接客業に「名札」は必要? 身バレ・住所特定・SNSストーカーの可能性、被害懸念の声も

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接客業に「名札」は必要? 身バレ・住所特定・SNSストーカーの可能性、被害懸念の声も

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鳴海汐

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コンビニやスーパーなどの店員が必ず身に着けている「名札」。利用客に親しみや信頼感を抱いてもらうためといった効果がありますが、一方で珍しい名字の場合は自宅住所や出身地、SNSなどの特定につながってしまう恐れもあります。仕事で本名を名乗る必要はあるのか? ライターの鳴海汐さんが課題点と解決策を探ります。

全国から人が集まり、さまざまな名字がひしめく東京

 東京都の統計によれば、都内の労働力人口は833万人(2021年1~3月平均)。その多くが同僚や取引先、そして客といった他者と関わりながら働いています。

 職種によって、お互いの名前を把握していたり、自身の名前を提示するだけであったり、逆に自身の名前を知らせることなく相手の名前を知るだけの場合もありますが、その中で接する名字はどれほどあるのでしょうか。

 早稲田大学(新宿区戸塚町)社会科学総合学術院の笹原宏之教授によれば、日本人の「姓の種類は10万種をはるかに超えて」いて、「『佐藤』『鈴木』が多いといっても、それぞれ人口の2%にも及ばない」ほどバラエティーに富んでいるのだそうです(『早稲田ウィークリー』、2018年6月22日付)。

 東京都内に暮らす人の約45%が他の都道府県出身であること(第8回人口移動調査、2016年)を考えると、全国からさまざまな名字の人が、珍しい名字の人が一番集まっているエリアと言っても過言ではないでしょう。

 近年は国際化が進んでいるので、他国の名字もここに加わっているはずです。

珍しい名字はアドバンテージなのか

 一般的なビジネスのセオリーからすると、珍しい名字は相手に一発で覚えてもらえることが多く、営業職などでは強みになると考えられています。

 覚えられる前のステップでは、名字を口頭で伝えれば聞き返されることが多く、また文字として見せたときに字面が珍しければ読み方を質問されます。珍しい名字というのは、その両方である場合が往々にしてあります。

 そういったコミュニケーションが盛り上がることもあり、より名前を覚えてもらいやすいのですが、毎回あって面倒なのもたしか。

 珍しい名字を持つ人のさらなる悩みは、身元が割れやすい、いわゆる“身バレ”しやすいことでしょう。場合によっては家族や親せきと結び付けられてしまうこともあります。

珍しい名字を持つ人は、自分の身元を特定されてしまうというリスクも抱えている(画像:写真AC)



 東京という都会に暮らしていても、「地域 × 名字」の情報を組み合わせると、一軒家の場合は表札で家まで分かってしまうことは、あり得ること(今の時代、表札が必要なのかも筆者は疑問に思っています)。これはそこまで珍しい名字でなくても当てはまります。

 家が特定されないにしても、名字で住んでいる地域が分かってしまうこともあります。首都圏といえども代々住み続けている古くからの土地には頻出の名字があり、名字でどの辺りに住んでいると察しがつくこともあるのです。

本名を晒したくない!

 こうしてみると、フルネームに限らず名字だけでも、名前というものはたくさんの情報を持った『個人情報』なのだなとあらためて感じませんか?

 特に、接客業など不特定多数の人と接している人は、そういった思いを強く抱いているのではないでしょうか。

 ネットで「接客業 名札」と検索すると、「嫌」「偽名」の関連ワードが表示されます。

名札に表記した名前を検索されて、FacebookなどのSNSで「友達申請」が来たといった例も(画像:写真AC)



 書き込みを見ると、来店客が自身の名前をSNSで検索し、友達申請があったとか、ストーカー被害にあったという声が少なくありません。

 珍しい名字の人は特定されやすいだけに、より辛さを感じていることでしょう。

 朝日新聞DIGITALの記事によると、SNSでの被害に遭ったことなどから、2019年当時の数年前から、フルネームを表示していた名札を名字のみに変えた企業が多かったそうです(2019年9月26日付)。

仕事用の名前を使う

 同記事で書かれていたことですが、建設機械のレンタル大手レンタルのニッケン(千代田区永田町)は1987(昭和62)年に「プロ意識を高めるため」、『芝桜一子』『俊足太郎』といった業務内容を連想させる偽名の導入をしていたそうです。

 日本では古くから芸名、源氏名、ペンネ―ムなど特殊な仕事で使われている偽名。しかし少し前からカフェやコンビニなどの接客業でニックネームだけでなく偽名を取り入れているところがあるようです。最近は外資の企業のカスタマーサポートで、偽名と思われるところがありました。

 仕事上で名前を出すのは、「信用のため」「親しみやすさ」などが理由と言われます。一理あるのは分かりますが、利用者にとってそれが本名かどうかは全く関係ありません。その名前からイメージするものがあったとしても、それは単なる個人的な反応です。

 薬局(ドラッグストア)などは、フルネーム、場合によっては名字のみの表記が医薬品医療機器法(旧薬事法)で定められているとのことですが、利用者視点では、通常は担当者の名前は特に気にしておらず、問い合わせする際に必要になるくらいです。

職業によっては名札を付ける必要があるケースも(画像:写真AC)



 区別のため、便宜上なので、それが本名でなくとも一向にかまわないのではないでしょうか。

 個人的には、役所の公務員、警察官、検事、弁護士、裁判官、医者といった、場合によっては逆恨みされやすい職業こそ、安全のために仕事用の名前が必要なのではないかと考えます。

本人確認さえできれば

 ひいては、接客など外部の人と接しない職業であっても、仕事の上で本名を使う必要はないのでないかと考えます。

 情報通信技術(ICT)や検索ツールが高度に発達した今、名前においても、仕事とプライベートを切り離すことがすでに必要な時代となっているのではないでしょうか。

ホテルなど接客業に従事する人は名札の着用が一般的だが……(画像:写真AC)



 そうなってくると、学校もプライベートではなくパブリックな場であるのでは? と考え始めることになり、いったい名前とは何かという大きなテーマに迷い込みます。

 名前の問題といえば、現在は夫婦別姓が認められていないために、心情的な問題もありますが、主には女性の名義の書き換えなどの事務的な不便さが言われています。

 本人の証明は、こんなときこそのマイナンバー活用ではないでしょうか。本名を変えるにしても変えないにしても、仕事上や家庭用の名前を簡単に登録できて、番号でしっかり本人だと証明できる――。そこまで非現実的でもないように感じます。

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