渋谷「宮下パーク」だけじゃない! 東京都心に「オープンエア空間」が増えているワケ

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渋谷「宮下パーク」だけじゃない! 東京都心に「オープンエア空間」が増えているワケ

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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近年、都内に増え続けるオープンエア空間。その背景にはいったい何があるのでしょうか。文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

非日常感覚を味わえるオープンエア空間

 都心では近年、屋上に庭園や展望スペースを設けたり、上層階に眺めの良いオープンエアのテラス席を設けたりする大型商業施設が増えています。

 それは都会の騒がしさから離れたエアポケットだったり、ビルのはざまで思いがけず緑や植物に出会える心地良い空間だったり、大都市のパノラマを一望できる空間だったりで、ちょっとした非日常感覚を味わえます。

 このような空間は道路から見ても気づきにくい場所にあるため、隠れ家的な風情や感動的な光景がありします。

 2021年のゴールデンウィークは「密」を避けて、都市に潜む空間を散策するのが良いかもしれません。屋外なら新型コロナウイルスの感染リスクも幾分かは軽減されます。

空間バリエーションも多彩

 オリンピックイヤーに向けて、都心では新しい大型商業施設やホテルが幾つもオープンし、多彩なオープンエア空間が生み出されました。特に近年の都市開発が活発だったエリアにそのような空間が多く見られます。

 例えば渋谷エリアで有名なのは、2019年11月にオープンした、地上約230mに位置する渋谷スクランブルスクエア(渋谷区渋谷)東棟の屋上展望エリア「SHIBUYA SKY」でしょう。透明度の高いガラス柵で360度パノラマビューが楽しめ、フォトスポットとしても人気となりました。

 同じく11月にオープンした渋谷パルコ(同区宇田川町)には、「ROOFTOP PARK」として約1400平方メートルの屋上庭園が整備されています。併設する開放的な飲食空間「ComMune」では時間帯によってさまざまなメニューが提供され、DJイベントなども開催されています。

 12月にオープンした渋谷フクラス(同区道玄坂)にも屋上庭園「SHIBU NIWA」が整備され、シンガポールなどで展開するエンターテインメントレストラン「CE LA VI」の新業態「PAO by CE LA VI」のアジアンバーガーをテイクアウトできたり、お弁当を持ち込めたりします。

 2020年8月にオープンしたMIYASHITA PARK(同区神宮前)では、屋上が渋谷区立宮下公園となっており、ボルダリングウォール、スケート場、サンドコートなどのスポーツ施設が設置されています。

MIYASHITA PARKの屋上に設置された宮下公園(画像:宮下公園パートナーズ)



 また、渋谷エリアでは今後も表参道と明治通りの交差点に位置した「コンドマニア」の跡地に屋上庭園を備えた商業施設がオープン予定です。

都心ならではの景観価値を追求

 渋谷エリアに先行して大型の商業施設開発が相次いでいた銀座エリアでも、さまざまなオープンエア空間や開放感のあるテラス席を多く見られます。

 GINZA SIX(中央区銀座6)のGINZA SIXガーデンは、約4000平方メートルもの規模で四季折々の植物が楽しめる屋上庭園です。

ライトアップされたGINZA SIXガーデン(画像:チームラボ)



 また、12階建てショッピング センター・キラリトギンザ(銀座1)の4階「MERCER BRUNCH GINZA TERRACE」は銀座大通りを見渡せるバルコニーテラスで食事を楽しむことができます。最上階は以前ブライダル施設でしたが、現在は都内最大級のクラブ&レストラン「PLUSTOKYO」にリニューアル。屋上バーベキューなどが楽しめるオープンエアのテラス席になっています。暖かくなるこれからの季節は気持ちいい時間が過ごせることでしょう。

 開発ラッシュだったホテルでも眺望の良い部屋だけでなく、開放感のあるオープンエア空間が多く導入されています。

 例えば、2020年10月にオープンしたラグジュアリーライフスタイルホテルの東京エディション虎ノ門(港区虎ノ門)ではテーブルや椅子を設置した広いテラス付きの客室だけでなく、アウトドアダイニング「The Jade Room + Garden terrace」(今後オープン予定)などをを設け、「天空のアーバンリゾート」と呼ばれています。

 同じく10月にオープンしたライフスタイルホテル「アロフト東京銀座」(銀座6)では、屋上に開放感のある屋上バー「Roof Dogs」が設置され、銀座を一望できる空間だけでなく、ホットドッグなどの食事やアルコールも楽しめます。

 屋上庭園や展望スペース、眺望の良いテラスは都心ならではの景観価値を生み出していると言えるでしょう。

 都心ではインバウンドも含めてシティーツーリズム(都市観光)の機能がより求められるようになっており、このような空間はいわば都市の「景勝地」とも言えます。

リアルならではの体験も訴求

 オンラインショッピングが急速に普及するなか、リアル店舗へ足を運んでもらうためには五感に訴えるような空間価値提供の重要度が増しています。心地良い空間や感動のある空間に没入できることは、リアルならではの体験と言えます。

インバウンドのイメージ(画像:写真AC)



 都心部では近年、大型商業施設の定番的存在だった百貨店の閉店が相次ぎ、代わりに新しい商業施設が次々にオープンしています。そのようなことからも、都心部には新しい商業施設とともに多くのオープンエア空間が生まれているのです。

 かつて百貨店の屋上と言えばファミリーで楽しむ屋上遊園地が人気でしたが、現在はファミリーというより形を変えて大人向けスポットとして帰ってきた印象です。

今後もさらに増える都心の緑空間

 例えばSKY CIRCUS サンシャイン60展望台(豊島区東池袋)、梅田スカイビル空中庭園展望台(大阪市)など、以前から高層ビルの展望スペースは都市の観光資源となっていました。

SKY CIRCUS サンシャイン60展望台(画像:サンシャインシティ)

 都市の景観を一望できる施設はその都市の「シンボル」で印象的な空間であることから、ガイドブックに載りやすく、来街した観光客に利用されます。そのため、観光客のパイの大きいエリアに立地すれば集客効果も高くなる特徴があります。

 屋上庭園や展望スペースなどはシティーツーリズムの観光資源として機能していくことが改めて期待されます。

 都心で緑地環境が増加している背景は、ひとつに東京都における緑化計画の推進もあります。東京都では緑化計画は都市に美しい景観を形成し、うるおいとやすらぎのある快適なまちづくりに重要な役割を果たすと考えています。

 また、ヒートアイランド現象の緩和、大気の浄化、雨水の浸透など、都市生活の面において多様な役割を担っているとも。そのため、現在ある緑を守り育て、失われた緑を少しでも多く回復していくことが必要として、条例により一定の基準で緑化が義務付けられています。

 都心は上空から見ると意外と緑が多く、今後も都心の緑空間はさらに増えていくことは間違いありません。コロナ禍もオープンエア空間に新たな価値を与えたと言えます。2021年のゴールデンウィークは密を避けて、このような屋上庭園やテラスで過ごしてはいかがでしょうか。

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