早稲田の鬼速コロナ対応再び? 希望者「PCR検査無料」検討と空調投資7億円超の衝撃

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早稲田の鬼速コロナ対応再び? 希望者「PCR検査無料」検討と空調投資7億円超の衝撃

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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先日、早稲田大学が希望する教職員と学生に無料で毎週PCR検査を行うことを検討中であると報じられました。同大の英断はこれだけではなく、過去にもありました。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

PCR検査無料を検討の衝撃度

 3度目となる緊急事態宣言発令中の東京都内。2021年度は数多くの大学で対面授業の実施を増やしていく方針を打ち出していましたが、新学期スタート1か月目にして早くも難題に直面しています。

 大学は事業者向け要請等のうち「その他の施設」に分類。都は各大学に向けて「部活動自粛」「オンライン活用」への協力を依頼しました。

 そんななか、早稲田大学(新宿区戸塚町)が

「希望する教職員と学生に無料で毎週PCR検査を行うことを検討中」
「早稲田キャンパスや、スポーツ科学部や人間科学部で先行予定」

と毎日新聞、日本経済新聞などのメディアが報じました。

新宿区戸塚町にある早稲田大学(画像:写真AC)



 首都圏大学非常勤講師組合(豊島区南大塚)の公式サイトには、組合側から早稲田大学に対面授業継続をする上で提示条件のひとつである「PCR検査の実施」が、大学側に受け入れられた経緯が記されています。

 5月10日(月)には、田中愛治総長が対面授業を基本とする方針を続行するとの声明を発表し、教室内の換気改善のため、空調設備に7億5000万円投資して入れ替えていることも明記されています。

 PCR検査の件について大学から公式発表は出されていませんが(5月14日時点)、日本国内で大企業や教育機関が、希望者全員に無料かつ定期的にPCR検査を実施するというのは極めて異例なことです。

 そのようなこともあり、在学生や教職員を合わせると約5万人にもなる早稲田大学の「PCR検査無料を検討中」のインパクトはすさまじいものがあります。

 それと同時に、都内有数の学生数を誇る早稲田大学が感染症リスクを最小限に抑えつつ、コロナ禍でも学生が通常通りの授業を受け、勉学に励む環境を維持することに本気であることがうかがい知れます。

多数を占めるオンライン切り替え

 他大学も、東京都の要請に応じるようにオンラインへの切り替えを進めています。

 例えば、明治大学(千代田区神田駿河台)では新型コロナウイルスの感染拡大状況により、キャンパス内の行動制限をレベル分けしています。緊急事態宣言を受けて「明治大学活動制限指針」をレベル2に引き上げ、一部授業を除きオンラインへの切り替えを行いました。

文京区本郷にある東京大学(画像:写真AC)



 東京大学(文京区本郷)では明治大学と同様に、大学独自の活動制限指針を設定。現在は「準1レベル」となっています。また、同大の「新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京大学の活動制限指針」によると、

「オンラインでの実施を中心にしつつ、対面で実施するほうが教育効果の高い授業は、最大限の感染防止対策を講じた上で、対面(オンラインとの併用を含む)で授業を行います」

とあります。

永遠のライバル・慶応大学の動向

 一方、慶応義塾大学(港区三田)ではキャンパスごとに対応が異なり、神奈川県にある湘南藤沢キャンパスは全ての授業をオンラインで行うことを決定。三田・日吉キャンパスでは感染対策を徹底した上での対面授業と、オンライン授業の2体勢をとっています。

港区三田にある慶応義塾大学(画像:(C)Google)

 いずれの大学でも2020年春の緊急事態宣言下のような構内立ち入り全面禁止などの厳しい制限措置はとっていませんが、多くの学生が集まる大学では新型コロナウイルスの感染拡大の前に思うように対面授業再開ができない状況が続いています。

 このように各大学の対応と比較すると、早稲田大学のコロナ禍対応に関して、他の大学との違いが鮮明になっています。

 しかし、実はその違いは2020年から見られていたのです。

迅速な対応はコロナ禍の初期から見られた

 新型コロナウイルス感染拡大の対応に、企業やさまざまな機関が右往左往していた2020年2月下旬、早稲田大学は2019年度卒業式と2020年度入学式の中止を同時に決定していました。

 しかし多くの大学では「卒業式中止または規模縮小」という判断は下していたものの、入学式に関しては感染状況を踏まえて判断すると静観の立場をとっていました。有名大学のなかで早稲田大学と同じ対応をとったのは立命館大学(京都市)くらいだったことからも、その決断がいかに早かったのかがわかります。

 結局事態が沈静化することはなく、都内の大学は早稲田大学の後を追うように「2020年度の入学式中止、延期」にかじを切ることになりました。

 早稲田大学が初期段階から迅速に対応したのも、国際交流が盛んであり留学生の数が国内トップクラスという事情も絡んでいます。早めに態度を明確にすることで学生の混乱を最小限に抑える必要性があったのです。

 もちろん当時は今後どうなっていくのか正確に読み切ることは難しく、ひとつ間違えれば各方面から批判を浴びる事態になる恐れもありました。「様子を見る」こともできたはずですが、早稲田大学はそのようなことは行いませんでした。

 こうして1年以上が経過し、早稲田大学の初期対応や勇気ある決断は正しかったと証明されました。

新宿区神楽坂にある東京理科大学(画像:(C)Google)



 このほかにも、2020年3月24日には2020年度の授業開始を5月の連休明けにすると発表しました。この時期に明確に「5月から授業を行う」と明言していたのは東京大学(文京区本郷)や東京理科大学(新宿区神楽坂)とわずかでした。

他大学の学生からも声が上がるか

 緊急事態宣言下でも対面授業を維持する姿勢を打ち出した早稲田大学は、空調設備への投資やPCR検査実施を検討し、ウィズ・コロナ時代での大学での学び方を模索しているように映ります。

PCR検査のイメージ(画像:写真AC)



 その一方で、他大学の学生は早稲田大学の決断をただ黙って見守るとは思えません。同規模の大学に通う学生からから

「早稲田がやってなぜやれないのか」

という不満の声も出てくるのは避けられないでしょう。

 実際にPCR検査を行うのか、またどのように実施するのか――今後も早稲田大学の動向から目を離せません。

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