3密回避でのんびり移住 コロナ禍で高まる都会人の「農村移住」は今後増えるのか

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3密回避でのんびり移住 コロナ禍で高まる都会人の「農村移住」は今後増えるのか

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未曽有の新型コロナ禍で、「田舎に引っ越したい」と考える都会暮らしの人の割合が増えているようです。林野庁が行った調査を基にその現状を考えます。

移住に関心があるのは4人にひとり

 新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年。在宅勤務(テレ―ワーク)を導入する企業が増えたことなどを背景に、東京などいわゆる「都会」に住む人々の間で農村での暮らしに対する関心が高まっているようです。

 林野庁の委託を受けて森林サービス産業プロモーション共同企業体(中央区晴海)が行った「新しい日常における森林活用の意向調査」によると、農山村に移住・定住したいと考える人は「してみたい」「どちらかと言えばしてみたい」を合わせて24.4%(約781人)。4人にひとりが、移住の意向を持っていることが分かりました。

 調査は2020年6月26日~29日、東京などの都市部を中心に全国20~50代の男女3200人にインターネットで実施されました。

都会を離れて田舎暮らし。あなたはあこがれますか?(画像:写真AC)



 この数字を多いと見るか、少ないと見るか。

 調査対象や質問項目が異なるため単純な比較はできませんが、内閣府が2019年10月に実施した「森林と生活に関する世論調査」では、「定住してみたい」と「どちらかと言えば定住してみたい」の合計は20.8%でした。

 また、逆に「移住・定住の意向が薄い」人の割合を見ると、2019年内閣府調査が62.7%で、2020年林野庁調査は47.1%。コロナ禍で実施された今回の調査の方が関心を持つ人の割合が増えていると言えそうです。

 さらに、移住希望者のうち、テレワークが可能になった場合には移住したいと考える人の割合は71.9%。コロナ禍の「新しい生活様式」で推奨される、都心のオフィスなど場所に縛られない働き方が実現できるのなら移住を……と考える潜在ニーズの高さが明らかになりました。

 移住意向を持つ人たちは、農山村のどのような点に魅力を感じているのでしょうか。

自然が魅力、都会に疲れた、など

 移住希望者に理由を尋ねた設問では、

「自然にあふれた魅力的な環境だから」(65.0%)
「都会に疲れた」(34.6%)
「生活コストの削減のため」(25.7%)

などのほか、「コロナウイルスの影響を避けるため」という回答も15.7%。

「移住を希望する理由」の回答結果(画像:森林サービス産業プロモーション共同企業体)



 コロナ禍における3密を避けた屋外活動に対してはより顕著な関心が寄せられていて、「とても関心がある」「ややある」は計51.3%。「全くない」「あまりない」の計21.2%を大きく上回りました。

 3密を回避できそうな場所として注目を集めたのは「山」(48.2%)、次いで「森」(43.0%)、「川」(35.5%)と、こちらも農村部への回答が集中しています。

 また、農山村に移住したら就きたい希望の業種は、最も多いのが農業(39.7%)。次いで小売業、飲食サービス業などの第3次産業(23.8%)、林業(18.6%)、IT・情報産業関連(16.6%)という結果でした。

「ポツンと」や「家つい」も人気

 田舎での生活にあこがれを抱き、移住を検討する都会暮らしの人の割合は近年増加しつつあると言われています。

 そうした傾向はテレビ番組の視聴率などにも表れている様子。例えばテレビ朝日系「ポツンと一軒家」は、毎回20%近い視聴率を記録する人気コンテンツ。ネットに書き込まれる視聴者のコメントにも

「人里離れた土地でどんな生活をしているのかは、とても興味がある」
「私も仕事を今の仕事辞めて田舎に住みたい」

といった声が並びます。

人気番組「ポツンと一軒家」(画像:朝日放送テレビ)

 また、終電を逃した人にタクシー代を払う代わりに家へ付いていく、テレビ東京「家、ついて行ってイイですか?」は、東京など首都圏での取材以外に、農村部を舞台に移動販売車を利用する人に代金を払ってお宅訪問する回も人気です。

 こちらもたびたびネットで話題になるなど、好評を博しています。

 こうした都会人の田舎への憧憬(しょうけい)に、ウィズコロナの日常がより拍車を掛けていると言えそうです。

移住者増へ、課題は職種の多様化

 今回の調査結果について、コンサベーション・アライアンス・ジャパン(同区渋谷)の滝沢守生事務局長は

「実際に移住した人が生活の様子をSNSなどで情報発信することが増え、移住後のライフスタイルもイメージしやすくなったことも、農山村部への移住・定住の抵抗が減っていることに影響していると考えられます。ソーシャルのつながりによってライフスタイルの事例ができてきたことは、農山村部への移住・定住の追い風だと感じています」。

 また移住後の仕事に関しても、

「職種は多様化してきています。テレワーク普及などの働き方改善はもちろん、農業や林業などの第1次産業においても、市場や流通が多様化したことで生産者が直接消費者にモノを売ることができるようになるなど、これまでとは違うビジネスチャンスは広がってきています。今後、新しい日常へと移り変わる中で、農山村部への移住・定住の選択をする人が増えていく可能性が高いと考えられます」

とコメント。

地方のまちおこしや移住誘致を、コロナが後押しすることになる?(画像:写真AC)



 また、東海大学観光学部(渋谷区富ヶ谷)の田中伸彦教授は、

「移住希望者が農山漁村で就きたい職業は、農林漁業を中心としながらも、テレワークを活用したIT産業や再生可能エネルギー産業への就業希望も多いという調査結果が出ています。20代など若い男性層では、まちづくりや観光、土木建設など魅力的な農山漁村を創り上げる仕事に魅力を感じているようです」

と分析。

「そのため森林管理や森林計画においては、木材資源の管理だけではなく森林サービス産業に生かせる魅力的な景観づくりやトレイル整備など森林空間資源の管理へ積極的に取り組むことで、若手移住候補者層や観光来訪者への支持が集まるのではないでしょうか」

としています。

 在宅勤務が増えたことで、すでに都心から東京郊外などへ引っ越す人が増えていると言われる昨今。郊外を飛び越して、さらに遠くの農山村部へ――。そんな選択肢が当たり前になる時代が、ウィズコロナ時代にやってくるのかもしれません。

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