「婚外恋愛」を認めた都会の男女、最終的にぶち当たった根本的「夫婦問題」とは

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「婚外恋愛」を認めた都会の男女、最終的にぶち当たった根本的「夫婦問題」とは

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ふくだりょうこ

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家族や夫婦のあり方は、時代や環境によって少しずつ変化を遂げています。東京などの都会では、子どもを持たないことを選択する夫婦も珍しくありません。たったふたりで暮らしていくために必要なこととは何か? 話題を呼んだ漫画作品『1122(いいふうふ)』(著・渡辺ペコさん)から、ライターのふくだりょうこさんが考えます。

話題の漫画作品『1122』から考える

 時代や環境によって変わっていく家族という形。夫は働きに出て、妻は専業主婦として家を守る……というのが当たり前だったときもありました。

 漫画『1122(いいふうふ)』(著・渡辺ペコさん)を通して、都会で生活する夫婦がいかにして関係を築き、維持していくのかについて考察してみます。

結婚していたとしても認める自由恋愛

 2020年7月に最終巻(7巻)が発売され、各メディアで話題を呼んだ本作は、結婚7年目の一子(いちこ)と二也(おとや)夫婦の物語。子どもはおらず、それぞれ仕事に打ち込みながらもなんでも話し合い、「いちこちゃん」「おとやん」と呼び合い、仲睦まじく暮らしています。

 他の夫婦と違うところといえば、「婚外恋愛許可制」であるということ。つまり、“不倫”を公認しているのです。

 おとやには、いちこも知っている恋人がおり、月に一度、第3木曜はお泊りの日。お気に入りのジャケットを着てウキウキとした様子で出掛けていく夫。

 他人が聞けば驚くようなことでも、それでふたりはうまくいっていました。恋とか愛だけじゃなくて、ふたりは家族であり、何でも話し合える親友だったから。

 しかし、次第におとやが“恋人”に気持ちが傾いていくようになることで、いちこの心にも変化が生まれてきます。

「家族だから大丈夫」「私と夫は恋愛とかそういうのじゃないから」と思っていても、ウキウキと別の女性に会いに出掛けていく夫の背中に「いってらっしゃい」と声をかけるのはどういう気持ちなのか。

 想像してみると、複雑なものを感じる人もいるのではないでしょうか。

近年、増えている夫婦ふたりの「家族」

 国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、子どもがいない夫婦の割合は1977(昭和52)年の調査時には3%でしたが、2015年の調査時では6.2%と倍以上に増えています。

 子どもがいない理由はさまざまでしょう。不妊という場合もありますし、あえて子どもを作らないという選択をする夫婦もいます。

 どんな理由にしても夫婦が生涯ふたりで暮らしていくには、その関係性をどのようにして築いていくか、という課題があるのは一緒です。

都会に暮らす、夫婦ふたり。何でも分かり合える間柄だと思っていたのに(画像:写真AC)



 いちことおとやの場合、おとやの不倫から始まり、耐えかねたいちこもまた外で若い男性と知り合い、それを知ったおとやが家を飛び出す――。戻ったふたりは「次に進もう」と関係の再構築を模索しますが、うまくいきません。

 やがていちこは、ひとつの結論を出します。

「ふたりでいるイメージを持てなくなってしまった」
「夫婦でいることがキツい」
「夫婦という形が負担になってしまった」

 辛いことは半分こ、うれしいことは2倍に、と言いますが、支え合って生きていくことが自分にとってプラスであるとは限りません。

 その後、いちこはこう言います。

「自分の輪郭がはっきりしてきた感じがあるかも」

 大事なことはずっと夫であるおとやと共有してきました。夫はもうひとりの自分。その表現は夫婦として最高なものであるかもしれません。

 ただ、それで夫婦の境界線があいまいになってしまったのではないでしょうか。

どんな夫婦になりたいかを常に考える

「仲の良い夫婦」「なんでも話し合える夫婦」というのはとても素晴らしい関係のように思えます。顔を合わせればケンカばかりしている夫婦よりは居心地も良いでしょう。

どんな夫婦にもすれ違いの危機は訪れる。それをどう乗り越えていけばよいのか(画像:写真AC)



 自然と相談をする相手としてもパートナーを選ぶ。さまざまな問題を夫婦だけで解決できるようになる。でも、これは夫婦で孤立してしまうことになりかねないのかもしれません。

 一度は距離を取ったふたりですが、ある出来事をきっかけに、いちこは改めておとやの存在の大きさ、大切さに気がつきます。

 一番信頼できる人で、一番私のことを理解してくれる人である、と分かっていても、一度は手を離す選択をした。

 その後、再び手を取り合うことを選んだふたりですが、本人たちも「これから始まる私たちの関係に名前はまだない」と言います。

夫婦でも恋人でも親友でもない関係とは?

 理解し合い、痛みを分かち合うのは大切なことです。

 しかし、そこに頼りすぎず、「ひとりの人間としての輪郭」を保たなければなりません。夫婦ふたりで暮らしていくことは、年を重ねるにつれてコミュニティーが小さくなっていく可能性もあります。

 自分のことをよく理解してくれる人がひとりでもいれば構わない、と思うかもしれませんが、それはとても危ういことでもあります。

 生き辛さを感じることが多い現代。心から頼れる人が少ない環境、容易に人とつながれるようでいて難しくなりつつあるのも事実です。

渡辺ペコさん著の漫画『1122(いいふうふ)』は7巻で完結(画像:講談社)



 2020~2021年の年末年始は新型コロナの影響で帰省がかなわず、夫婦ふたり都会の自宅で過ごしたという人も多いでしょう。

 これから夫婦の関係をどのように築いていくのか、そして将来的な夫婦のカタチを望むのか。一度話し合ってみる良い機会かもしれません。

 信頼し合い、理解する。かつ依存しすぎない関係の構築。難しいことかもしれませんが、まずはコミュニケーションを取ることが第一歩ではないでしょうか。

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