CD売上枚数の代替策 現代の音楽チャートは「ヒットの実態」をどこまで反映できている?

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CD売上枚数の代替策 現代の音楽チャートは「ヒットの実態」をどこまで反映できている?

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村上麗奈

音楽ライター

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SNS発の大ヒット曲が誕生するなど、音楽の聴かれ方・支持のされ方が目まぐるしく変化するデジタル時代。人気の指標となる音楽チャートの集計の仕方も変化しています。昨今のランク付け方式のメリット・デメリットについて、音楽ライターの村上麗奈さんが分析します。

音楽ヒットを担い続けてきたCDショップ

 東京都内に11店舗を構える大手CDショップチェーン「タワーレコード(TOWER RECORD)」。CD不況と言われて久しいなかで、ゲストを招いた店頭イベントや、アーティストの手書きPOPを展示するなどして誘客を図っています。

 とりわけ旗艦店である渋谷店(渋谷区神南)は、ツイッターでイベント情報などを頻繁に投稿することで、2021年9月25日(土)現在23.4万ものフォロワーを誇っています。

 タワーミニ汐留店(港区東新橋)は、ジャニーズの人気グループA.B.C-Zの“推し”というスタンスを前面にすることで、ファンたちの間で「聖地」と呼ばれるまでに。しかし、惜しまれながらも2021年3月に閉店しました。

渋谷区神南にあるタワーレコード渋谷店(画像:写真AC)



 かつて人気アーティストの新曲発売日となればファンが店頭に列を作ったCDショップですが、楽曲視聴の主流がインターネット上のストリーミングやYouTubeへ移行したことにより、苦戦を強いられる状況が続いています。

 各楽曲の人気度合いを測る絶対的なバロメーターだった「CD売り上げランキング」も、取り上げるメディアはかなり少なくなりました。代わって人気の指標とされているのが、CD販売だけでなくストリーミング再生やダウンロード、ラジオオンエア、カラオケ歌唱の回数などを合算した総合チャートです。

 こうした新たな指標によって、2020年にはYOASOBIの「夜に駆ける」が、Billboard JAPANで年間チャート発表開始以来初めて「シングル盤をリリースしていない曲」として総合首位を獲得しました。

前年のヒット曲がランクインし続ける状況

 さて、以前寄稿した記事(2021年7月10日配信)で、2021年は少なくとも上半期までは2020年のヒットの構造を引きずっているように見えることについて言及しました。

 ここ数年の間に大ヒットしたLiSA、YOASOBI、BTS、Ado、Official髭男dismといった面々は、今や新譜が出れば上位にランクインし話題になるだけではなく、今なお旧譜が各チャートにランクインし続けています。

 人口に膾炙(かいしゃ)した大きなヒットは、極めて長いものになるケースが増えています。

「2021年8月度dヒッツアーティストランキング」で2021年1月から8か月連続の1位を獲得し、同ランキングでの最長記録を達成したYOASOBI(画像:レコチョク)



 もちろん、ランキングを構成するのは大ヒットによって見慣れたアーティストだけではありません。ここ2年ほどTikTokで話題になったことによって突発的な人気を得たといった、注目株のアーティストも多くランクインするようになりました。

 各ストリーミングサービスによってランキングの色は異なります。

 例えば、LINE MUSICは他のストリーミングに比べ学生の利用者が多いため、若い世代が利用層の中心であるTikTokでのヒット曲が他よりも目立つ傾向にあります。

情報から「実用物」へと進化したランキング

 それぞれのストリーミングには、チャートを閲覧できるページやチャートのプレイリストが掲載されています。さまざまなプラットフォームによって音楽シーンが形成されている今でも、その指標としての役割を果たしているのはチャートです。

 CDの売り上げが音源の売り上げの主だった時代、チャートの注目度が今以上に高かったのは言うまでもありません。その週のランキングを元にして構成されるテレビの音楽番組も多く存在しました。

CD全盛の時代には、CD売り上げランキングを元に構成される音楽番組も数多く放送された(画像:写真AC)



 今、音楽番組の数自体が減少していることもあり、以前ほどテレビなどでランキングの紹介を目にすることはなくなったかもしれません。

 しかし、ストリーミングなどを利用している人にとっては日常的に目に入りやすいはずです。

 ランキングを順位通りに再生(視聴)することも簡単になり、ランキングは単なる情報から実用するものへと変化しているように感じます。

 とはいえ、さまざまなヒットの形が存在する今、数字の集計した結果を一律に並べるチャートは、少なからぬ弊害もはらんでいるとも言えるのではないでしょうか。

一律の「順位付け」が反映しきれない側面

 たとえ同じランキングに名を連ねていても、ランクインに至る理由や背景はそれぞれ異なります。

 知名度が高く、新曲がリリースされれば必ず聴く固定ファンのいるアーティストと、TikTokなどで注目を浴び、若者など特定の世代に何度もリピート再生されるようになった曲とでは、ヒットの背景、いうなれば“出自”が全く異なると言えます。

 また、メジャーアーティストと同じようにインディーが活動できるようになった現在においても、両者が全く同じリスクやコストで活動できるとは限りません。

 ネットの存在によって誰もが気軽に活動を始められるとはいえ、つまり実力があれば発信の仕方次第で拾われる可能性も大きくなっているとはいえ、後ろ盾があるかないかの問題は、目指す場所への現実味やコスト、メンタルなどの面で大きく異なるでしょう。

 アーティストによって、メディアに積極的に露出するかどうかの選択も異なります。メディア露出などを目標としていないケースもあるのです。

かつてないほど多様化した音楽活動の在り方

 このように、ネット時代になり、音楽活動をするための土壌やおのおののゴールは、かつてとは比べものにならないほど多様化しています。そうした状況下で各楽曲をランキングに並べることは、「数字での評価の存在感」が大きくなり過ぎてしまうという側面をはらんでいるとも考えられます。

 ランキングはリスナーにとって新たな楽曲に出合うきっかけにはなるかもしれませんが、そこに過大な価値を見出すのは今の時代には向いていないのかもしれません。

 とはいっても、プレイリストが組まれたりストリーミングのトップページに表示されたりという形で、チャートの存在感はより大きくなっています。

 CD売り上げランキングは、一般的なリスナーの肌感覚とかけ離れてしまったという理由で「崩壊した」などとも言われましたが、ネット時代のランキングも、ヒットのあらゆる側面をキャッチアップできているかどうかについては慎重に考える必要がありそうです。

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