新宿のレストランが提供する「食べない忘年会」って何? コロナ禍の師走に苦肉の策
2020年の12月は、新型コロナの感染拡大防止から職場の忘年会を見合わせる企業が相次いでいます。感染リスクを避けるため、新宿のあるレストランが提案したのが「食べない忘年会」。一体どのようなプランなのでしょうか。職場の忘年会 「開催予定」は2.2% 新型コロナウイルスの「第3波」下で迎えた2020年の師走。 1日あたり500人を超える新規感染者が確認されている東京では、飲食店などに営業時間の短縮を要請したり、高齢者や基礎疾患のある人に観光支援事業「GoToトラベル」キャンペーンの利用自粛を呼び掛けたりと、警戒感が高まっています。 本来であれば職場や仲間同士の忘年会が開かれる時期ですが、今回ばかりはそうも行きません。 日本トレンドリサーチが1000人を対象に行ったアンケート調査では、「実施しない」が9割近くを占めて88.1%。 「実施する」との回答は、わずか5.9%にとどまりました(2020年12月1日~2日実施)。 前年までには考えられない結果ですが、各企業が感染拡大を防ぐために店舗での忘年会開催を見合わせるのはある程度避けられない選択とも言えそうです。 一方、こうした状況に苦慮しているのは言うまでもなく各飲食店です。 書き入れ時の12月にアイデア策 1年で最大の繁忙期である12月ですが、営業時短に加えて予約キャンセルに見舞われています。 飲食店での感染リスクが高いとされる理由は、狭い室内空間での大人数・長時間にわたる歓談や飲食で飛沫(ひまつ)が飛びやすく、また箸の共用や回し飲みなどによる参加者同士の接触も懸念されるため。 こうした危険をできる限り回避したうえで少しでも客を呼び込む手立てはないかと、各店がさまざまな対応策に腐心しています。 そんななか新宿のあるお店が始めたのは、約30分間で行う「食べない忘年会」。 食事をしなければ確かに感染リスクを抑えられるかもしれませんが、忘年会なのに「食べない」とはどういうことなのでしょうか。 「本当は開きたい」の声を受けて「本当は開きたい」の声を受けて そのお店は、バリラックス THE GARDEN新宿(新宿区西新宿)。JR新宿駅から徒歩約7分、西口の新宿新都心に構えるバリ料理のレストランです。 近隣には数々の企業が立地し、例年なら12月は予約で満席。しかし2020年は非常に厳しい状況が続いているといいます。 新宿のレストラン「バリラックス」のメニュー(画像:Stay Restaurant、ペンギンファンタジア) 普段ひいきにしてくれる企業の忘年会幹事にヒアリングをすると、 「会社から4人以上の会食はNGと言われてしまって……」 「本当は開きたいけど、今年は難しそう」 といった回答が。 3月以降、在宅などでのテレワークが推奨されて、1年を通じてほとんど顔を合わせなかった同僚もいる異例の年だっただけに、「最後(年末)くらい対面でのコミュニケーションを取りたかったけど……。諦めるしかないかな」。 そんなぼやきにも似た声を聞き、今回の「食べない忘年会」企画を立ち上げたと言います。 あいさつ・記念写真・テイクアウト「食べない忘年会」とは、全行程約30分のいわば「エア宴会」。 1.ソーシャルディスタンスを保った広めの店内で約10~20分程度のあいさつ 2.屋外のテラス席で、参加者たちの集合写真を撮影 3.店頭で紙袋に入れたコースメニューを受け取り、解散 という内容です。 レストランなのに飲食しないという逆転の発想で感染リスクを抑え、「帰宅してからZoom飲み会を開いても良し、テイクアウトメニューを家族へのお土産にするも良し、楽しんでいただけたら」(同店担当者)と話します。 いつかコロナの日々を思い出す機会にいつかコロナの日々を思い出す機会に コロナ感染が拡大し、客足が途絶えた今春から夏。少しずつ戻り始めた秋、そして再び来店が遠のいた初冬と時間をへる中で、同店担当者たちは「レストランの役割とは何か」についてあらためて考えを巡らせたと言います。 「もちろん第一にはおいしい食事を提供することですが、たとえ食事をするのが難しい状況だったとしても、また短時間であったとしても、人と人とが顔を合わせてほんの少しでも言葉を交わす場所や機会を私たちが提供できたら」 バリラックスの店内(画像:Stay Restaurant、ペンギンファンタジア) 今回のプランにわざわざ写真撮影の時間を設けたのも、思い出を記念に持ち帰ってほしいとの思いから。 「いずれ世界が正常化したとき、記念撮影に写る全員がマスクを着けた写真を見て『あのときは本当に大変だったね』とコロナ禍の日常を思い出す機会になるかもしれません」と同担当者。 テイクアウトのメニューは、エビの生春巻きやアヤムゴレン(バリの鶏唐揚げ)、ナシゴレンなど7点セット。税込み3500円と、価格もできるだけ抑えたとのこと。 ※ ※ ※ 言われてみれば2020年、「集合写真」を撮影する機会はほとんどの人にとって無かったのではないでしょうか。 いつもならちょっと面倒くさいとも感じてしまう職場の忘年会。でも2020年はわずか30分だけ顔を合わせて、皆で記念の写真に納まるのも、悪くないように思われます。
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