらみや面倒くささを『ショムニ』が代弁してくれたように視聴者は感じたのかもしれません。

個性豊かなキャラクター

 また、庶務二課の6人は多種多様なキャラクター像で描かれていました。

 ドラマ版主人公の坪井千夏のほか、頭脳派で堅物な丸橋梅(宝生舞)、気の弱いパシリ的な存在の塚原佐和子(京野ことみ)、社内の男性社員を虜にする魔性の女・宮下佳奈(櫻井淳子)、水晶と数珠を手に持つ占い女性会社員・日向リエ(高橋由美子)、ミーハーな情報通・徳永あずさ(戸田恵子)です。

恋愛要素は少なめ

 6人は原作でもさまざまな個性を持っていましたが、ドラマ版でもまたコメディーらしい強烈な特徴がそれぞれ付けられていました。

 そして彼女たちは一緒に行動するものの、あくまで同僚としてさっぱりした関係でい続けていたこともまた新しかったです。

東京で働く女性のイメージ(画像:写真AC)



 そして、女性が多く登場するドラマにありがちな恋愛要素がほとんど重要な役割を持っていなかったのも、『ショムニ』の新しい点でした。

 エピソードによっては誰かの恋や社内恋愛も登場するものの、ドラマ全体として恋愛の要素は決して多くありません。それまでのドラマとは違う女性像が描かれていたようにも感じられます。

組織に縛られず働く

 バブルがはじけて日本全体が不景気の真っただ中だったとされる平成時代。

東京で働く女性のイメージ(画像:写真AC)



 今と同じように、社員ひとりひとりの成績やどのくらい会社に利益をもたらすのか、給料に見合った効率的な働き方は重視されていたことでしょう。

 しかし庶務二課の面々からは、前述した蛍光灯を交換するといった雑務にも仕事への誇りが感じられました。社内の上下関係にも縛られず働くそんな庶務二課の姿が、当時は多くの人に共感を呼んだのかもしれません。

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