ムーミンも驚き? 本格サウナブーム支える「フィンランドの流儀」とは(前編)

  • ライフ
ムーミンも驚き? 本格サウナブーム支える「フィンランドの流儀」とは(前編)

\ この記事を書いた人 /

アーバンライフメトロ編集部のプロフィール画像

アーバンライフメトロ編集部

編集部

ライターページへ

サウナがブームです。1964年の東京オリンピック以降に普及したといわれるサウナですが、現在のトレンドは「フィンランド式」。いったいどういった形なのでしょうか。

サウナ専門誌がブームの火付け役に

 サウナブームが加速しています。テレビや雑誌などで特集がひんぱんに組まれ、サウナ愛好家を意味する「サウナー」という言葉も広く知られるようになってきました。

サウナ好きの女性のイメージ。女性たちが被っているのは、サウナの熱から頭皮や髪を守るサウナハット(画像:温泉道場)



 サウナの調査研究を行う、日本サウナ・温冷浴総合研究所(港区西新橋)によると、サウナが日本に初めて上陸したのは、1964(昭和39)年の東京オリンピックだといいます。

「(サウナの本場である)フィンランドの選手が『家庭用の簡易なサウナ』を持ち込んだことがきっかけといわれています。その後の1966(昭和41)年、渋谷に日本初のサウナ『スカンジナビアクラブ』が開業し、以来、人気を博し現在に至っています」(日本サウナ・温冷浴総合研究所)

 それから約50年。現在のブームの背景には別の流れがあるようです。業界団体の日本サウナ・スパ協会(千代田区九段南)は、2014年3月に発売された日本初のサウナ専門誌「saunner(サウナ―)」(小学館)がブームの火付け役になったと指摘します。

「雑誌の発売以降、テレビ番組でサウナが急に露出するようになりました。これを機に『オヤジの聖地』というイメージがあったサウナに、若い人が多く訪れるようになったんです」(日本サウナ・スパ協会)

サウナ情報検索サイトも登場

 最近、特に増えているのが若い女性の利用で、その方法も変化しているといいます。

「以前はサウナのみを利用する人が多かったですが、最近はサウナと水風呂に入る『温冷交代浴』をする女性が増えています。当協会の公式資格『サウナ・スパ健康アドバイザー』の受講者2600人のうち3分の1は女性です。サウナの効果を勉強したい女性が増えているようですね」(同)

2016年に発売された『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』(2019年3月13日、國吉真樹撮影)



 また、人気カプセル玩具『コップのフチ子』の生みの親として知られる漫画家・タナカカツキさんのコミックエッセイ『サ道』(2011年パルコ。2016年講談社で文庫化)の影響もブームをけん引。同エッセイは、サウナの本質を「サウナと水風呂のセッション」とし、「温冷交代浴」の魅力を広めました。ちなみに同作は2016年1月に『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』として、漫画化されています。

 そのほかに、サウナ情報検索サイト「サウナイキタイ」(2017年12月オープン)や「SAUNA TIME(サウナタイム)」(2018年2月オープン)などの登場で、サウナはインターネットユーザーにとってさらに身近な存在に。働けるサウナ「コワーキングサウナ(スカイスパYOKOHAMA)」(神奈川県横浜市、2018年11月オープン)、サウナー専門のファッションブランド「TTNE」や、サウナ施設のアワード「サウナシュラン」などもブームを下支えしています。

2割以上の人「1か月に1回以上」利用

 フィンテックグローバル(品川区上大崎)が全国に住む20~59歳の男女を対象にしたインターネット調査によると、2割以上の人が「1か月に1回以上」サウナを利用していることも明らかになっています。

全国に住む20~59歳の男女がサウナに行く頻度を表したグラフ(画像:フィンテックグローバルのデータを基にULM編集部で作成)

 そんなサウナブームですが、そのけん引役として注目されているのが「フィンランド式」のサウナだといいます。ムーミンでおなじみのフィンランド。これまでの日本式サウナとどのように違うのでしょうか。

「フィンランド式」サウナとは何か

 下北沢駅から徒歩3分のイベントスペース「下北沢ケージ」(世田谷区北沢)。この場所で2019年1月19日(土)から3月17日(日)までの2か月間、屋外サウナイベント「CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA」が開催されていました。

「CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA」が開催されていた会場の外観。京王井の頭線の高架下にある(画像:アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン)



 2017年12月に行われた「CORONA WINTER SAUNA」の第2弾となる同イベント。フィンランド式サウナが行われていたのは、屋外に設置されたドーム型のテントの中です。

「ロウリュ」だけでなく、さまざまな要素含む

 フィンランド式サウナの定義については

・サウナ内のヒーターが「電気式」ではなく「薪式」
・入室の際に水着を着用するか
・サウナが湖畔に立地しているか
・白樺の枝葉を束ねた「ヴィヒタ」があるか

 など、その解釈はさまざまですが、共通するのは「ロウリュ」を行えるということ。ロウリュとはフィンランド語で、サウナの室内に置かれたヒーターに積まれた石に水をかけ、「蒸気を発生させること」です。

サウナ内のイメージ(画像:アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン)

 発生した蒸気によってサウナ室内の湿度が上がることで、入浴者の体感温度も上昇。通常よりも発汗して代謝を促せるというわけです。

「フィンランド式サウナの室温は一般的に50度から70度ぐらいまでといわれており、(ロウリュを行わない日本式サウナの)ドライサウナが70度から90度であるのと比べ、『低温高湿』です」(「CORONA WINTER」PR事務局)

 温浴設備メーカーのメトス(中央区築地)のウェブサイトによると、ロウリュは代謝促進のほか、メディテーション(瞑想)効果やリラクゼーション効果も期待できるといいます。

 東フィンランド大学の調査によると、サウナには高血圧や心臓病などの血管疾患、認知症などの神経認知機能障害、肺疾患、鬱などの精神疾患に対するリスクを減らし、加えて、皮膚病や関節炎、頭痛、風邪を和らげる効果もあるとのことです。

下北イベント、カップルで来場も

 日本では通常、入浴者の火傷などを避けるため、施設スタッフがロウリュを行うのが一般的です。しかし「CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA」では入浴者自身がロウリュを行えるようになっていました。

水風呂の利用イメージ(画像:アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン)



 サウナから出たら、暖まった体を冷ますために水風呂へ。全身の熱が閉じ込められるような心地よさを感じた後は、タオルで体をよく拭いて、外気浴を。

「CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA」のPR事務局は今回の開催について、「都心で、水着で、屋外で、サウナに入って、水風呂に入って、外気に当たるという体験は、日常ではなかなかできません。高架下で電車の音を聴きながらサウナに入るというのも、非日常的でした」と振り返ります。

サウナ後に食べるフードも美味

 来場者の男女比は2対1、年齢は20代から40代までが中心。数人のグループやカップル、夫婦で訪れるケース多かったといいます。

イベントで提供されていたオリジナルメニュー「サウナソーセージ」(画像:アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン)

「来場者の方からは『サウナは温度が高くないから、ずっと居られる』『外気浴がめっちゃ気持ちいい』『ご飯もおいしい』などの声をいただきました」(同事務局)

 なおイベントでは、数種類のスパイスを使ったオリジナルメニュー「サウナソーセージ」など、サウナ後のすっきりした身体に合うフードも提供されていました。

(後編に続く)

関連記事