アリ?ナシ? 人気漫画の「実写化」ブーム、あなたの意見を聞かせてください

近年注目される漫画作品の実写化。そのような流れはいつ頃からあったのでしょうか。過去の珍作品とともに、フリーライターの大居候さんが解説します。


1970年代放送のロボアニメも実写化

 2020年、東京の映画館はコロナ禍で大変な苦境に立たされました。10月16日に公開されたアニメ「鬼滅の刃」の劇場版がなければ、いったいどんなことになっていたのか……想像するだけでも背筋に薄ら寒いものを感じてしまいます。

 映画館全体では依然として苦しい状況ですが、2021年は延期になっていた映画も次々と公開される予定のため、現状を悲観することなく、飛躍を期待したいところです。

 さて、いま話題になっているのが人気漫画・アニメの実写化作品です。2021年は『るろうに剣心』の最終章のほか、『耳をすませば』の実写化作品なども公開が予定されています。

 そのほかにも先頃、1970年代に放送されたロボットアニメ『超電磁マシーン ボルテスV』の実写化作品がフィリピンで制作され、一部で話題になりました。

「さまざまな意味」で話題になる実写化作品

 ところで、実写化作品はなぜか「さまざまな意味」で話題になるのが常となっています。とりわけ話題なのが2009(平成21)年に米国で公開された『ドラゴンボール・エボリューション』です。

 香港の大物俳優であるチョウ・ユンファが亀仙人を演じるということで、当時期待されましたが、原作者の鳥山明からも酷評を受け、歴史的な失敗作として映画史に記録されてしまいました。同様の事象として、2004年公開の『デビルマン』の失敗もよく知られるところです。

 とはいえ、大成功した作品もあります。

『翔んで埼玉』公式ガイドブック(画像:東映,宝島社)



『テルマエ・ロマエ』(2012年)は、主演の阿部寛をはじめとするキャスティングが当たったことでヒット。フランスで製作された『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2019年)は監督・脚本・主演のフィリップ・ラショーが筋金入りの原作ファンで成功し、『翔んで埼玉』は原作のプロットを借りた改変が当たりました。

実写化は「人気のバロメーター」だった

 漫画原作の実写映画はこのような状況もあって、近年はネガティブなイメージを持たれがちですが、以外に成功をしている例も多いのです。

 日本における実写化の歴史は古く、始まりは1925(大正14)年に製作された『ノンキナトウサン 活動の巻』です。これは大正時代に『夕刊報知新聞(現『スポーツ報知』)』に連載されていた麻生豊の作品で、同作に先んじてアニメ版も製作されています。

 その後も太平洋戦争を挟んで、『サザエさん』や『あんみつ姫』などの実写化が盛んに行われました。

 近年、実写化は「原作人気にぶら下がる」とネガティブに捉えられがちですが、人気漫画が実写になるといった流れは、昔から当たり前のことだったのです。ある意味、実写化の提案が人気のバロメーターだったともいえます。

 こうした漫画原作の映画化が盛んになったのは、1970年代に入って劇画が台頭してからのことです。リアリティーのある展開が映画の原作として使いやすかったからだと考えられます。

 この時代に光った作品として知られるのは、梶芽衣子主演でシリーズ化された『女囚さそり』です。原作は篠原とおるによるもので、原作より実写化作品のほうが知られているのですが、原作を読むとヒロインが女囚ということを除き、共通点はまったくないという思い切った内容となっています(なお篠原とおる作品は実写化されたものが多いのにアニメ化は一度もないという希少な存在です)。

シリーズ第1弾『女囚701号 さそり』DVD(画像:東宝)



 同じく梶芽衣子主演で実写になった小池一夫・上村一夫『修羅雪姫』が比較的原作要素を入れているのに比べて、『女囚さそり』シリーズは好き勝手にやっている感が際立っています。

傑作野球漫画も実写化

 むしろ、この時代の作品を見ると漫画原作だからといって原作に忠実にやればいいというものではないことが、よくわかります。それを知るために見るべきなのは、1977(昭和52)年公開の『ドカベン』です。

『ドカベン』は、いわずと知れた水島新司の傑作野球漫画です。原作に忠実にしようと、主人公の山田太郎や岩鬼に公募でスカウトしたそっくりさんを起用。

 しかし物事には限界があります。そっくりさんが漫画そのままの動きを演技するわけですから、うまくいくわけがありません。川谷拓三演じる殿馬が「ヅラヅラ~」とスキップしているシーンだけが妙に印象的です。

『ドカベン』DVD(画像:東映)

 最近はDVDも発売されているので、コロナ禍の「おうち時間」に必見です。

究極の実写化とは……

 さらに原作に忠実すぎなのが、巨匠・市川崑による1978(昭和53)年の公開作『火の鳥』です。

 原作の第1部「黎明(れいめい)編」を実写化した作品ですが、若山富三郎演じる猿田彦が原作通りに大きな鼻をつけており、違和感が残ります。本作も各種配信サイトで公開されているので、一度確認してみるのもよいでしょう。

 これらの作品と、漫才師・横山やすしが拳銃を楽しそうにぶっ放すシーンが際だつ1985年公開の『ビッグ・マグナム黒岩先生』(原作・新田たつお)をあたりを見ておけば、
漫画原作の実写化とはいかなるものかが、よくわかるでしょう。

『ビッグ・マグナム黒岩先生』DVD(画像:東映)



 このように、漫画原作の実写化は無数に行われてているため、成功もあれば失敗もあります。「コスプレ大会」になってもいいから原作に忠実であるのか、はたまた原作を打ち破るのか、どちらかに振り切らないと面白い作品が生まれません。

 近年の実写化作品が批判される背景には、そこの中途半端さが目立つからかもしれません。ちなみに1967年公開の大島渚による『忍者武芸帳』は、なんと原作のコマに音声をあてただけの作品です。なるほど、このスタイルなら批判すら出ないのかも……?

 何はともあれ、良質な実写化作品がコロナ禍にあえぐ状況を救うことを願っています。頑張れ、東京の映画館!


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