「もてる」は遊郭で生まれた言葉だった! 『鬼滅』ブームのいま振り返る

テレビアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』で注目の集まる台東区の吉原エリア。そんな同エリアで使われていた言葉のなかには、今でもメジャーなものがあるのです。

アニメで注目を集める吉原遊郭

 テレビアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』が2021年12月5日(日)から放送され、話題を呼んでいます。今回、放送前から注目されていたのが舞台の吉原遊郭です。

 吉原遊郭は江戸時代で唯一、幕府に公認された遊里でした。その始まりは1617(元和3)年、日本橋の葺屋町(ふきやちょう)に遊女屋を集めたこととされています。

 そこから約40年後。1657(明暦3)年に発生した明暦の大火によって、現在の台東区日本堤へ移転。その後、一大社交場として大いににぎわい、文化や情報の発信地となりました。

『江戸時代のすべてがわかる本』(ナツメ社)によると、吉原のような遊里では、独特な言葉が使われていたといいます。そのなかには、なんと現代で使われているものもあるのです。

 ということで、今回は私たちにとって身近な遊里の言葉を五つご紹介します。

1.もてる

 最初に紹介するのは「もてる」という言葉。皆さんも

「女性(男性)にもてたいなぁ」
「もてる人はいいなぁ」

など何気なく使っていると思いますが、実は遊里から生まれたといわれています。

「もてる」の文字(画像:ULM編集部)



 言語史研究者の杉本つとむさんの『語源海』によると、

「真意は、〈持てはやされる〉こと。遊女が客に好意を持ツ。客は遊女に好意をもって持テハヤサレル、すなわち、遊女に持テルコトが原義」

と解説されています。

 もてるは、遊女から持てはやされることから来ていたわけです。当時のもてる男性の基準はいろいろあったと思いますが、そのひとつは職業でしょう。

 江戸時代のもてる男の職業といえば、

・与力
・火消し
・力士

でした。

 与力は町人を支配する町奉行の下で、行政・司法の仕事に従事。火消しは「火事とけんかは江戸の華」といわれる江戸で、人の目にとまることが多かったのでしょう。そして力士は、「一年を 二十日で暮らす よい男」と川柳によまれるほどでした。

2.遣(や)り手

 現在、仕事がよくできる人を指して、

「あの人はやり手だ」

などといいます。しかしかつては「遊郭で客と遊女との取り持ちや、遊女の監督をする年配の女」(『デジタル大辞泉』)という意味でした。

 辞書には「遣り手」という表記で、どちらの意味も掲載されています。

「遣り手」の文字(画像:ULM編集部)



 ところで、現代社会のやり手な人にはどんな特徴があるでしょうか。求人情報サイト運営のビズヒッツ(三重県鈴鹿市)が、男女500人を対象としたアンケート調査「身近にいる仕事ができる人の特徴ランキング」を発表しています。その結果は次のとおり。

・1位:仕事・レスポンスが早い(102人)
・2位:コミュニケーション能力が高い(101人)
・3位:周囲への気遣いができる(98人)

 時代が変わっても、仕事は人と人の間で行うものですから、江戸時代であってもこれらの要素は不可欠だったのではないでしょうか。

3.あがり

 すし屋などで出される緑茶は「あがり」と呼ばれています。前述の『語源海』には、

「遊里や水商売の人の間で用いられた通語。ただし、明治以前の用例未詳」

と記載されています。

「あがり」の文字(画像:ULM編集部)

 あがりとは「上り花(あがりばな)」の略です。もともと、いれたての煎茶のことを「出端(でばな)」といいました。しかし客商売をする者にとって、「出る」はよくありません。そこで「出」を「客があがる」の「上り」とし、「端」も「花」に変えることで「上り花」としたのです。

 遊里とお茶に関連する言葉として、客にあぶれて暇にすることを意味する「お茶をひく」が挙げられます。水商売の世界だと聞く言葉です。こちらの言葉は、お客のいない遊女が、臼で茶をひく仕事をさせられていたことに由来するといわれています。

4.相方

 一般的に相方といえば、コンビを組むお笑い芸人がパートナーを指して使う言葉です。しかしこの言葉も遊里で使われていました。その意味を調べてみると、

「遊里で、客から見て相手の遊女」(『デジタル大辞泉』)

と解説されています。相方は、遊里の世界でも大事な相手を指す言葉だったのです。

「相方」の文字(画像:ULM編集部)



 ちなみに吉原で遊ぶにあたっては、守るべきしきたりが定められていました。まず遊女と対面するときは、客と遊女の仲介をする「引手茶屋」へ行き、遊女を指名して待機します。そして遊女が花魁(おいらん)道中で迎えに来る、という段階を踏みました。

 さらに初会、二会目、三会目と段階を踏むことで、ようやく「なじみ」と認められるようになっていったのです。

5.冷やかす

 商品を見るだけ見て買わない人を「冷やかしの客」といいます。この「冷やかす」という言葉には、

「遊郭で、登楼しないで遊女を見て回る」(『デジタル大辞泉』)

という意味があります。

「冷やかす」の文字(画像:ULM編集部)

 その由来は、江戸の浅草山谷(さんや)あたりの紙すき業者が、原料を水で冷やしている間、吉原を見て回っていたこと。そんな冷やかしのお客には、現代でも苦労している人が多いのではないでしょうか。見込み客と冷やかし客を振り分けるために、自社製品のターゲットやコンセプトの発信を求められている人もいるでしょう。

 一方、冷やかし客と勘違いして見込み客を逃してしまった、という苦い経験をしている人もいるかもしれません。客商売というのは、きっと今も昔も一筋縄では行きませんね。
※ ※ ※

 以上、遊里の世界で使われていた言葉には現代使われているものと共通する部分があります。それを念頭に置くと、創作で目にする遊里の世界も違って見えるかもしれません。

【画像】明治初期の吉原遊郭

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