箱根駅伝メンバーから未来のお坊さんまで網羅 日東駒専でおなじみ「駒沢大学」とはどのような大学なのか
大学群で唯一の仏教系大学 東京都内の大学には、 ・早慶(早稲田大学、慶応義塾大学) ・MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学) ・日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学) といった大学群があります。そのなかでも駒澤大学(世田谷駒沢)は唯一の仏教系大学です。 世田谷駒沢にある駒澤大学の外観(画像:(C)Google) 仏教系大学の大半は、寺院の子弟の教育機関という由来を持っています。そのため女子学生から人気のある外国語学部を有する大学が少なく、どうしても華やかなイメージに欠けしまい、全国的に知名度を上げることが難しい状況です。 それではなぜ、駒澤大学は「日東駒専」の大学群に名を連ねことができたのでしょうか。 起源は僧侶の教育機関 駒澤大学の起源は、現在の水道橋駅近くにあった曹洞(そうとう)宗・吉祥寺の境内に1592(文禄元)年に設立された僧侶の教育機関「学林」です。 その後、幾度かの移転を経験し、1913(大正2)年に現在の駒沢の地へやって来ました。 戦後、仏教学部と文学部、商経学部の3学部を設置して新たなスタートを切りましたが、都内の私立大学で多く見られた郊外キャンパスへの移転を行わず、 ・仏教学部 ・文学部 ・経済学部 ・法学部 ・経営学部 ・医療健康科学部 ・グローバル・メディア・スタディーズ学部 の7学部17学科体制で、現在に至っています。 曹洞宗を起源とする仏教大学としてのカラーは年々薄まっているものの、禅に関する科目は必修で、禅体験も取り入れられています。 座禅のイメージ(画像:写真AC) また本部を置く駒沢キャンパスから深沢キャンパス(世田谷区深沢)は徒歩圏内で、スポーツ施設をメインにした玉川キャンパス(同区宇奈根)へは授業日はシャトルバスが運行するなど、世田谷区内に施設が収まるコンパクトな学校運営をしています。 箱根駅伝の常連 マラソン代表も誕生箱根駅伝の常連 マラソン代表も誕生 駒澤大学の知名度を上げたのは、お正月の風物詩である通「箱根駅伝」の名で知られる、東京箱根間往復大学駅伝競走での活躍です。 駒澤大学の陸上競技部は1966(昭和41)年に創部。翌年には箱根駅伝に初出場を果たし、2020年までに計54回連続出場しています。 1997(平成9)年に往路優勝、2000年に初めて総合優勝を果たし、2002年から2005年にかけては4連覇という偉業を成し遂げ、大学駅伝の世界で駒澤大学は強豪校のひとつに数えられています。 駅伝のイメージ(画像:写真AC) 東京オリンピックの男子マラソン代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ」で優勝し、座を勝ち取った中村匠吾選手(富士通)も駒澤大学時代に箱根駅伝等で活躍しました。 プロ野球選手も多く輩出プロ野球選手も多く輩出 陸上部以上に長い歴史を持つ1947(昭和22)年創部の野球部は東都リーグに参加し、プロ野球選手会の初代会長を務めた中畑清や西武ライオンズの黄金期を支えた石毛宏典、広島の顔だった野村謙二郎といった、そうそうたる面々を輩出しています。 また最近では、チームのエースに成長した今永昇太(横浜DeNAベイスターズ)といったプロ野球の一流選手が数多く巣立っています。 プロ野球の試合(画像:写真AC) このように、駒澤大学は日本人になじみがある駅伝や野球といったスポーツを介し、仏教系大学よりも「スポーツ強豪校」というイメージを広めていきました。 1980年代以降、大学群で呼ばれることが増えていった東京都内の大学で駒澤大学が「日東駒専」に入ったのも、こうした学生スポーツの実績が大きかったと考えられます。 2000年代に入り学部を新設 1960年代に法学部など三つの学部を新設して以降、しばらく学部新設を行ってこなかった駒澤大学ですが、初めての理系学部となる医療健康科学部を2003(平成15)年に開設、診療放射線技術科学科を設置しています。 設置の経緯は元々、駒澤短期大学(2009年廃止)内にあった放射線科を4年制で教えるため。最先端の設備のもと、診療放射線技師を育成するための実践的な教育を行っています。 このほかにも、英語能力とITリテラシーを高めてグローバルに活躍できる人材育成を目指すグローバル・メディア・スタディーズ学部を2006(平成18)年、開設しています。 同学部は英語のみで行われる講義も多く、仏教系大学とは思えないような国際的な学部です。 駒澤大学のウェブサイト(画像:写真AC) とはいえ、学生の人数は日東駒専の中でも最も少ない約1万5000人と、コンパクトな大学には変わりません。 地方出身学生も多い駒澤大学地方出身学生も多い駒澤大学 駒澤大学には長年積み上げてきた実績により、各地から志願者がやってきます。 文部科学省の学校基本調査によると、東京の大学全体で地方出身者の割合は30.7%(2019年度)で、駒澤大学は首都圏以外の学生の割合は32%(2019年度)となっています。 2018年度までは36%前後で推移していたことを考えると、駒澤大学は都内の他大学に比べて地方出身学生の割合が高く、全国から生徒が集まっていることがわかります。 2019年 学部別・業種別の就職状況(画像:駒澤大学) 派手さはないが地道な仏教系大学である駒澤大学は地方でも抜群の知名度を誇り、受験生や家族からも人気と支持を集めているのです。 長年の実績は知名度を上げるだけでなく、大学の質の高さを伝えるチャンスにもなります。大学側が全国から学生を集めたいと願うのであれば、駒澤大学のこうした姿勢を学ぶことも大切です。
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