飲食店で無料はもう古い? お金を払ってでも飲みたい「プレミアム茶」とは何か

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飲食店で無料はもう古い? お金を払ってでも飲みたい「プレミアム茶」とは何か

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有木真理

ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員

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飲食店で飲むお茶というと、「無料でもらえるもの」というのが一般的なイメージ。しかし現在、お茶の「プレミアム化」が進んでいると、ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の有木真理さんは指摘します。一体どういうことなのでしょうか?

コーヒーや紅茶はお金を払うけど

 お茶といえば、日本人にとって大変なじみ深い飲み物であり、日常生活になくてはならないものと言っても過言ではありません。

 このお茶が今、ちまたでどのようなムーブメントを起こしているのか? お茶に対する意識調査やお店の事例とともに、今後のお茶の可能性について語っていきたいと思います。

 日本でお茶といえば「日本茶」が主流ですが、外食シーンにおいて日本茶は無料で提供されることが多く、コーヒーや紅茶に比べて「お金を払って飲む」イメージの弱い飲み物ではないでしょうか?

 この消費者心理について、ホットペッパーグルメ外食総研で調査したところ、やはり予想通りの結果となりました。

日本人になじみ深い緑茶(画像:写真AC)



 お茶が外食シーンにおいて「無料で提供されるイメージがある」と答えた消費者は約8割。すし店の「あがり」や居酒屋、和食店などを中心に「熱いお茶をください」と言えばお茶を無料で提供されることが多くなっています。

 このようなシーンは誰もが1度は経験したことがあるのではないでしょうか? 中には、コーヒーを有料で注文すれば、飲み終わった頃に熱いお茶を無料提供してくれる喫茶店もあるほど。

 一方で、「プレミアムなお茶であればお金を払ってでも飲みたい」と答えた消費者は3割も存在します。また「プレミアムなお茶であれば、1杯のお茶に501円以上払う」と回答した人は約1割も存在するのです。ここに「無料で提供されることの多いお茶」が日の目を浴びる可能性を大いに感じています。

 では、お金を払ってでも飲みたい「プレミアム茶」とは、どのようなお茶なのでしょうか? ここからはそのヒントとなりうる事例をいくつか紹介していきます。

ボトル1本5000円の超高級お茶も

 まず、ひとつめはまさに「プレミアム化」です。

 ホテルの和食レストランなどでも最近目にする、1本5000円ほどもする木箱に入った超プレミアム日本茶「玉露ほうじ茶 香焙(かほ)」などがそれです。

木箱に入った超プレミアム日本茶「玉露ほうじ茶 香焙(かほ)」(画像:ロイヤルブルーティージャパン)



 まるでワインのように、お茶ペアリングという形で提供するレストランも東京都内には登場しています。

 コース料理に合わせて、複数のお茶を提供することで、ひと皿ひと皿の料理とお茶のマリアージュを楽しめる――。お酒が飲めないお相手との接待やデートシーンでお薦めすれば、相手の満足値も上がるのではないでしょうか。

 またお店側にとっては、ノンアルコールでも単価アップを図れる可能性が高くあります。このようなプレミアムボトルのお茶は外食シーンだけではなく、ホームパーティーへの手土産やちょっとした贈答品としてのニーズも高く、こなれ感を演出できるのです。

 ふたつめは「専門店化」することでお茶の付加価値を向上させているお店です。

 10種類のお茶と10種類のアルコールを掛け合わせ100種類のお茶割りを提供している居酒屋、その名も「茶割」(目黒区鷹番)。緑茶だけではなく、コーン茶、紅茶などさまざまなお茶を使い、オリジナルのお酒を提供しています。

 お茶は比較的カロリーを気にする必要のない、ヘルシーな飲み物という印象があります。またいろんな味を試したいという消費者心理によって杯数つい手が伸びてしまう、女性に大人気のお店です。

シャンプーもインテリアもお茶!

 三つめは、お茶をコンセプトにした「ホテル1899東京」と、併設のカフェ「CHAYA 1899 TOKYO」(港区新橋)。こちらは、宿泊者のチェックイン時に、フロントで茶釜を用いて煎(せん)じたお茶でおもてなしをしてくれます。

 そして部屋に入れば、シャンプーなどのアメニティー、インテリアなどすべてがお茶をコンセプトにしており、そのこだわりに驚かされるはず。

 レストランでの朝食やランチ、カフェもお茶フレーバーのアイテムを多数そろえ、どっぷりとお茶に浸れる施設です。

 四つめは、お茶を求めて旅をする「ティーツーリズム」です。これは、まるで海外でのワイナリー巡り、日本国内の日本酒や焼酎の蔵元めぐりのようにお茶を求めて旅をすること。

 お茶の産地として名高い静岡かいわいにも存在しますが、興味深いのは、佐賀県嬉野にある宿泊施設の体験型プログラム。

「ティーバトラー」なる専門家が存在し、ゲストが滞在中、こだわりのお茶を提供してくれます。また広大な茶畑を望む高台に設営された「天茶台」から、美しい茶畑を望むことのできる「茶空間」体験。生産者と語ることのできる「茶話(さわ)」など、多くの体験プログラムが存在します。

宿泊ゲスト1組にひとりのティーバトラー(茶師)が付く佐賀県嬉野のティーツーリズム(画像:「Tea tourism」サイト)



「学び」「ストーリー性」を取り入れたこちらのプログラムは大変な人気で、お茶を求めて九州まで旅をするという何とも粋な旅スタイル、筆者(有木真理。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員)も早く経験したくてなりません。

 以上ご紹介した四つの事例から考える、消費者がお金を出してでも楽しみたい「プレミアム茶」とは、どういったものでしょう。

ストーリー、学び、そして体験型

 おいしいお茶、希少価値の高いお茶を提供することはもちろん、産地や生産方法などのこだわり、希少性など、人に語り伝えたいストーリーがあり、今まで経験したことのない体験を通じて、新たな学びがあることが重要です。

 人々の知的好奇心をくすぐる「ストーリー性」「学び」「体験型」の三つがキーワードになるのでは? と考えます。

「お茶」はご存じのように海外でも注目を集めており、その人気は国内にとどまりません。特に茶葉を粉砕してすべてを摂取することのできる抹茶は多くの栄養素を取ることができでき、美容効果の高いジャパニーズスーパーフードとして欧米のトレンドリーダーたちに注目を集めています。

 また独特のほろ苦いフレーバーも人気で、アメリカで人気のスターバックスの抹茶フラペチーノが最も有名ですが、それだけではなく京都の老舗茶所「一保堂」がニューヨークに専門店を出して人気を集めています。

欧米でも人気フレーバーとして注目を集めるMATCHA(画像:写真AC)



 ヨーロッパでは、MATCHAは、チョコレートやマカロン、ケーキなどスイーツのフレーバーとして多くのパティシエが注目しているのです。

 このように国内外で注目されているお茶。

 最近は、「日本茶」専門のカフェなども増えてきているが、まだまだコーヒーや紅茶に比べると少ないのが現状です。日本人に古くから愛されるお茶の価値を再発見することで、さらにマーケット拡大の可能性を感じています。

 買い物などで街歩きをしているとき「休憩がてらお茶する?」などと声を掛け合うシーンは多いでしょう。その際、まさにその名の通り、コーヒーや紅茶だけではなく、本当に「お茶する」シーンが増えるのではないでしょうか。

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