都内クリーニング店でまさかのTシャツ「受付拒否」 理由を聞いたら妙にホッコリしちゃった話

東京で暮らし、働く男性たちは、日々何を見て何を思いながら過ごしているのでしょう。イラストレーターでライターのズズズ(zzz)さんが、自身の「何でもない今日」をイラストともに切り取ります。今回のテーマは「クリーニング店と家事代行」。


コーヒーのシミが付いたTシャツを

 都内でひとり暮らしをする私(ズズズ。イラストレーター、ライター)はたまに近所のクリーニング店に洗濯物を持ち込みます。

 その日はTシャツに付いてしまったコーヒーのシミ抜きをお願いしようと訪問したのですが、いつもの女性店員に「10年も着てるの? あなたTシャツでそれだけ長く着てたら、もう元は取れてるでしょう。このシミは取らなくて良し!」とバッサリと切り捨てられました。

コーヒーのシミが付いたTシャツをクリーニング店に持ち込んだところ、まさかの受付拒否?(画像:ズズズさん制作)



 クリーニング店で、持ち込んだ衣類を“受け取り拒否”されるとは。思わず面食らう私。しかし同時に、実はちょっとうれしいような温かい気持ちにもなったのでした。なぜかというと……。

それは、数日前の夕方の出来事……

 ときは遡(さかのぼ)ること数日前。

 平日仕事をしていると夕方頃に甘いものが欲しくなります。都内にあるオフィス1階のファミリーマートへ行くと、新たにセルフレジが導入されていることに気が付きました。

 試しに使ってみようと自分で商品ひとつひとつのバーコードを読み取って合計金額を確認し、支払方法を選択したのち購入。少し面倒だと思いつつも、今ではお昼どきなどの混雑する時間帯はこちらが空いているので便利だと感じています。

夜のベランダで物思いにふけったら

 帰り道、家の近くの量販店でも同じようにセルフレジが導入されていました。人件費削減やコロナ禍における非接触対応なのか、さまざまな理由から導入が進められているのだろうと思います。また自分でバーコードを読み取って翌朝のパンを購入しました。

 家に着いて部屋着に着替え、コーヒーを淹れる。冷蔵庫からアルフォート(ブルボンのチョコ菓子)を取り出してベランダに出る。春のちょうど良い気候の中、1日を振り返ったり、妄想がはかどったりするお気に入りのスポットです。

 セルフレジを思い返していると、最近の無人コンビニを想像して、そのうちレジは全部無人になるのだろうかと物思いに耽(ふけ)ってしまいます。

 昔はデジタル化などと言われたものですが、少し前から新聞ではDX(デジタルトランスフォーメーション)というワードをよく見るようになりました。

 DXは人手のかかる作業をデジタル技術で自動化・効率化しつつ、そこで取得したデータを活用して会社の業務や普段の暮らしを便利にしていくことを言います。

 無人店舗の場合、POSレジは購入商品のデータを取得し、カメラやセンサーは来店者数だけでなく消費者の属性(年代・性別など)や店舗内の導線、棚割などのデータを取得して、最終的に外部の天候データと組み合わせることで商品開発や販促に生かされていくのだろうか。

 そう考えながら、Tシャツにコーヒーを数滴こぼしていることに気付き、慌てて拭き取りました。

妙に納得させられた女性店員の言葉

 翌日は仕事が休みのため、近所のクリーニング店にスーツとともにコーヒーのシミの付いたTシャツを持っていきました。

 久々の訪問でしたが、さすがにクリーニング店はセルフレジに……なんてことはなく、いつもの年配の女性店員が笑顔で出迎えてくれました。ほっとしつつ洗濯物を店員に渡しながら言う。

「このTシャツ、シミが付いちゃって、どうにか取れませんか?」

 店員は汚れをじっと見つめてから私に「どれくらい着てるの?」と聞く。私が「10年くらいですかね?」と答えると目を丸くして言う。

「10年? あなたTシャツでそれだけ長く着てたら、もう元は取れてるでしょう。このシミは取らなくて良し!」と言ってTシャツを返されました。

「いやいや、お気に入りなんですよ!」。そう言って粘ると、

「この服、クリーム色でしょ? このシミを取ろうとするとね、この部分だけ白くなっちゃうから。まだ長く着たいんだったらパジャマとして着てあげなさい」

 まるで母親のように言う女性店員のその言葉に妙に納得してしまい、その日Tシャツは持ち帰ることにしました。そういえばこの女性店員は以前にも妙な提案をしてきたことを思い出しました。

「セルフレジ」に代替できないこと

 洗濯物を渡したときスーツのパンツが破れていることに気付いてくれたので、「じゃあオプションで穴も埋めてください」と言うと……

「うちでやると高いから裏の○○さんのところに持っていくと安いよ」。

 自分の働く店ではなく、裏の商店街にある高齢のおばあさんが営む小さな裁縫店をこっそり紹介してくれた。そこへ行くと5分の1の値段で確かに安かった。親切だけど商売としてはどうなのだろうと思いつつ、ずっとこのクリーニング店には通い続けています。

 セルフレジはこういったやり取りもなくなるのだろうかと少し寂しくなりました。

 それから数日たってセルフレジのことはすっかり忘れて、たまたま「掃除代行サイト」の存在を知って試しに注文したときのことです。

 ウェブで掃除希望のエリアを風呂、トイレ、キッチンなど複数の項目から選択します。全体をお願いしようと思うと軽く1万円は超えてしまうので、とりあえずお風呂とトイレ、洗面台をお願いして、リビングやキッチンは自分でやろうと思いました。

 注文ボタンを押しますが、その時点で注文は確定しておらず、サイトに登録している近所の代行者と希望時間がマッチするとメールで確定通知が来るという仕組みになっていました。

 当日、主婦の女性が訪問し、それぞれの場所を掃除してくれました。掃除が終わると、自分が掃除するのとは全く違うきれいな風呂とトイレ、洗面台がそこにありました。

 帰り際に世間話をしているとその女性が「そういえば、お風呂って今あそこに置いてあるブラシと洗剤だけで掃除してます?」と言う。

デジタルのメリットと、人の温かさ

 何かの売り込みかと警戒しつつ、はいとうなずくと女性は続けて

「スーパーに売ってる××って洗剤使って、細かいところはブラシだけじゃなくてスポンジも使うといいですよ。なかなか、普段仕事で忙しくてお掃除のこととかはおせっかいかもしれないけど。あと鏡とかも曇りが取れないときはね……」

と笑顔でアドバイスをしてくれた。

掃除代行を依頼した女性は、お風呂場をピカピカにしてくれた(画像:ズズズさん制作)



 見送ってから再びきれいになったお風呂やトイレを見て思います。

 依頼する人はもちろんですが、家事の合間のすき間時間を有効活用したい主婦にも両方にメリットがある「デジタルとリアルが融合した良いサービス」だな、と。

 今の時代はデジタル技術の活用による自動化・効率化なんてものは当たり前です。むしろ多くの人が何かを探すときはネットでの検索から始めるため、デジタル主流の考え方が普通になっているようにも思います。

 だからこそ、その接点のひとつとして存在する「人のあたたかさ」はやはり良いものだなと感じずにはいられません。


【調査】コロナ禍でクリーニング店が大ピンチ?

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