福島県沖地震で注目 東京都「無電柱化」事業はコロナ禍の景気刺激策になるか

13日の地震でいくつもの電柱が倒壊しました。そんなとき、改めて注目が集まるのが「無電柱化」です。フリーランスライターの小川裕夫さんが解説します。


「無電柱」を訴えてきた小池都知事

 2021年2月13日(土)の夜に福島沖で発生した地震は、東日本大震災をほうふつとさせる大きな揺れを記録しました。幸いなことに大きな被害を出す津波は観測されませんでしたが、揺れによって家具の倒壊、住宅の破損といった被害が各地で報告されています。

 震源に近い東北地方だけではなく、関東地方でも大規模な停電が起き、多くの人たちが不安な一夜を過ごしました。また、地震は家屋の倒壊だけにとどまらず、街のあちこちに立つ電柱も倒壊させました。電柱の倒壊により、交通にも支障が出ています。

 電柱の倒壊は道路を寸断するため、交通機能がまひし、それが救護活動や復旧活動の妨げる要因とされてきました。

 2016年に東京都知事に就任した小池百合子都知事は、目玉政策のひとつに無電柱化を掲げています。衆議院議員時代の2015年には、東京大学の松原隆一郎名誉教授と共著で『無電柱革命』という本も出しています。

 無電柱化は小池都知事のオリジナル政策ではなく、東京都は、鈴木俊一都知事の頃から「電線類の地中化」を推進していました。その後も、青島・石原・猪瀬・舛添といった歴代の都知事によって「電線類の地中化」は粛々と進められていたのです。

「電線類の地中化」があまり進まなかった理由には、東京都内の道路整備格差があります。当時、23区エリアは道路の整備が進んでいた一方で、三多摩の道路整備は思うように進んでいませんでした。そうした格差もあり、「電柱をなくすことに予算を割くよりも、道路整備に財源を」という声が強く、東京都や市町村は道路の充実を優先していたのです。

 実際、電柱を地中化するには莫大(ばくだい)な費用がかかります。こうした事情から、行政は「電線類の地中化」を先送りにしてきました。

コロナ禍のインフラ整備で景気刺激も

 小池都知事が、そうした風向きに変化を生じさせます。これまで歴代の都知事が取り組んできた「電線類の地中化」を、小池都知事は「無電柱化」「電柱ゼロ」と言い換えたのです。言葉を換えただけですが、これが都民の心情に訴求し、無電柱化は耳目を集めるようになりました。

電柱のある風景(画像:写真AC)



 そうした言葉の言い換えのほかにも、東京五輪の開催を控えていたために都内のインフラ整備や更新が相次いでいたこと、三多摩の道路整備が進んできたことなども無電柱化の追い風になります。

 小池都政発足後、東京都は無電柱化に本腰を入れるようになりました。とはいえ、東京都が無電柱化に取り組めるのは、あくまでも都道だけにすぎません。所管外の国道や市町村道、私道までを無電柱化することはできません。

 普段、私たちが街を歩いていても国道・都道・市町村道などを特に意識することはありません。都道が無電柱化されていても、国道・市町村道に電柱があれば「無電柱化は進んでいない」という印象を抱くことでしょう。

 2020年度、東京都は無電柱化を加速させるために小規模住宅の無電柱化に助成金を出すことを発表しています。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、行政は税収減が確実です。また新型コロナ対策に予算を振り替えなければならないため、行政の予算を縮小したり、事業そのものを見直したりする動きも見られます。

 そうした財政事情は東京都も同じですが、その一方で外出機運が下がっている今なら一気にインフラ整備を進めるチャンスでもあります。交通量が多いと、道路などインフラ整備ははかどりにくいという面がありますが、人出が少ないと道路工事はスムーズに進めることができるのです。

 また、コロナ禍で多くの事業者が不振を極めるなか、行政が積極的に公共事業に取り組めばそれをきっかけに景気を刺激する効果も出ます。

年間25kmペースから50kmへ加速

 1930年代、アメリカは世界恐慌で経済が停滞する危機に見舞われましたが、フランクリン・ルーズベルト大統領(当時)は公共事業を拡大して雇用の維持に努める、ニューディール政策を実行しました。

 平成期、道路や公共施設といった新規のインフラ建設は停滞しました。後から見れば、そうした公共工事に無駄な部分は確かにあったかもしれませんが、そうした反省を踏まえ、最近では公共工事に対する考え方も変化しています。

 小池都政の5年間では、環境改善効果のある事業のために資金を調達する「グリーンボンド」を発行し、ZEB(Net Zero Energy Building)化やZEH(Net Zero Energy House)化を推進してきました。ZEB・ZEHは快適な室内環境を実現しながら、消費するエネルギーをゼロにすることを目指す取り組みです。

東京都の無電柱化のPR動画(画像:東京都)



 ZEBやZEHをはじめ、地球温暖化の抑制や再生可能エネルギーの拡大に寄与するインフラ投資が提唱されるようになりました。

 電柱ゼロも環境問題に配慮した政策といえます。こうした環境に配慮した公共事業は、「グリーンニューディール」政策と呼ばれるようになり、景気刺激策という面も含めて注目されているのです。

「無電柱化」は環境や景観向上に効果があるほか防災面にも寄与するため、グリーンニューディール政策といえます。

 現在、東京都は年間25kmのペースで都道を無電柱化し、2060年代に完了する予定を立てていました。このほど、無電柱化の計画は見直されることになり、スピードを速めることが決まりました。

 東京都は5年後をメドにペースを年間50kmへと引き上げ、に事業を完了するとメドも2040年代までと大幅に前倒しすることが決まりました。環状7号線よりも内側は、35年度中の完了予定としています。

 今回の福島県沖の地震を機に、災害に強いまちづくりの一環として無電柱化の取り組みが改め加速しそうです。


【画像】小池都知事の著書『無電柱革命』

画像ギャラリー

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