東京の実態を知る手掛かりに! 膨大なネットニュースから「良い記事」を見分ける3つの方法

数えきれないほどの記事が日々アップされるインターネット。そこには当然、良い記事、そうではない記事が混ざっています。読むべき記事とはどのようなものか? また書き手は何を意識して執筆をすべきか? メディアウォッチャーの本多修さんの解説です。


1億総ライター時代の注意点

 SNSというツールが発達した今、誰もが気軽に「記事」を書き、発信できるようになりました。

 以前は、記者という肩書を持つ者は主に新聞社や雑誌、テレビの報道局などに所属し現場を取材する人に限られていましたが、今では多くのネットユーザーが自筆の記事をアップし、ライターを名乗るようになりました。

 インターネット向けの記事を中心に書く、いわゆるウェブライターの人数は格段に増加し、仕事を発注するメディア編集部側からは“玉石混交”と戸惑いの声も聞かれます。

さまざまな記事があふれるインターネットのイメージ(画像:写真AC)



 ネット記事に触れる読者も、無数の記事を目にする中でどのような記事が良いもので、どのような記事はそうではないのか、見極めの基準を知っておきたいところです。

 逆に言えばその基準を知ることで、ライターを志す人にとっても、クオリティーの高い記事執筆に近づくことができるのです。

書き手に必要な「3つの心得」

 最近「取材できる人が少なくなっているね」という話をメディア関係者からよく聞くようになりました。実際、さまざまなネットニュースを読んでいると、ちゃんと調べて書いているのか首を傾げる記事に出合うことが多々あります。

 ネット上の記事はしばしば、自宅にいながら座ったまま書けるという意味で「こたつ記事」と揶揄(やゆ)されることがあります。

 しかし、記事を書いている本人にとって「これは取材して楽しい」「伝える意義がある」という率直な思いを感じられる記事でこそ、その熱量を読者と共有することができるのではないでしょうか。

 そこで、今回は東京での取材歴の長い筆者が「東京ネタ」をどう調べ、どう書いているかを紹介します。読者の立場の人も、ネット記事を読む際の参考にしていただければと思います。

1. 新聞を毎日欠かさず読む

 東京ネタを探す上で、まず欠かせないのは毎日、新聞を読む習慣です。これは一般的な週刊誌やテレビの報道記者も同様です。

 新聞では毎日あらゆるジャンルの膨大な情報が扱われるため、記事はいかに簡潔に出来事を掲載することに重きを置いています。

 例えば、新しい町おこしを取り上げる記事があるとします。新聞では、そのイベントがいつ開催されるか、どういう趣旨なのかを簡潔に記して、関係者の短いコメントが掲載されるのが定番です。

 しかし、簡潔であればあるほど、気になる点が多く出てきます。そのイベントの目玉は何なのか、このコメントをしている関係者はどういう思いで立ち上がったのか……などなど。興味を持てば、もっと知りたい疑問が湧いてきます。

書き手として欠かせないネタ探しのひとつは、日々新聞に目を通すこと(画像:写真AC)



 そんなとき、書き手であれば「取材させてください」と相手を訪ねて、より読者が知りたいことを記事として伝えることができます。ですので、新聞のベタ記事に目を通すことは欠かせません。

 できることなら、全国紙4紙 + 地方紙(東京の場合は『東京新聞』)に目を通すのがベストです。しかし全てを自分で購読していると料金もばかになりません。そこでおすすめなのは、新聞の充実した喫茶店を近くに見つけることです。

 今風のカフェに押されて数は少なくなっていますが、東京では町に1~2軒はそうした喫茶店が残っています。毎朝、コーヒーで目を覚ましながら新聞を読むことを習慣づけると「これは、ちょっと詳しく話を聞きにいこう」というネタがいくつか見つかるのです。

2. 図書館へ足しげく通う

 続いて、東京ネタを書く上で欠かせないのが図書館の活用です。

 東京の各所で行われているお祭りや風習、地名の呼び方などなどさまざまな情報はネットを検索すれば概要を知ることはできます。ただ、ネットを検索して得られる情報はごく限られていて、浅い情報を基に記事を書けば途端に読者に見破られます。

「古くから続く伝統の祭り」と1行書くだけなら誰にでもできます。書き手であれば、その奥に分け入っていくことが必要になります。

 例えば、神田明神(千代田区外神田)の神田祭といえば東京はもちろん日本を代表する祭りとして知られています。

知られざる“伝統”を秘めた神田明神(画像:写真AC)



 勇壮な神輿(みこし)を担ぐ祭りを「伝統」と書くのは簡単です。しかしこの伝統は意外に新しく、江戸時代には山車(だし)で行われていたのが、明治以降に都市化で電信柱などが増えたために神輿に代わったものです。

 そして、今でこそ「江戸三大祭」として語られますが、江戸時代は必ずしもそうではありませんでした。

 現在、神田明神の氏子地域になっている日本橋かいわいでは、牛頭天王(天王祭り)のほうが重視されていました。江戸時代のスケジュールでは6月初めに天王祭が始まり、一の宮から三の宮までの祭りが終わり、続いて日枝神社の例大祭、そして9月に神田祭という流れ。その間に地域の氏神様のお祭りもあります。

 この話は、図書館で「神田祭はいつから江戸三大祭になったのか分かる資料を探している」と相談して、知ったものです。

 都内の図書館は、どこも地域資料を収蔵していますが、こんな情報が次々見つかる宝庫です。ですので、単に利用するだけでなく図書館の人と仲良くなるとさらに楽しくなるはずです。

 今は、指定管理者制度で外注が進んだことにより少なくはなりましたが、どこの図書館でも地域資料に非常に詳しい司書が必ずいます。そうなると資料を探している合間の雑談で「実は、昔はこうだった」とか「こんな出来事があった」などなど新発見が次々と飛び出してくるのです。

3. 地域を歩き、人に話を聞く

 そして、地域の人に話を聞くことは欠かせません。そうすることで、生の声を記事に反映することはできます。また、資料では文字で記されるだけの情報が実際にはどんな経緯があったか書いていないことまで知ることができるのです。

 例えば、昔の町名が現在の町名に代わる経緯を訪ねて歩くと興味深い話を聞くことがけっこうあります。

その土地に住まう人に話を聞くと、まだ誰も知らない情報に接するチャンスを得られることも(画像:写真AC)



 住居表示で伝統的な町名が消滅したことは、どちらかというと歴史的な町名が消滅したネガティブな出来事として捉えられがちです。

 ですので「町内会で論争になった」といった証言を聞くこともあるのですが、一方、少なくない地域で「新しい町名のほうがシンプルで分かりやすいから、ぜひ変えよう」と満場一致で伝統的な町名をやめることにしたという話にもよく出合うのです。

 こうした証言をどうやって見つけるか? 方法はいたってシンプルで、その周辺を歩いている人に「このあたりの古いことに詳しい人はいませんか?」と声を掛けるだけです。

 10人くらいに声を掛けると、ひとりくらいは「あそこの家の人」と教えてくれます。たいてい趣味で地域の歴史地理を調べているような方ですので、こちらが知りたいことの10倍くらいは教えてもらえます。

 筆者が今、気になっているのは、かつて中央区の晴海団地ではふ頭に入港する外国船の乗組員が小遣い稼ぎに物を売りに来ていたという話です。

 こうやって積み重なっていくネタ探しや取材。皆がまだ知らないネタや情報を調べて発信することで、ネット記事のクオリティーが上がり、読者の知識欲をくすぐることにつながるのではと考えます。


【調査】テレビ、新聞、ネット……信頼できるメディアは?

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