原宿駅がガラス張りの駅舎に大変身した根本的理由

  • おでかけ
原宿駅がガラス張りの駅舎に大変身した根本的理由

\ この記事を書いた人 /

若杉優貴のプロフィール画像

若杉優貴

都市商業研究所

ライターページへ

建て替え工事を経て、3月21日(土)に営業を開始した原宿駅の新駅舎ですが、いったいなぜ建て替えられたのでしょうか。都市商業研究所の若杉優貴さんが解説します。

96年の歴史があった旧駅舎

 約4年間にわたって進められてきたJR原宿駅の改良工事が終了し、ガラス張りの新駅舎が2020年3月21日(土)に営業を開始しました。

原宿駅舎の新旧駅舎(画像:都市商業研究所)



 JR原宿駅は1906(明治39)年に開業。

 これまでの木造駅舎は、1923(大正12)年9月の関東大震災の後、1924年に建設された歴史あるもので、観光客にも原宿らしい「かわいい駅」として人気を集めていました。しかし、なぜこの時期に建て替えられることになったのでしょうか。

ヘビーユーザーにはわかる建て替えの理由

 建て替えの理由は、原宿駅をよく使う人には予想が付くことでしょう。最も大きな要因として挙げられるのが、「駅構内の混雑緩和」です。

 原宿駅の乗降客数は、1日約15万人。優等列車(各駅停車を除く列車)が停車しない駅の乗降客数としては日本有数の人数であるにもかかわらず、旧駅舎は狭く、また常用されるプラットホームも1本しかありませんでした。

木造の旧原宿駅舎。混雑のため入場制限が行われることも少なくなかった(画像:都市商業研究所)

 そのため、国立代々木競技場(渋谷区神南)などの近隣施設で大型イベントが開催されるときはもちろん、通常の休日でも混雑による事故防止のために入場規制がおこなわれることがしばしばありました。

 当時はまだ2020年に東京オリンピック・パラリンピックが行われる予定で、代々木体育館も会場のひとつとして使われることから、観戦客の安全性確保のためにオリンピック前の完成を目指し、工事が進められることになったのです。

その他にも要因が

 さらにJR東日本(渋谷区代々木)が建て替えの要因として挙げているのが「防災面での不安解消」です。旧駅舎は消防法に適合しておらず、老朽化も進んでおり、地震などの災害時にも不安があったといいます。

 もうひとつ公式には触れられていないものの、大きな要因ではないかとささやかれているものがあります。それは「ネズミ問題」です。

 原宿駅の構内や駅前で、大きなネズミを見たことある人もいるのではないでしょうか。

 駅の近くには「ねずみに餌を与えないでください」という看板がいくつも掲出されており、以前から旧駅舎がこのネズミの温床のひとつとなっているのではないかと言われていました。

新駅舎はホームも増設されて安全に

 新しい原宿駅舎は、旧駅舎よりも明治神宮(渋谷)寄りに建設されています。線路とホーム上にまたがる形で建設された橋上(きょうじょう)駅舎で、建物は2階建て。ガラス張りの外観が特徴です。

 今回の建て替えに合わせて、東口は以前よりも表参道寄りに移動。東京メトロ「明治神宮前〈原宿〉」駅との乗り換えも便利なものとなりました。

 さらに、新たに明治神宮側には新たに「西口」が開設されており、駅を出るとすぐに神社の境内が広がります。

新しく設けられた原宿駅の西口(画像:都市商業研究所)



 駅舎のデザインは特徴的な旧駅舎と比較すると「没個性」といった感も否めませんが、面積は以前の4倍以上と広々しており、大きな窓もあるため、コンコースは明るく開放的です。

駅限定商品も多数販売

 駅舎内にはテナントとして、1階にJR東日本のコンビニ「NewDays」、2階に「猿田彦珈琲」による高級新業態「猿田彦珈琲 The Bridge」の2店が出店。

NewDays。窓には「限定商品」の文字も(画像:都市商業研究所)



 そのうちNewDaysでは、老舗洋菓子店「コロンバン」の「原宿サンドパンケーキ」(いちご味・抹茶味。各税込み270円)などを販売。猿田彦珈琲では、原宿駅社員と猿田彦珈琲が共同開発したオリジナルブレンドコーヒー「原宿駅ブレンド」(ドリップ540円、コーヒー豆100g900円。各税込み)などといった「原宿駅限定商品」も販売されており、ちょっとした「おみやげスポット」としても利用することもできます。

 ちなみに、これら多くのお土産には新駅ではなく「旧駅舎」のイラストがあしらわれています。

 このほか駅舎の建て替えに併せて、駅構内の大改造も行われています。

 ホームと出入り口の混雑を解消させるため、現在の臨時ホームを山手線外回り乗車ホームへと転用。ホームが上下に分かれたことで、混雑時にも安心できる駅へと生まれ変わりました。

旧駅舎、今後はどうなる…?

 新駅舎が開業した一方で、長年親しまれた旧駅舎についても保存・移築を求める声が多く上がっています。

眠りに就く旧駅舎。「移築」などといった展開はあるのか(画像:都市商業研究所)

 旧駅舎はしばらくこのままの状態となる予定ですが、JR東日本は東京オリンピック・パラリンピックが閉幕する予定であった2020年夏以降に旧駅舎を解体して跡地に意匠を再現した建物を建てることを発表しており、そのため計画通りに進めばあと半年ほどで旧駅舎は「見納め」となってしまいます。

 果たしてこのまま解体されてしまうのか、はたまたどんでん返しで「保存」「移築」となる可能性もあるのか――今後の展開が注目されます。

関連記事