大ピンチの外食産業に現れた救世主? テイクアウト・デリバリーをフル活用する「イエナカ外食」とは

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大ピンチの外食産業に現れた救世主? テイクアウト・デリバリーをフル活用する「イエナカ外食」とは

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稲垣昌宏

ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員

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リモートワークの定着でその在り方が問われている外食産業。今後はどのような変化を遂げていくのでしょうか。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の稲垣昌宏さんが解説します。

外食店の新しい取り組みが次々と登場

 東京都渋谷区を中心に飲食店を運営するクマガイコーポレーション(渋谷区神南)は、コロナ禍で「SHIBUYA PREMIUM DELIVERY(渋谷プレミアムデリバリー)」を開始しました。

 このサービスは同社が運営する渋谷の5店舗横断でデリバリー注文できるようにして、「父親は焼き鳥、子どもはピザ」など、まるでフードコートのような使い勝手を実現したものです。なお配達料1回分しかかかりません。

 また、代々木上原にあるリストランテ「Quindi(クインディ)」(渋谷区上原)ではワインを100mlのボトルに小分けして販売するサービスを開始しました。

 ボトルを丸ごと買っても飲みきれないという人や、その日の料理に合うワインを赤白各1杯だけ買いたいなど、きめ細かいニーズに対応しています。オンライン通販では有名ソムリエがセレクトした3種セットの販売も行い、「料理とのマリアージュ」「選者」といった、外食の付加価値を家で楽しめるように進化させています。

これからのキーワード「イエナカ外食」とは

 これらの飲食店の新しい取り組みの背景にはコロナ禍があります。消費者は最近、

・外食(家外の飲食店で食事をすること)
・中食(調理済みの食品を買って家などで食べること)
・内食(家で食材を調理して食事をすること)

の使い方を変えています。

 これまでは、

・外食 = 少しぜいたくな食事
・内食と中食 = 普段使いの食事

でしたが、少しぜいたくな食事ですら家で消費したいという「イエナカ」ニーズが高まっているのです。

デリバリーサービスのイメージ(画像:写真AC)



 筆者(稲垣昌宏)が上席研究員を務めるホットペッパーグルメ外食総研(リクルートライフスタイル)では今回、メニューや味付け、サービス、設備といった外食の付加価値を、

・テイクアウト
・デリバリー
・ミールキット(レシピと必要な分量の食材がセットになった商品)
・通販

などで家に届けることを総称して、「イエナカ外食」と命名しました。

テイクアウト・デリバリーの利用率が倍増

 ホットペッパーグルメ外食総研が消費者に行った調査によると、コロナ禍で「これまで家では食べられなかった外食メニューが家で食べられるようになったと感じる」人が、40.2%もいることがわかりました。

 また、コロナ禍で「外食店からのテイクアウト、デリバリー、ミールキット等の利用が増えた」人も31.0%いました。

 さらに、今後コロナ禍が収まっても「たまにはぜいたくな食事というときに、外食と家でテイクアウト、デリバリー、ミールキット等を使い分けたい」人も51.2%いることがわかりました。

ホットペッパーグルメ外食総研が消費者に行った調査の結果(画像:リクルートライフスタイル)



 この結果から、コロナ後も家で外食メニューを消費する市場は一定量残ることが想定されます。

 リクルートライフスタイルが毎月3圏域(首都圏・東海圏・関西圏)で行っている、1万人規模の外食市場調査によると、コロナ禍における外食店の「テイクアウト月間利用率」「デリバリー月間利用率」はともに

・テイクアウト月間利用率 : 18.7% → 39.4%
・デリバリー月間利用率 : 5.0% → 9.2%

と倍増しています。

 また夕食の単価も、中食全体では1回あたり平均832円ですが、外食店からのテイクアウトの場合は1708円と、倍以上の金額が支払われています。

 しかしこの平均単価は外食店の店内での平均単価と比べて、まだまだ低くなっています。特に飲酒を主体とした業態であれば、アルコール類の利益が大きく、テイクアウトやデリバリーではその分の利益を補いきれないのが実情です。

 こうしたことから、先進的な取り組みを行う外食店では、味以外の外食の付加価値(サービス、設備)を工夫して「イエナカ」に届けることで換金化し、売り上げを確保しようとしています。

多様化する選択肢

 リモートワークの定着で、オフィス街や繁華街はコロナ後も空洞化し、外食店は厳しい経営環境が続くでしょう。一方、消費者サイドからすれば、これまで以上に

・食べるもの
・食べる場所

を掛け合わせて選べることができます。

 さらに、これまで外食で一緒に値付けされていた、

・料理の価値
・サービスの価値

を分けて購入できる方向性に変わっていくことも意味しています。

テイクアウトメニューのイメージ(画像:写真AC)



 選択肢の増加は自由度が上がる一方で、賢い使い分けが求められることを覚えておきたいものです。

●調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に住む20~69歳の男女
調査時期:2020年11月
有効回答数:1万人

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