渋谷で働くA子さんの場合
「会社で“いじられキャラ”になってしまって、疲れるんです。どうしたらいいですか?」
東京・渋谷のベンチャー企業で働く新入社員・A子さん(22歳)から、こんな相談を受けました。A子さんはおっとりとした優しい雰囲気で、ちょっと天然っぽく見られそうなタイプです。
「いじられるのって、バカにされている感じがして苦手なんです。でも笑って『なんでそんなこと言うんですか~(笑)』とノリよく返さないと、空気が悪くなって気まずくなっちゃう。一度いじられキャラになるとみんなからいじられるようになって、これからずっといじられキャラでいなきゃいけないのかな……って憂鬱です」
東京に暮らす女性たちは、どんな悩みを抱えているのか。今回は渋谷のベンチャー企業に勤める22歳のA子さん(画像:写真AC)
多様性が容認されるSNS時代に突入し、多種多様な人間が入り乱れる現代では「わかりやすいキャラ付け」によって他人を認識しようとする風潮が強まりました。
わかりやすいキャラになった人ほど立ち位置が明確になり、良くも悪くも目立つ存在になります。バラエティー番組で活躍する芸能人はその最たる例です。
人数が多いコミュニティーほど手っ取り早く相手の人物像を把握したくなるので、スピーディーかつ大胆にキャラ付けが行われます。全国から多くの新入社員を招き入れる東京の企業では、入社してすぐに違和感のあるキャラ付けをされ、困惑する若者も珍しくありません。
キャッチ―なリアクションが求められるいじられキャラは、特に心の負担が大きくなります。
愛のある「いじり」なんてほとんどない
「いじられキャラはおいしい」と考える人もいますが、ひとつひとつの番組で爪痕を残さなければならない芸能人ならまだしも、一般人が不慣れないじられキャラの仮面をつけ、心身を削りながら得る恩恵など微々たるものです。
一度定着したキャラはなかなか変えられず、延々と不本意ないじりを受け入れて“笑うピエロ”を演じなければならないとしたら、恩恵より損失のほうが圧倒的に大きいでしょう。
根底に相手への思いやりがある「愛のあるいじり」なら話は別ですが、一般人同士の雑ないじりにはほとんど愛がありません。
ただただその場をおもしろく盛り上げたい人や、盛り上げ上手な自分になりたい人のエゴによるいじりが大半で、いじられた人は一時的な盛り上げの“燃料”になります。精神的に疲れてしまうでしょう。
若い世代を中心に、こうしたいじりを疑問視する人も増えてきました。
お笑いの鉄板である“いじり芸”は陰りを見せています。「オリンピッグ」(東京オリンピックの開会式で、タレント渡辺直美さんの容姿をブタに例えて演出する案)が批判を集めたように、相手を尊重しないいじりは今後廃れていくと思われます。
ただ、こうした価値観にはジェネレーションギャップがあり、中高年と若者の間には大きな隔たりがあります。
会社の役職者に多い中高年は、いじり全盛期の世代です。若者とコミュニケーションする起点として、自分たちでも理解しやすいおなじみのキャラ付けをし、未熟な部分をいじって笑いのネタにするケースは珍しくありません。
入社するなり悪気のない「かわいがり」に振り回され、5月病に陥ってしまう新入社員もいます。
「笑わない勇気」を持てば世界が変わる
いじられキャラから脱するのは簡単ではありません。その場全体を巻き込むいじり芸では特に強い同調圧力が働きます。新入社員など若年層の人ほど、横並びの意識が強い日本企業で同調圧力に逆らうのは勇気がいるでしょう。
とはいえ、いじりを良しとする価値観を持つ相手を変えるのはほぼ不可能です。最初からはっきり意思表示する “いじられにくいキャラ”でいるのが望ましいのですが、すでにいじられキャラになっている場合は、多少気まずい思いをしてでも「笑わない勇気」が求められます。
笑顔は容認のサインですから、笑うと「いじられキャラを受け入れている人」になってしまいます。はっきりNOと言えないなら、せめて笑わないようにしてください。
いじられても笑わなければ、その場に「?」という疑問符が生まれます。それを繰り返すことで、自然といじりが減っていくはずです。
相手はその場を盛り上げるためにいじっているので、盛り上がらなければ失敗であり、意味がないと判断します。同時に「これはおもしろくないのかな?」という懸念が生まれ、変化のきっかけになるかもしれません。
タレントのSHELLY(シェリー)さんはこうしたいじりに疑問を感じ、笑わないようにしたそうです。
テレビ番組では笑っているタレントがワイプで使われるので、彼女自身の仕事としてはマイナスにもなりますが「こうした流れに同調したくない」という思いからあえて疑問を抱かせるように働きかけていると述べていました。
ただ首をかしげるだけでも効果的
明確に嫌だと言えないなら、分からないふりをしましょう。「これっておもしろいんですか?」というスタンスで首をかしげてください。
「面白いか分からない」と首をかしげることで、いじりが減ることもある(画像:写真AC)
自分の心を削ってまで、一過性の笑いに身をささげる必要はありません。心に抱いた違和感を大事にして、その場に一石投じましょう。その小さな石の積み重ねによって、それぞれが尊重される心地いい環境を築けます。
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