刺激的なウマさとド派手なビジュアル 若者たちが虜になったスパイスカレー30年史
2020年2月8日
ライフ大阪で火が付いた「スパイスカレー」ブームが今、ジワリ東京へも上陸してきているといいます。30年にもわたるスパイスカレーブームの変遷を、カレー研究家の小野員裕さんが解説します。
脚光浴びるスパイスカレーと、その歴史的必然
今、大阪で名物料理として脚光を浴びているのがスパイスカレーです。その人気は大阪だけにとどまらず、東京をはじめ全国でもニューオープンの店が増え続けている勢いです。
ところでスパイスカレーとは一体どんなものなのか、ひとまずその歴史も踏まえて簡単にご説明します。

かつて大阪のカレー屋といえば、家庭のカレーの延長線上にある甘辛い味わいのオーソドックスなカレーライスが主流でした。
スパイスを多用したカレーは、梅田「アショカ」(大阪市北区)の北インドのムガールカレーや、西梅田の「コートロッジ」(同区、閉店)のスリランカカレーはあったものの絶対数は少なく、スパイス好きなカレーマニアにとって大阪は一種「不毛地帯」とも言われていました。
そんななかで、日本式にアレンジされたスパイスカレーの専門店が、30年ほど前からひそかに息づいていました。
それは心斎橋の「ルーデリー」(大阪市中央区。現在は宮崎県に移転営業)と、北浜の「カシミール」(同区。かつては心斎橋アメリカ村の三ツ寺会館の1階)です。この2店は南アジア(パキスタン・ネパール・インド・バングラディシュ・スリランカ)に影響を受けたカレーで、マニアの間でうわさの店でした。
「ルーデリー」は17種類の香辛料をブレンドしたサラリとしたカレーで、穏やかなスパイス感で万人が好む味わいに仕上げています。名物「アヤムカレー」(チキンカレー)やドライカレーに似た「ミッドナイトカレー」で注目を集めていました。現在も宮崎で人気を博しています。
一方の「カシミール」は独特なカレー作り。20種類ほどのスパイスを使い、注文によって数種のカレーソースから組み合わせを選んで調理します。豆腐などの変わった具材に、南インドのゴアの名物料理「ビンダルーカレー」に似たやや酸味のある味付け。さらに鮮烈なスパイス感は異彩を放ち、今も行列のできる人気店です。
当時、大阪の甘辛いカレーに物足りなさを感じていた若者が、前出の「コートロッジ」やこの両店に出会い、スパイスが多用されたカレーの洗礼を受けました。その若者たちの中にこそ次世代のカレー職人予備軍が控えていました。
若者の一部は南アジア現地を訪れ、南インド、スリランカのカレーに触発され、やがてカレー屋の開業を目指す者も出てきました。そんな若者によって、後にスパイスカレーと呼ばれるカレー専門店が、今から十数年前、同時多発的に大阪各地に開店し始めましたのです。その店主の多くが「カシミール」の常連客だったとも言われています。

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