20代の「貯金意識」に男女差あり――熱心なのはどっち? なぜ貯めているの?

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20代の「貯金意識」に男女差あり――熱心なのはどっち? なぜ貯めているの?

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橿村芽久未

TesTeeトレンド分析担当

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10~20代を対象にした消費意識や価値観に関する調査で、「お金を掛けるもの」や貯金の状況に男女差が表れました。今どきの若者は何にお金を使っているのでしょうか? TesTeeトレンド分析担当の橿村芽久未さんが独自の調査でひも解きます。

ブランド偏重から「共有」の時代へ

 東京はじめ全国の若年層を対象に調査分析を行っている「TesTeeLab」「それ、わたし調査します」(運営・テスティー、中央区日本橋兜町)のアンケート結果から、最新のトレンド動向を探る連載。今回のテーマは10代、20代を対象に行った消費意識や価値観に関する調査をもとに「ブランドに価値を感じるか」「お金をかけても良いと思うものは」など、10代20代男女価値観にフォーカスした調査の結果をご紹介します。

※ ※ ※

 1980年代、日本国内では国内アパレルメーカーによる高級ファッションブランド、いわゆる「DCブランド」が流行し、社会的ブームと言われました。舞台は原宿・渋谷・青山といった東京の流行発信地。ラフォーレ原宿や渋谷パルコは、ファッション好きの若者たちの“聖地”となりました。

現代の10~20代は何にお金を使い、何のために貯金をしているのか?(画像:写真AC)



 身に付けるものは満足感や優越感をもたらすようなハイブランドが良いとされ、ブランドステータスに重きが置かれた時代。当時は社交の場も多く、商品自体の価値以外にも「流行」という判断基準が消費行動を左右していたのです。

 一方、現代の若者はインターネット世代特有とも言える「共有」の概念が進んでいます。これはオンライン上の情報共有にとどまらず、今ではシェアハウスやシェアリングサイクルなど、シェアリングエコノミーの概念はオフラインにも浸透しつつあります。

 世の中がいいと言っているものや価値を疑って、それに振り回されないような「エコ」の感覚が強く、ブランドものや高級車など、ひと昔前に「いい」とされていたステータスには興味を示さず、自分が強く興味を持つものに消費行動を触発される合理性が見られます。

 多くの情報があふれている中では「流行」にのっとりモノを「所有」するよりも、「自己」を確立して体験を「共有」することが近年のキーワードになっているのです。

「自分に合うもの」求める若者

「消費意識や価値観に関する調査に関する調査」は2021年2月19日(金)~2月28日(日)、10~20代の男女1239人(10代男女601人、20代男女638人)を対象に行いました。

 まず、ブランドネームについて、考えに近いものをお選びくださいと聞きました。「ブランド価値があるものが欲しい」と回答したのは10代男性で18.0%、10代女性で13.0%、20代男性で16.4%、20代女性で11.4%と、いずれも10%台にとどまりました。

 反対に「ブランド価値よりも自分に合っているものが欲しい」という回答は10代男性で58.7%、10代女性で70.4%。20代男性で48.7%、20代女性で66.1%と多数派となりました。

10~20代の男女1239人に対し行った調査の結果(画像:テスティー)



 続いて、「お金をかけてもいい(もしくはかけたい)と思うもの」を聞きました。

 10代男性の1位は「本・雑誌・マンガ」が約半数、「食料品」「服飾品」は3割程度となりました。10代女性の第1位は「服飾品」、次いで「コスメ・美容品」、「本雑・雑誌・マンガ」となりました。

 男性に比べて、女性は「お金をかけてもいい」と思うもののジャンルが広く、割合が高い傾向が見られました。

 そして20代男性の1位は「本・雑誌・マンガ」で37.4%、「服飾品」が22.6%、「食料品」は19.7%となりました。20代女性の第1位は「服飾品」「コスメ・美容品」が同率1位で39.0%、次いで「旅行・アクティビティ」、「食料品」となりました。

 20代女性では、10代のランキングには出てこなかった「旅行・アクティビティ」がランクインしました。

10~20代がお金を掛けているもの

 そこで、「集めているものや、こだわりのあるものはありますか?」と聞きました。10代では男女ともに約半数が「ある」と回答しましたが、20代男女では4割程度となりました。

「(集めているものや、こだわりのものが)ある」と回答した人を対象に、どんなものを集めたりしているのかを聞きました。その回答の一部を紹介します。

【10代男性】
・参考書、ゲーム(17歳男性)
・どんなものでもコストパフォーマンスを意識している(18歳男性)
・漫画は新品の冊子で買いたい(13歳男性)
・文房具、ガジェット製品(16歳男性)
・ゲーミング用品(14歳男性)
・服にはこだわりがある(17歳男性)

【10代女性】
・コスメ 本 アニメのグッズ(18歳女性)
・好きなアーティストのグッズ(15歳女性)
・本、パンフレット、CD(19歳女性)
・コスメは高くても良いものを買っている(19歳女性)
・物持ちのいいもの、体にいいもの、見栄えのするもの(18歳女性)

10~20代男性が「お金を掛けてもいい」と考えているのは本・雑誌・漫画が1位(画像:写真AC)



【20代男性】
・レコード(23歳男性)
・カード(20歳男性)
・キャラクターグッズや映画DVD(26歳男性)
・切手や古銭(24歳男性)

【20代女性】
・御朱印など、自分が好きな物を集める癖がある(26歳女性)
・コーヒー、マスキングテープ(23歳女性)
・アニメグッズ、化粧品(25歳女性)
・本 電子ではなく書店で買うようにしている(27歳女性)

 年代を問わず「好きなアーティスト・アイドルグッズ」などのエンタメ関連用品は多くあがりました。他にも男性は「ガジェットやゲーム用品」、女性は「コスメ」という回答が散見され、年代別では10代からは「文房具・参考書」などの勉強に使う道具が多くあがり、20代では男女ともに、CDや本(冊子)などアナログなアイテムが多い傾向が見られました。

シェアエコノミーにも積極的

 次に、「シェアリングエコノミー」について、ものや場所をシェアすることについてどう思いますか?と聞きました。

「とてもいいと思う/いいと思う」と回答したのは10代男性で52.0%、10代女性で55.2%、20代男性で42.9%、20代女性で47.1%となりました。「どちらとも言えない」ではいずれの年代でも男女ともに3割程度で、「あまりいいと思わない/全くいいとは思わない」と回答した人は10代男性で17.3%、10代女性で11.9%、20代男性で23.2%、20代女性で20.1%となりました。

 それぞれの選択者に自由回答で意見を聞いたので一部をご紹介します。

●「とても/いいと思う」回答者
・家に物が増えない(18歳男性)
・好きなことが共有できるから(19歳男性)
・ものを有効に使える ロスを減らせる(17歳男性)
・資源の無駄を省けるところ(19歳男性)
・買うのは高いから躊躇するという人でも気軽に手に取りやすそう(19歳女性)
・色んな物や場所をレンタルができてとても良い(25歳男性)
・節約(21歳男性)
・場所をとらない(28歳女性)
・誰かと色んな情報を共有するのは凄く良いと思います。誰かの情報を参考にしたりできるので(22歳女性)

●「あまり/全くいいとは思わない」回答者
・人が使ったものを使うのに抵抗がある(19歳女性)
・自分の物にならないところ(17歳男性)
・欲しいものはずっと自分のものにしたいから(16歳男性)
・マナー違反が多いと思うから(16歳男性)
・ものや場所は所持していたいと感じるから(26歳男性)
・自分のものとして大切に長く使いたい(26歳男性)
・コロナ等、衛生的に不安を感じる(25歳男性)
・マナーの悪い人もいるから(22歳女性)
・また誰かが借りるかもと思うと思い切って使えない(27歳女性)

 シェリングサービスに関して肯定的な人からは「価格・維持費が抑えられる」という金銭面のメリットや「資源の無駄を省ける」「モノを少なくできる」といったいわゆるミニマル志向な意見が散見されました。

 一方、シェアリングサービスに否定的な人からは衛生面やマナーへの懸念が多く、自分のものとして持ちたいという意見が挙がりました。

女性の方が貯金に熱心?

 最後に「現在貯金をしていますか?」と聞きました。

 男女ともに「(貯金を)している」が多数派となり、10代男性で61.0%、10代女性で66.1%、20代男性で61.6%、20代女性で70.9%となりました。

 貯金をしていると回答した人に「なんのために貯金をしていますか?」と聞きました。回答の一部をご紹介します。

【10代男性】
・将来のため(15歳男性)
・投資資金(14歳男性)
・大学の授業費や一人暮らしに備えてなど(17歳男性)

【10代女性】
・旅行に行くため ライブに行くため(16歳女性)
・将来まとまったお金が必要になった時のため(18歳女性)
・将来自立するため(18歳女性)

【20代男性】
・老後をかんがえているから(26歳男性)
・将来のため(29歳男性)
・子どもと夫婦の将来のため(29歳男性)

【20代女性】
・心の余裕、自信を持つため(24歳女性)
・子供の教育資金、老後資金(29歳女性)
・旅行と将来の安定(21歳女性)

 10代で多く挙がった「将来のため」という回答は20代でも多く挙がりました。一方、20代では「結婚」「子ども」「老後」などのキーワードが散見され、ライフステージの変化や自分以外の家族のために貯金をしている人が多い様子がうかがえました。

変化する若者の消費意識

 もともとあった「モノ」を所有することや流行を追うという価値観は、「コト」と呼ばれる体験や自身の満足や肯定感を高めることへシフトしていっているのではないかと考えています。

 かつて流行の発信源は、冒頭で紹介した原宿や渋谷など「場所(土地)」にと強力に結びついていましたが、今では「情報のプラットフォーム」から好きなものを取捨選択する時代に変わり、消費意識にも変化が表れています。

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