ミニ四駆に「第4次ブーム」が到来? コロナ禍ならでは再流行の理由とは

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ミニ四駆に「第4次ブーム」が到来? コロナ禍ならでは再流行の理由とは

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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小さな子どもから大人まで、男性を中心に根強いファンを抱える「ミニ四駆」。発売以来39年を迎えた今、あらためてのブームが到来すると、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんは指摘します。背景を解説します。

第4次ブームを象徴する漫画連載

 今、ミニ四駆の第4次ブームが到来すると言われています。

 ミニ四駆は、模型メーカーのタミヤ(静岡市)が販売している動力付き小型自動車プラモデルのこと。1982(昭和57)年に最初のモデルが登場しました。

「1/32 ホーネットJr.」(画像:タミヤ)



 今は1000円前後の価格で本体が販売されており、グレードアップパーツでカスタマイズすることも可能です。

 なぜそのミニ四駆のブームが到来するのか。さまざまな背景はありますが、象徴的な事象として『月刊コロコロコミック』(小学館)でミニ四駆を使ったバトルレース漫画「MINI 4 KING(ミニヨンキング)」(原案:武井宏之、漫画:今田ユウキ)の2021年9月号からの連載開始があります。

 最近まで第3次ミニ四駆ブームと言われていましたが、ミニ四駆は過去に何回もブームを繰り返しています。

 そのブームの拡大を牽引(けんいん)してきたのがミニ四駆をテーマにした漫画やアニメです。

 1980年代後半の第1次ブームのきっかけはレーサーミニ四駆の登場で、高額なRCカーと比較して子どもでも手に入れやすい価格で販売されたことで人気が出ました。

 1987(昭和62)年から月刊コロコロコミックでミニ四駆を題材にした漫画「ダッシュ!四駆郎」が連載を開始。幻のマシン「ホライゾン」を巡るバトルレース漫画で、登場する車種もタミヤから販売されました。

 1989年には同名でアニメ化もされ、小学生を中心に人気が拡大、一大ブームへと発展しました。このようなクロスメディアのプロモーション戦略で第1次ブームは盛り上がりました。

東京など各地で「ミニ四駆ジャパンカップ」

 アニメの終了とともにブームは一端沈静化します。しかし、1994年にはフルカウルミニ四駆が登場し、スタイリッシュなボディが話題となって、また人気が出始めます。

 そして同年に同じく月刊コロコロコミックで「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」が連載を開始。

 こちらはミニ四駆が好きな星馬烈と星馬豪の兄弟がそれぞれソニックセイバー、マグナムセイバーを使いレースを勝ち抜いていくストーリー。1996年にはアニメ化もされ、女性人気の高いキャラクターが多かったこと、当時のアニメブームもあって爆発的な人気を獲得しました。

 アニメは第3シリーズまで放映され、ゲーム、劇場版アニメも製作されました。これによって1990年代中ごろは空前のミニ四駆第2次ブームが到来します。

 第1次ブーム、第2次ブームにミニ四駆に熱狂した子ども世代が親世代となって、自分の子どもと一緒にミニ四駆を楽しむようになったのが第3次ブームの背景と言われています。

 2014年にはコロコロコミックの大人版「コロコロアニキ」で「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」の続編「爆走兄弟レッツ&ゴー!! Return Racers!!」が連載を開始。2015年には「ダッシュ!四駆郎」の続編「ハイパーダッシュ!四駆郎」が連載を開始しました。

 2012年に再開したタミヤ主催のミニ四駆の全国大会「ミニ四駆ジャパンカップ」は毎年全国の15会場程度で実施され、2万~3万人が参加するミニ四駆の一大イベントとなっています。

「ミニ四駆ジャパンカップ」決勝が行われる江東区青海のMEGA WEB(画像:(C)Google)



 同大会の東京予選は、品川シーサイドフォレスト・オーバルガーデン、決勝は江東区青海のMEGA WEBなどで開催。今年は緊急事態宣言が解除される10月から開催を再開しますが、毎年、参加者には親子が多くみられます。

コロナ過で増えた「父と子の時間」

 近年、ブーム時に整備された全国のミニ四駆サーキットを利用する人も増えているようです。今回、新しいミニ四駆漫画の連載開始によって、このブームがさらに拡大していくことが期待されるところです。

 ミニ四駆が注目されるのには、コロナ禍も影響しています。

 新型コロナウイルス感染拡大防止の外出自粛によって家族が一緒にいる時間が長くなり、ゲームなどをしてみんなで遊ぶ家族が増えました。特に普段は顔を合わせることが少ない父親がテレワークで自宅にいるため、父親と子どもの関係性が深まったと言えます。

 父親と子どもの遊びというと、父親は自分の好きなものを子どもにも好きになってもらいたいと考え、さらに子どもに何かを教えたい、格好いいところを見せたいという意識も働きます。

 一方で父親世代となる現在の30代~40代の男性は、ゲームやプラモデルなど国内でポピュラーな趣味文化の成長期に子ども時代を過ごしており、何らかの趣味にハマった人も多いことでしょう。

ミニ四駆に熱中する子どものイメージ(画像:写真AC)



 今回のコロナ禍では、父親と子どもの遊びとして、家の中でできるゲームや模型といった趣味分野が人気を呼びました。共通の趣味とするためには息の長い趣味が適しています。まさにミニ四駆もそのひとつと言えるでしょう。

 ミニ四駆はオンラインで商品を購入できるため、外出自粛中でも購入して組み立てたり、走らせたりすることができます。また、販売店の他にも都内にはメーカーのフラッグショップ「タミヤ プラモデルファクトリー 新橋店」(港区新橋)があり、豊富な品ぞろえで希少なパーツも手に入ります。

在宅で「時間増えた」男性47.3%

 都心立地なので、父親が会社帰りに立ち寄ることが可能でしょう。同店では親子教室などさまざまなワークショップも開催されています(現在はコロナの感染拡大状況により開催していないこともあります)。

 さらにこの先、父親と子どもの絆を深めていくと考えられるのが男性の家事・育児参画の拡大です。

 東京都が調査した「男性の家事・育児参画状況実態調査」によれば、新型コロナウイス感染拡大以前と比較してコロナ禍では、平日の在宅時間のうち仕事以外(家事、育児、趣味、睡眠など)に使える時間の変化は、増加した人が男性で47.3%、女性で32.4%。

 特に男性で1~2時間、2~3時間増加した人が見られます。

2021年9月24日に発表された「2021年度男性の家事・育児参画状況実態調査(速報版)」(画像:東京都男女平等参画課)



 その増加した時間のうち育児にかける時間の変化は、増加した人が男性で88.1%、女性で58.9%であり、特に男性で増加が顕著になっています。コロナ禍で父親の育児参加が加速したと言えるでしょう。

 前回の調査では、男性は家事・育児への参画に肯定的な人が多く、育児に良いイメージを抱いている人が多いという結果が見られました。男性は子どもと過ごす時間を前向きに楽しみたいと考える傾向も見られ、父親と子どもで遊べるレジャーのニーズは拡大すると考えられます。

親子のコミュニケーションにも期待

 現在はレジャーやエンターテインメントが多様化しているため、ミニ四駆もかつてのようにクロスメディアで大きなブームにはならないかもしれません。

 しかし、父親と子どものコミュニケーションツールとしての機能が期待でき、コロナ収束後は親子でワークショップやレースイベントに参加する楽しみもあります。

そろってミニ四駆に没頭する親子のイメージ(画像:写真AC)



 父親と子どもの関係性が深まるような新たな形での展開が期待されるところです。興味のある人はぜひミニ四駆に触れてみてはいかがでしょうか。

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