難関私大なのに大学群とは無縁! 独自入試で有名な「国際基督教大学」とはどのような大学なのか

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難関私大なのに大学群とは無縁! 独自入試で有名な「国際基督教大学」とはどのような大学なのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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ミッション系の都内難関私大として知られる国際基督教大学。にも関わらず、教育内容は思ったよりも知られていません。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

創立は戦後も高い知名度と難易度

 東京都内の有名なミッション系大学といえば、日本初のミッションスクールとして知られる明治学院大学(港区白金台)や青山学院大学(渋谷区渋谷)、上智大学(千代田区紀尾井町)、立教大学(豊島区西池袋)です。これらの大学は明治期から大正期にかけて創立され、歴史があります。

 そうしたなかでも異彩を放つのがICUこと国際基督教大学(三鷹市大沢)で、創立は1949(昭和24)年。戦後、キリスト教関係者が主導して生まれた大学です。大学開設は4年後の1953年で、知名度・難易度ともに高いものの、他のミッション系大学に比べれば歴史は意外なほど浅くなっています。

三鷹市大沢にある国際基督教大学(画像:(C)Google)



 それにも関わらず相応の地位を得ているのは、建学当初から少人数制を採用し(2021年度の学部生は2934人)、本場アメリカのリベラルアーツ教育(実用的な目的から離れた教養)を忠実に実践。国際人を育成する方針をぶれずに行っているためです。

 また、設立準備委員会の名誉総裁に高松宮宣仁親王が就き、ときの日本銀行総裁が資金確保に尽力。大学設立に向けて設置された国際基督教大学財団の名誉理事長に、連合国軍総司令部(GHQ)最高司令官のダグラス・マッカーサーが務めるなど、設立時に大物が関わったことも大学に箔(はく)をつける形となりました。

 広大な大学の敷地は、戦時中に「東洋一の航空機メーカー」と知られていた中島飛行機の研究所跡地です。ある意味、戦後日本の教育方針の転換を体現する象徴的な存在であるといえます。

他大学と一線を画す入試と学部構成

 さて、有名私立大学の大学群として有名なものに、

・早慶上理(早稲田大学、慶応義塾大学、上智大学、東京理科大学)
・MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)

があります。

 ところが、国際基督教大学は難関大学にも関わらず、ほとんど大学群にくくられることがありません。これは同大の独特な入試方式や学部構成が理由だと考えられます。

 募集人員が最多である一般入試A方式では3科目が課せられます。「英語」と歴史や政経、倫理的な内容を含む「総合教養(ATLAS)」、そして「人文・社会科学」「自然科学」から1科目を選択する方式です。

 受験生が持つ知識や学力を測るため、英語以外は複数の科目を融合しています。こうした入試科目だと、入試対策をすることが難しく、併願校として気軽に選べません。

緑に覆われた国際基督教大学(画像:国土地理院)



 前述のとおり、国際基督教大学はリベラルアーツ教育を行うため、学部学科を設けておらず、全入学生が教養学部アーツ・サイエンス学科に属します。一般的な大学入試のように、学部ごとの試験は学部学科に出願することがないのです。

 入試や学部構成など、他の大学とは明らかに違う特色を持っていることもあり、「ミッション系だから上国」など簡単に大学群に含むことができません。

リベラルアーツ教育のメリット

 近年、日本の大学でもリベラルアーツ教育が重視され、複数の大学では学部開校もしています。

 低学年時から専門性に特化しすぎると身に着けるべき教養を学ぶ機会を失うい、偏った考えを持つことが危惧されています。また、社会でさまざまなバックグラウンドを持つ人たちと働くときは多様性を認めなければなりません。

国際基督教大学の最寄り「武蔵境駅」(画像:(C)Google)



 リベラルアーツ教育を通して自分の専門分野を決めていくメリットとして、目的の見つからない学生が「本当に学びたいこと」を見極められることがあります。

 現在は1、2年次に幅広い分野を学びつつ、2年次の終わりに、理系文系合わせて31あるメジャー(専修分野)のなかから選択します。

 同大は自ら学ぶ姿勢が強く求められるため、「なんとなく」で入学した学生は遅かれ早かれ挫折するでしょう。

注目を浴びているなかで

 近年では学問に直接関係のないところで名前が取り上げられることの多かった国際基督教大学ですが、少人数制によって得られる幅広い教養、豊富な留学プログラムや国際交流などはもっと広く知られる価値があります。

国際基督教大学のウェブサイト(画像:国際基督教大学)



 コロナ禍で混沌(こんとん)として課題山積の社会では、特定のジャンルにとらわれない広い視野を持つ人材が必要になってきます。

 そんななか、国際基督教大学が建学以来取り組んでいるリベラルアーツ教育の重要性は今後さらに増し、そうした教育を受けた学生たちの活躍の場はさらに増えていくと考えられます。

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