開放感だけじゃない? 野外の「シネマイベント」、近年人気の理由とは

さまざまな場所を使った映画上映イベントの近年人気が高まりつつあります。そんなイベントの持つ可能性について、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。


映画上映を意外な場所で

 新型コロナウイルス感染拡大によって現在は開催自粛となっていますが、映画館やシネマコンプレックス(シネコン)以外のさまざまな場所を使った映画上映イベントがここ数年、活発に実施されています。

 イベント自体は決して珍しいものではありません。業態化したものではドライブインシアターがありますし、夏休みなどに公共の公園や施設などで仮設のスクリーンを設置して実施することも時々見られました。

 また最近は、今までになかった意外なロケーションで行われていることが特徴です。

 3年ほど前からこのようなイベントが目立つようになってきており、2019年はさまざまな各地で開催されました。増加している理由は、新しい企画力を持つ団体が増えていることが起因していると言えます。

「街中をどこでも映画館に」

 野外イベントで注目されるのは合同会社パッチワークス(調布市小島町)の「ねぶくろシネマ」です。ねぶくろシネマは「街中をどこでも映画館に。映画 × アウトドア」とうたい、多彩な立地でイベントを行っています。

 始まりは地元である調布市の活性化策として多摩川河川敷、京王線の橋脚をスクリーンにした野外イベントを開催したことです。かつて調布市は映画の撮影所が多く存在し、映画の街と呼ばれていたことに端を発したイベントでした。

芝生広場が野外映画館に変身した「六本木アートナイト」(画像:ねぶくろシネマ実行委員会)



 2019年は5月25日(土)にアートイベント「六本木アートナイト」で芝生広場にスクリーンを設置してバンクシー初監督作品「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」を野外上映したほか、6月1日(土)に富士スピードウェイの24時間耐久レースの夜間帯で「レディ・プレイヤー1」、7月20日(土)に柏の葉T-SITE前のアクアテラス(貯水池)にスクリーンを設置して「ジュラシック・ワールド」、8月17日(土)に調布駅前の「トリエ京王調布B館」の壁面を使用して「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」、10月26日(土)に川崎競馬場の大型スクリーンで「グレイテスト・ショーマン」を上映するなど、さまざまな野外イベントを実施しました。

映画上映 × ワークショップ

 ねぶくろシネマはそのほかにも、廃校や道の駅、クリケット場、キャンプ場、商業施設の屋上を映画館に変えています。また、ハンモックで寝そべりながら鑑賞するユニークなイベントなどもあります。

 残念ながら新型コロナウイルスにより中止となりましたが、2020年2月に開催予定だった「大手町発散シネマ」は国際会議や企業向けセミナーが行われる「大手町プレイスカンファレンスセンター」(千代田区大手町)が一夜限りの映画館になる予定でした。

「大手町発散シネマ」で開催予定だった「暗闇発散キックボクササイズ」のイメージ(画像:合同会社パッチワークス)



「ボヘミアン・ラプソディ」の応援上映に加え、ヨガやキックボクササイズ、ちゃぶ台返しなどのワークショップが開催され、オフィスワーカーのストレス発散がテーマとなっていました。

 立地、内容ともに興味深いものであり、今後の再開を期待したいところです。

全国さまざまな場所で開催

 ねぶくろシネマ以外にも、さまざまな場所で野外イベントが増えています。

「焚き火とコーヒーと野外映画祭」は、鹿児島県の廃校を利用した施設の屋外にスクリーンを設置し、たき火を囲んでコーヒーを飲みながら映画を観賞できるイベントです。映画以外にも、たき火に関係したワークショップを開催しています。

「ZOO CAMP」は日本平動物園(静岡県静岡市)のお泊まりイベントの一環で、日中は音楽イベントやマルシェ(市場)、夜は動物関連の映画を上映しました。

「OPENAIR CINEMA研究会」は古民家の庭にスクリーンを設置し、縁側から映画を観賞。イベント当日会場である山中湖交流プラザきらら(山梨県山中湖村)内に設置されたレストランでは、上映作品にちなんだフランス料理が提供されました。

「うみぞら映画祭」は淡路島の海の上に大型クレーンで巨大スクリーンをつるし、砂浜から映画を観賞するイベントで、主に淡路島が舞台の作品や海が舞台の作品を上映。

「高架下シネマ」はJR中央線高架下の商業施設「nonowa」内で開催した野外イベントです。武蔵境駅「モンスター・ホテル」、武蔵小金井駅「ペット」、東小金井駅「スパイダーマン:スパイダーバース」と高架下の三か所で上映しました。

「AIRPORT CINEMA in 美唄」は北海道美唄市の農道離着陸場「美唄スカイパーク」の滑走路にスクリーンを設置し、開放感のあるイベントを実施。

「種子島宇宙映画祭」は種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)敷地内の広場にスクリーンを設置し、宇宙にちなんで「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」を上映。ワークショップやヨガ教室、飲食ブースも出店しました。

過去の「博物館で野外シネマ」開催の様子(画像:東京国立博物館)

「博物館で野外シネマ」は東京国立博物館本館前にスクリーンを設置、印象的な空間の中で1,000席程度の座席と芝生に座っての映画観賞。会場内にはキッチンカーやクラフトビアバーも出店。2018年は5000人以上を集客しています。

映画鑑賞だけが目的ではない

 このようなイベントは地域活性化施策やアウトドアイベントの一環として実施されているものが多くなっています。

 地域活性化のためのイベントと言うと、各地でかつて実施されていた映画祭が思い出されます。地方小都市でも多くの人を集客できたため、1990年代から2000年代にかけて各地で次々に開催されるようになりました。

 しかし映画と開催都市との関連性に客観的に見て説得力のないものもあり、また数が増えたことによって話題性が低下、現在はすでに終了したものも見られます。

「AIRPORT CINEMA」が開催された、北海道・美唄市に位置する飛行場「美唄スカイパーク」(画像:ラコル)



 現在のイベントは映画鑑賞だけが目的ではなく、映画も含めてその環境全体を楽しむ体験型イベントと言えます。

 その土地ならではのダイナミックな環境や意外性のある環境で上映することにより、非日常的な体験ができます。環境と映画との相乗性は高い没入感を得ることも可能です。

 また近くに施設がないこともありますが、ワークショップやキッチンカーなども導入され、多角的に楽しめるイベントになっています。そのため映画館のように利用者が映画に固定されず、会場となるエリアを自由に楽しむことができるのです。

 イベント主催者が映画を上映するメリットは1時間~2時間と比較的長い時間、来場者をその場所にとどめられることもあるでしょう。また滞留時間が長いことでその環境をじっくり体感することもできます。

 同じようなエンターテインメントとして音楽コンサート・ライブや演劇もありますが、招致は大変でコストもよりかかります。映画は比較的客層を選ばないこともイベントに適していると言えるでしょう。

 近年はアウトドアブームであり、特にグランピングの人気が拡大していることから、自然系アクティビティだけではなくエンターテインメント的なアクティビティのニーズも生まれています。

鑑賞環境の多様化でどう生き残るか

 わが国で、映画鑑賞は大型シネコンが主流となっています。中規模施設が減少する一方で「IMAX」「4DX」「ScreenX」など付加価値の高い上映システムの導入によってスクリーン数は増加、都市部においては今後も池袋や新宿などで大型シネコン開発が予定されています。

 しかし、映画を取り巻く環境は大きく変化していると言えるでしょう。動画配信サービスの利用が拡大しており、映画も動画配信で視聴する層が確実に増えています。映画はネットで配信するまで待つという若者も少なくありません。

 世界中に配信されて人気となった海外ドラマの長編ファンタジー「ゲーム・オブ・スローンズ」は1話の製作費が10億円以上と、1話だけで映画に匹敵する製作費をかけており、ますます動画配信サービスのプレゼンスが上がっていくと考えられます。

自宅で動画配信サービスを楽しむ女性のイメージ(画像:写真AC)



 一方、近年は5スクリーン程度のミニシネコンも注目され、開発が増えています。映画を観賞する環境はさまざまに多様化していると言えるでしょう。

 今は外出自粛が求められますが、一日も早く感染が収束し、野外イベントが開催されることを願うばかりです。


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