かつては「罰ゲーム」、今や救世主? 都内で徐々に広まる「昆虫食」の未来とは

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かつては「罰ゲーム」、今や救世主? 都内で徐々に広まる「昆虫食」の未来とは

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アーバンライフメトロ編集部

東京都内を中心に、昆虫を食材として扱う飲食店が増え始めています。世界的な人口増加や地球温暖化の救世主になるとされている栄養食ですが、どうしても見た目が受け付けない――という人も少なくないのではないでしょうか。

見た目のハードルが高過ぎる

 2019年11月、3年ぶりにリニューアルオープンした渋谷パルコ(渋谷区宇多川町)は、最先端のファッションやアート、次世代デジタル技術を生かした商業施設として世間の注目を大いに集めました。

 中でも話題をさらったのは地下1階のレストランフロア。斬新なコンセプトの飲食店が出そろうなか、ジビエと昆虫料理を振る舞う「米とサーカス」も注目店のひとつに数えられています。

本文中には、昆虫食メニューの画像は出てきませんのでご安心ください(画像:ULM編集部)



 東京では今、こうした昆虫食がジワリと浸透しつつある模様。

 JR上野駅にほど近いアメ横(台東区上野)には最近、アメ横センタービル入り口やアメ横プラザ商店街にコオロギ、タガメ、ゲンゴロウが入った自動販売機が設置されました。

 表参道には2020年1月、蚕(かいこ)専門の昆虫食カフェ「シルクフードラボ」(港区南青山)がオープン。ハンバーガーやシフォンケーキなど多彩なメニューを取りそろえています。

 さらに、昆虫食のコース料理を振る舞うレストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」(中央区日本橋馬喰町)の開店が、「無印良品」でおなじみの良品生活(豊島区東池袋)による「コオロギせんべい」の発売が、いずれも2020年春に控えています。

 世界的な人口増加を背景に、食糧確保や環境保護の観点から今後ますます注目を集める、と言われている「昆虫食」。しかし、やっぱり、どうしても二の足を踏んでしまう人は多いのではないでしょうか。

 昆虫食は本当にはやり始めているのか。今後さらなる広がりを見せるのか。渋谷パルコにも出店している「米とサーカス」の運営会社、「亜細亜TokyoWorld」(新宿区高田馬場)の宮下慧(みやした せい)さんにお話を聞きました。

客層は20~30代、男性がやや多め

――早速ですが、「流行の発信地」ともいえる東京で今、昆虫食ファンが増えているというのは本当ですか。

 はい。実はかなりのペースで増えています。

 当社で取り扱いをスタートした2016年は、「罰ゲーム」としてチャレンジ(注文)するというお客さんが多かったのですが、今では真剣に「新しい食材」として召し上がる人がかなり増えているという印象です。

――実際の売り上げはいかがですか。

「米とサーカス高田馬場店」の看板メニュー「昆虫6種種食べ比べ」の注文数をご紹介すると、スタート年の2016年は1か月79皿だったのに対して、2019年は156皿と、2倍近くに増えています。

 2019年の1か月の来店客数は544組でしたので、およそ3.5組に1組がこの「昆虫6種種食べ比べ」を注文している計算になります。

「昆虫6種種食べ比べ」の売れ行きは好調とのこと(画像:亜細亜TokyoWorld)



――2019年11月にリニューアルオープンした渋谷パルコの「米とサーカス」はいかがでしょうか。

 こちらも順調に増えています、と言いたいところなのですが、新型コロナウイルスの影響で2020年2~3月はお客さまは落ち着いてしまっていますね。それまでは順調に推移していました。

――来店するお客さんはどういった人が多いのでしょう。

 渋谷パルコ店は若干、男性が多いです。男性55:女性45といったところでしょうか。流行感度の高いオシャレな雰囲気の人が多いですが、ご家族連れもいらっしゃいます。

 高田馬場店の人は、男性60:女性40くらい。長期休みの時期には全国各地からたくさんのお客さまにお越しいただいています。

昆虫食、環境面と栄養面でのメリット

――主にターゲットとしている客層は、やはり若い世代ですか? 最初は「怖いもの見たさ」や「SNS(会員制交流サイト)映え」を狙って挑戦してみたら、意外においしくてリピーターになった、なんてこともあるのでしょうか。

 必ずしも「若い世代」に絞っているわけではありませんが、高田馬場店は20~30代が中心ですね。渋谷PARCO店は小さなお子さんが興味を持って保護者と来てくれることも多いです。SNS映え狙いから入って、実際ハマるという人もいますよ。

 楽しくおいしく「新しい食体験」をしてもらうことをコンセプトにしているので、食に対して好奇心が強い人が多いと思います。

――奇抜さに目が行きがちな「昆虫食」ですが、世界的な人口増加や地球温暖化の切り札になるという話を聞きました。

 そうなんです。

 ちょっと固い話になりますが、2030年には世界人口は90億人に達する見込みがあると言われています。そこで問題となるのが、深刻な食糧難です。

 2013年、国連の食糧農業機関(FAO)が、人口増加と地球温暖化による食糧問題の解決策として、「昆虫食」を推奨するリポートを発表して話題になりました。

昆虫食のメリット図解(画像:亜細亜TokyoWorld)



 まず「環境面でのメリット」としては、生産性の高さ、効率の良さが挙げられます。

 牛肉1kgを生産するために必要な飼料は10kg。対して、例えばコオロギは2kgと、飼料変換効率が非常に高いというわけです(昆虫の種類によって必要な飼料はバラつきがあります)。

 そして、温室効果ガスの排出量や、養殖に必要な水と土地という点から見ても、家畜動物より環境への負荷が低いと計算されています。

どうしても見た目が受け付けない人には

 それから「栄養面でのメリット」。

 昆虫の種類によって差異はありますが、高たんぱく質で必須アミノ酸や鉄分などのミネラル・ビタミンも豊富に含んでいます。100g当たりのたんぱく質・ビタミン・ミネラル含有量は、肉・魚よりも高いとされています。

――それだけ聞くと、まさにスーパーフードと言えそうですが、味はどうなのでしょう。宮下さんは、実際に「昆虫食」を食べてみての感想、いかがでしたか。

 私はもともと虫が大の苦手なので……、最初は「ムリ!」と思っていました……(笑)。が、自分たちで昆虫を使って料理を作るというワークショップに参加して、自分で調理して初めて「食材」として捉えられるようになりました。味もおいしかったですよ。

――それから、ずっと疑問だったのですが、どうして昆虫食メニューは姿焼きのような「ありのままの姿」のものが多いのでしょう? 粉砕したり、すり身にしたりした方が、見た目のハードルを越えやすいかなと思うのですが、作り手のこだわりのようなものがあるのでしょうか。

 実は、「そのままの姿を食べたい」というお客さんのニーズが大きいんです。

 例えば私たちのお店でも、コオロギを粉末にしてオリジナルパテを作り、バンズにサンドした「BUGハンバーガー」や、同じく粉末コオロギを使った「スムージー」「ソーダ」といったメニューもご用意しています。

 こうした初心者向けに作ったメニューも評判はいいのですが、ダントツで人気なのは、虫そのままの「昆虫6種食べ比べ」。初めて食べるお客さんが多いので、味だけでなく視覚でも楽しみたい、体験したい、ということなのだと思います。

「まずは昆虫食を体験してもらう」というところからスタートして、だんだんと食事の一部に取り入れてもらえるよう、メニューのバリエーションを幅広く展開するよう心がけています。

何種類の昆虫が食べられるか、ご存じですか?

――好奇心でチャレンジする人、環境問題を思って食べる人、いろいろな人がいますね。今後、さらに昆虫食ファンを増やしていくために、課題に感じていることがあったら教えてください。

 やはり見た目と価格でしょうね。畜産の牛や豚、鶏と比べると、まだまだ高値での提供になってしまいます。世界各地でも日本でも昆虫の養殖が進んでいて、ニーズが増していけば少しずつ解消していけるのではと期待しているところです。



――最後に、昆虫食をまだ試したことがないという人たちにひと言お願いいたします。

 食べられる昆虫は、世界で2000種以上もいます。ですので自分の好みの味がきっと見つかると思います。世界が注目するサスティナブルフード・昆虫にぜひチャレンジしてみてください。

※ ※ ※

 東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定した2013年以降、世界各地からの外国人観光客を迎え入れる東京ではヴィーガン料理を扱う飲食店が一気に増えました。果たして「昆虫食」はヴィーガン料理の後に続くのか。皆さんは昆虫食、試してみたいですか?

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