合言葉はレジャー? ウィズコロナ時代到来で「父子関係」が大きく変わる
「友達親子」の一般化 新型コロナウイルス感染拡大防止の外出自粛によって家族の関係性が変化しています。家族が一緒にいる時間が長くなり、絆が深まった家族も少なくありません。 特に普段は顔を合わせることが少ない父親がテレワークで自宅にいるため、父親と子どもの関係性が深まっていることが特筆されます。 父子関係のイメージ(画像:写真AC) 家族関係の変化は、コロナ以前から兆しが見られました。 最近は高校生や大学生くらいの年齢になっても親と買い物や遊びに出掛けることに抵抗のない若者が増えています。さらに親と同じ趣味を持って、一緒に楽しむ若者も増えています。 いわゆる「友達親子」ですが、この言葉自体は1980年代から使われており、主に母親と娘の関係性を指したものでした。近年は母親と息子で友達親子が増えており、ふたりだけで服を買いに行ったり、遊びに行ったりして、むしろ母親への依存が強くなることを心配する声もあります。 一方、父親との外出も昔ほど抵抗感がなくなっています。 年ごろの娘は父親のことを「臭い」「汚い」と毛嫌いするきらいがありましたが、最近の男性は中高年に差し掛かっても身だしなみを気にかけて小ぎれいにしているためか、そう感じなくなってきているのかもしれません。また、働く母親が増えて、昔のように父親が威厳を示す必要がなくなり、子どもとの距離が近くなったのかもしれません。 「イクメン」の拡大 この先、父親と子どもの絆を深めていくと考えられるのが「イクメン」の拡大です。 2020年に入り小泉進次郎環境大臣が育児休業取得を公言したことで、にわかに父親の育児休業が注目されました。 東京都が調査した「男性の家事・育児参画状況実態調査」によれば、男性の家事・育児参画の賛否について、男性は賛成の人が52.1%、どちらかといえば賛成の人が28.7%で、合計すると賛成の人は80.8%と大半を占めています。男性も意識としては家事・育児への参画に肯定的な人が多く、良いイメージを抱いているようです。 「男性の家事・育児参画状況実態調査」の結果(画像:中村圭) 育児をしている母親からは「育児休業を取得しても、家事・育児を率先して手伝ってもらえなければ意味はない」という冷ややかな意見も聞こえてきますが、父親の中には育児を楽しみたいと考える人も少なくありません。 今後、イクメンが増えることで父親と子どもが一緒に遊ぶ機会が多くなっていくでしょう。 インドア派の父親も増加インドア派の父親も増加 現在、テーマパークや遊園地などのレジャー施設では子連れファミリーや三世代の集客に注力しています。 ファミリーレジャーの決定権はおおむね母親にあると考えられており、集客施策は母親と子どもの関係を意識したものになりがちですが、父親と子どもの関係性が深くなることにより、今後は父親視点の施策も期待されるでしょう。 父親と子どもの遊びというと、公園でキャッチボールやサッカーをしている光景を思い浮かべます。 野球やサッカー、スポーツ観戦も含め、子どもの好きなスポーツレジャーは父親の影響を色濃く受けます。父親は自分の好きなものを子どもにも好きになってもらいたいと考え、さらに子どもに何かを教えたい、格好いいところを見せたいという意識も働きます。 その受け皿としてはキャンプや釣りなどのアウトドアレジャーが代表的なもののひとつです。 グランピングのイメージ(画像:写真AC) テントを設営したり、バーベキューの火をおこしたり、魚を釣り上げるコツを教えてくれたりと、アウトドアで子ども心に父親を頼もしいと感じたこともあるのでは。 しかし、現在のアウトドアではグランピングが流行しており、グランピングではテントを設営する必要もなく、バーベキューも下準備は全てスタッフがやってくれます。それ以前に、そもそもキャンプが苦手なインドア派の父親も増えています。 趣味文化の成熟期に育った父親世代 一方で現在の30代~40代の男性はゲームやプラモデルなど、国内でポピュラーな趣味文化の成熟期に子ども時代を過ごしており、何らかの趣味にハマった人も多いのではないでしょうか。 特に今回は外出自粛となったため、父親と子どもの遊びとして、家の中でできるゲームや模型といった趣味分野が人気を呼びました。共通の趣味とするためには息の長い趣味が適していると言えます。 例えば、ミニ四駆がそのひとつです。マンガやアニメの影響もあって過去に何度もブームになりました。 「ミニ四駆ジャパンカップ 2020」のロゴマーク(画像:タミヤ) 1980年代後半の第1次ブーム、1990年代中頃の第2次ブームの時期にミニ四駆に熱狂した子ども世代が現在、親世代となって自分の子どもと一緒にミニ四駆を楽しむようになっています。タミヤ(静岡市)主催のミニ四駆の全国大会「ミニ四駆ジャパンカップ」の参加者にも親子が多くみられます。 都内に鉄道模型ファン垂涎のスポット都内に鉄道模型ファン垂涎のスポット また、趣味文化の中でも特に長い歴史のあるものとして、鉄道模型が挙げられるでしょう。一般的には明治後期から広まったとされていますので、何世代にも渡った趣味になっています。 ブームと言うほどではありませんが、いつの時代も必ず一定数のファン層が存在する趣味分野です。鉄道模型の規格のひとつである「Nゲージ」はそろえるのにお金がかかるため、父親の持っていたものを受け継いで始めることが珍しくありません。 Nゲージのイメージ(画像:写真AC) 日本は世界的に見ても鉄道の種類が多く、車両開発が活発なことが特徴で、各時代でさまざまな鉄道模型が製造されていることが世代を渡った魅力にもなっています。 これらの趣味はオンラインで商品を購入できるため、外出自粛中でも購入して組み立てたり、走らせたりすることができます。 また、都内には代表的なメーカーのフラッグショップが存在しており、例えば「タミヤ プラモデルファクトリー 新橋店」(港区新橋)、2019年7月、大宮から都内にオープンした「トミックス ショールーム東京」(千代田区鍛冶町)、「ホビーセンターカトー東京店」(新宿区西落合)など、いずれも都心立地で、父親が会社帰りに立ち寄ることが可能です。ただし、現在はコロナのための営業休止の施設もあります。 「父の日」市場は今後どう変わる? 6月第3日曜日(2020年は21日)は、父の日です。 コロナのため2020年は実施されない可能性がありますが、レジャー施設や温浴施設で父親が無料になったり、父の日のプレゼントを手作りするハンドクラフトの親子ワークショップが各地で開催されたりします。 しかし、母の日の焼き直し的なものもあり、母の日と比べると地味な印象は否めません。趣味に関わるものなど、もっと父親が率先して行きたくなる企画が求められます。 これまでの「父の日」のイメージ(画像:写真AC) 趣味以外には父親と子どもが一緒に成長するアクティビティもあるでしょう。 例えば父親と子どもの料理教室や親子の科学教室など。料理教室は母親へのプレゼントとして実施されることがよくあります。父親と一緒に学ぶことは良い体験になり、より連帯感が生まれるものと思われます。 現在はまだ外出自粛を心がけるべきですが、コロナ収束後には改めてさまざまな施設をご利用してみてください。
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