お正月もやっぱり帰省できない? 各百貨店の「2021年おせち」が巣ごもり対応一色になっていた

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お正月もやっぱり帰省できない? 各百貨店の「2021年おせち」が巣ごもり対応一色になっていた

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2020年夏は、帰省できずに寂しかった人も少なくないはず。しかし4か月後のお正月も「帰省や旅行を控える人が多いのでは」というのが、百貨店など小売業界の見立てのようです。そんな傾向を色濃く反映した2021年の「おせち」が続々と登場中。例年との違いは?

このまま自粛ムードが続くのか

 お盆の時期の帰省を諦める人も多かった2020年の夏。

 新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、とりわけ東京は政府の「Go Toトラベルキャンペーン」の対象から除外されるなど、遠出をしづらいムードに包まれた夏でした。

「次のお正月には帰るから」と遠方に住む親族に約束した人たちもいる一方、一体いつになればコロナが収束するのか、見通しすら立っていません。

4か月後に迫るお正月。新型コロナの状況はどうなっているのか……(画像:写真AC)



 2020年3月2日(月)の全国一斉休校の頃から本格化した自粛ムードも、はや半年。すでに、年度内の修学旅行を断念した小中学校や、2021年4月の市民マラソン大会の中止を決めた例なども、全国で散見されます。

 このままお正月も自粛ムードが続くのかもしれない――。そんな世間に漂う予感は、小売業界においても大勢のようです。

 そんな傾向を色濃く反映してか、2020年9月に入って百貨店など各社が発表した「2021年おせち」のラインアップには「巣ごもり正月」や「帰省控え正月」といったキーワードがずらりと並びました。

ひと口ずつ小分けされたおせち

 そごう・西武(千代田区二番町)のおせち約300種類の中で目を引くのは、50ものメニューがひと口サイズの透明カップに分けられた「和洋折衷カップおせち」。

 栗きんとんやアワビといった伝統の顔ぶれとともにローストビーフやテリーヌなどの洋風品目も並び、「和風はもちろん洋風や中華の料理も楽しみたいという、多様化する昨今のおせちニーズに応える」(同社担当者)一品です。

ひと口サイズの透明カップに分けられた「カップおせち」(画像:そごう・西武)

「コロナ禍で、ひとつのお皿に皆ではしを伸ばす食事が敬遠される状況で、おせちでもこうした小分けタイプは需要があるのでは」と担当者。

 雑誌『婦人画報』(ハースト婦人画報社、港区南青山)が2020年8月31日(月)に発表した「2021年おせちに関するトレンド調査」(有効回答数3854人)によると、57.3%の人が「(2021年正月に)おせちを購入する」と回答。

「作るより買う」傾向が高まり、近年好調を見せるおせち市場は、自宅で過ごす人が増すコロナ禍でさらに売り上げを伸ばすというのが業界の共通した見立てのよう。

 同社は前述の「カップおせち」を4種類、ひとり分がひと箱に収まった「おひとり重」を12種類用意するなど、取り分け不要なバリエーションに例年以上に注力。売り上げ目標を前年比105%と掲げています。

需要の高まりで「20%増」目標

 各社が口をそろえて言及するのは、やはり「お正月の時期までに新型コロナが完全に収束し、帰省や旅行の機運が以前通りになっているとは考えづらい」ということ。

 京王百貨店(渋谷区初台)も「家族でゆっくり過ごす傾向が続くとみられ、おせちの存在感が増す」と想定。

 全241種類のうち、もとはおひとりさまニーズなどを見越していた一段タイプの「個食おせち」を「新しい生活様式の新定番」と位置づけ、21種類に増やすなど力を入れています。

ひとり一段タイプの「個食おせち」(画像:京王百貨店)



 同社にとっても、おせちは非常に好調なカテゴリーのひとつ。2020年のお正月も前年比約110%だったことから、2021年は「120%」を目標に設定しました。

 年末年始を自宅で過ごすと早々に決める家庭も多いことから、インターネットでの予約開始日を前年より11日間ほど前倒し。さらに、直接会えない遠方の家族におせちを贈れる「広域配送が可能なおせち」も強化するなど、コロナ禍での需要に応えるサービスを展開しています。

“旅行気分”が味わえる豪華版

「出掛けづらいご時世だからこそ、自宅でのおせちを皆で華やかに」というニーズを見越した商品が強化されているのも、2021年の特長のひとつのよう。

 ニュー・オータニ(千代田区紀尾井町)は「巣ごもり正月を彩る、豪華絢爛(けんらん)なホテル特製『おせち料理』」と銘打ち、伊勢エビなどが載った全51品の4人用を9万7200円で販売予定。

豪華絢爛な特製おせち(画像:ニュー・オータニ)

「例年、海外や行楽地でお正月を過ごしていた方にもお薦めしたい、“旅行気分”が味わえる高級おせち」としてアピールします。

 またワタミ(大田区羽田)は、従来の一段重や二段重に加えて、豪華食材をふんだんに使った3~4人用の四段重を今回初めて登場させました。

せっかく食べるなら特別なもの

 同社が展開する「ワタミの宅食」は、主に高齢者向けの食事宅配として10年連続売り上げシェア1位を記録しています。

 一方、2020年3月の一斉休校時に3~18歳の子どもがいる家庭を対象に50万食を無料提供したことなどから、子育て中の世帯からの注文もコロナ禍で増加中。

 外食産業に長く携わってきた立場から、

「安く手軽に、という消費ニーズがある半面、せっかく食べるなら特別なものを、という(一点豪華主義的な)ニーズがあることも感じています。今度のお正月は旅行や帰省ができない分、自宅でのおせちにこだわりたいというお客さまも多くいらっしゃるのではないでしょうか」(同社担当者)

と期待を寄せます。

明るいお正月を迎えてほしい

 もうひとつ、各社が口をそろえるのは「なかなか自由に過ごせないお正月だからこそ、おせちで食卓に彩りを添え、明るいお正月の一助となりたい」ということ。

「ごめん、やっぱりお正月も帰れないかもしれない」と、離れた親族に伝えるのは寂しいばかりですが、こんなときだからこそちょっと豪華なおせちを贈ったり、少人数で囲む食卓にも華やかなおせちを用意したりして、新年を前向きな気持ちで迎えたいものです。

 まだまだ先のようでいて、あっという間にやってきそうな次のお正月。2020年も残り4か月です。

 あなたはどこで誰と、どんな年越しを迎える予定ですか?

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