便利なお小遣い稼ぎにも? 今どき若者が自ら「ライブ配信」したがる理由

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便利なお小遣い稼ぎにも? 今どき若者が自ら「ライブ配信」したがる理由

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橿村芽久未

TesTeeトレンド分析担当

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メディアに乗って情報を発信する人物は、かつては芸能人・有名人に限られていました。しかし今や、若者を中心に個人がスマートフォンなどのアプリを使って「ライブ配信」するのが当たり前の時代。なぜ若者は「ライブ配信」にハマるのか。TesTeeトレンド分析担当の橿村芽久未さんが、若者2089人を対象にした調査を基にひも解きます。

東京など全国の若者2089人に調査

 東京はじめ全国の若年層を対象に調査分析を行っている「TesTeeLab」(運営・テスティー、中央区日本橋兜町)。そのアンケート結果から最新のトレンド動向を探る連載。今回のテーマは「ライブ配信アプリ」です。

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「一家に1台のテレビ」から「ひとり1台のスマートフォン」へ代わり、見る側はさまざまなコンテンツの中から自分好みのものを選んで視聴できるようになりました。

 そんな中、若者たちの間で徐々に人気を高めているのが「ライブ配信」です。

若者に人気の「ライブ配信」。ただ視聴するだけでなく、自ら配信する人も(画像:写真AC)



 テレビのように収録された映像でもなく、YouTubeのように編集をして作り込まれた動画でもなく、リアルタイムで配信者が雑談や実況を行い、それに対して視聴者はコメントやアイテム(ポイントなど)を“投げ銭”できる仕組みを持つものもあります。

 テレビでは視聴率、動画サイトではPV(視聴回数)が人気度や影響度を測る基準になってきました。

 しかしライブ配信では「視聴」「コメント」「リアクション」「投げ銭」と、見る側にも動的なアクションがいくつも用意されていて、一方向に視聴するだけではなく双方向にやりとりを行い、コンテンツを作り上げていくことが可能です。

視聴する側も楽しめる“参加型”スタイル

 もともとの視聴者数が多く多彩なコンテンツ量を誇る「YouTube Live」、圧倒的な利用者数と公式の人気ライバーを抱える「LINE Live」、ゲーム実況を自分の作成したアバター(エモモ)で顔を出さずに行うことのできる「Mirrativ」、アーティストやタレントなどの配信を視聴できる「SHOW ROOM」など、ライブ配信にもすでに数多くサービスが登場しています。

 ライブ配信の一番の特徴は、“視聴者参加型”であることです。

 インターネット上で行われるウェビナー(Webセミナー)も質疑応答の時間やコメントで質問ができるものが存在し、こちらもある種「ライブ配信」と言えます。

「Zoom」などのシステムを使ったウェブ会議や講義も、広義でのライブ配信と言え、2020年のコロナ禍で一気に一般化した(画像:写真AC)



 また、消費に大きく関わるものでは、「ライブ配信 + Eコマース(通販)」の造語である「ライブコマース」があります。

 こちらは、ライブ配信を通じて商品を紹介・提案し、視聴側はリアルタイムで購入が可能という販売手法。

 日本国内ではまだ浸透しきっていないものの、すでに中国ライブコマースによるマーケティングの市場規模は2021年に2兆元規模(1元=約16円)に達する見込みとされており(2020年10月22日配信、日本貿易振興機構JETRO)、先んじて盛り上がりを見せています。

10代男女の7割前後が「利用経験アリ」

 今回のテスティーの「ライブ配信アプリに関する調査」は、2020年11月、10~20代の男女2089人(10代男性414人、10代女性414人、20代男性610人、20代女性624人)を対象に実施しました。

 まず、ライブ配信アプリの利用経験率について質問。

「ライブ配信アプリを利用したことがある」と回答した人は10代男性で72.5%、10代女性で68.3%、20代男性で49.2%、20代女性で49.2%となり、より若年層の方が利用率が高く、最もライブ配信アプリを利用しているのは10代男性ということが分かりました。

 そして、ライブ配信アプリではないものの「Instagram」や「TikTok」のライブ機能を利用しているという声も多く挙がりました。

 続いて、ライブ配信アプリ利用者を対象に「利用したことのあるライブ配信アプリ」を尋ねたところ、全性年代で「YouTube Live(ユーチューブライブ)」が第1位となりました。

10~20代に人気のライブ配信アプリ。年代・性別で順位に違いも(画像:TesTee)



 一方、2位以下には性年代で大きく違いがある様子が見受けられました。

 それぞれのライブ配信アプリには所属のライブ配信者、通称「ライバー」が所属している場合が多く、年代や性別で好きなアーティストのライブ配信が異なるためバラつきが出たと考えられます。

 次に、ライブ配信アプリの利用者に利用方法(属性)を調査しました。

「配信経験アリ」男性34.2%、女性25.4%

 男女ともに「視聴者」と回答した人が最も多く半数以上。一方「配信者」と回答した人は男性が19.0%、女性が11.7%となり、男性の方が配信に積極的な様子が見受けられます。また「両方」と回答した人は、男性が15.2%、女性が13.7%でした。

 そして、配信をしたことがある人を対象に「配信している理由」を尋ねたところ、全性年代で「暇つぶし」という回答が第1位。

 次に、男性は「本業にしたい」、女性は「お小遣い稼ぎ」が続き、性別で配信理由が異なるということが分かりました。

配信者・視聴者 双方にメリット「投げ銭」

 今までは動画上で広告を配信し、視聴者がその広告をクリックしたり広告商品を購入したりすることで配信者の収益になるシステムがありました。

 しかし、有名人やインフルエンサーのみならず一般の人も配信が可能なライブ配信では、そこから生まれる有名ライバーが存在し、彼らが配信を続ける原動力のひとつに「投げ銭」という独特の文化が存在します。

 現在、運営されている多くのライブ配信サービスに備わっている、この「投げ銭」機能。

 支援や応援の気持ちをよりダイレクトに表現できるのが投げ銭の特徴で、ライブ配信ではコメントやリアクション以外に配信されているコンテンツに対して、ポイントやアイテムという形でオンライン送金をすることができます。

 つまり、視聴者は見ている配信に対してリアルタイムで投げ銭をすることが可能で、それが配信者の利益になります。

 配信者の若者が「本業にしたい」「お小遣い稼ぎ」と回答した理由は、そのリアルタイム投げ銭を普段から目にしているのでしょう。

双方向コミュニケーションが重視される時代

 今まで、多くのコンテンツは一方向に視聴者が受け取るものでした。

 新聞やニュースは記者が書きまとめたものを見ること、テレビ番組も制作・企画があって成り立っていました。

料理、メイク方法、ヨガなど、さまざまなジャンルで個人がライフ配信できる時代に(画像:写真AC)



 モバイルが普及し、多くの人がインターネットを活用し、SNSで発信が可能となった現代では「コンテンツ」にも双方向のコミュニケーションが重要視され、作り上げていくものへ移り変わっているのかもしれません。

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